いろいろダイアリー 夏姫の誕生日Special
作者: 夏姫 みの  [Home]   2009年07月28日(火) 20時14分15秒公開   ID:I3pQytENAQc
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あの日……私はどうすることもできなかった。







「好きです、付き合ってください」







ただ、ショックで立ち尽くすだけで――。











桃奈の初恋?! 〜心に咲いたのは白いチューリップ〜









「ダメよ私。あの記憶、思い出したら。……でも、どうしても思い出してしまう。人間ってそんな風にできてるのかしら、ね? お花さん」


 私は、近くに咲いているお花に問いかけた。お花はなんだか私を励ましてくれる、唯一の友達的存在だ。


「桃奈ちゃん!」
姫様プリンセス


 私、空上 桃奈です。ピンクと可愛いものが大好きな、生徒会副会長ですわ。
 『姫様』とは会長の草柳 叶氣様のこと。あ、私は普段は『叶氣様』とは呼びませんわ。『姫様』と普段は呼ぶんですの。叶氣様は宝石の姫様――すなわちジュエルプリンセスですから。

「こんなところで何してるのー?」
「いえ、ちょっと昔の記憶を思い出してしまって」
「昔の記憶? 教えて欲しいなー」

 姫様はキラキラな瞳で言う。かわいいっ! って、そんな場合じゃありませんわ!! あああああああれは、とてもとても誰にも話せない記憶なのですわ! でも……姫様なら……いいでしょうか。

「どうしたの? も、もしかして、言えないこと言ったかな? ご、ごめんっ!」
「いいえ。……姫様は誰にも話さないことを約束できますか? 私がこれから話すことを」
「うん! いいよ。約束する」
「……わかりましたわ。なら、お話しましょう」

 私は目を閉じた。


「昔――とはいっても、小学5年生の時。私と有紀は、近くのお花畑に行っていましたの。毎日のように通っていては、花の世話をしていました。でもある日、私は『初恋の人』に出会ったの。



「……きゃあっ! な、なんですの?」
「ごめんなさい。大丈夫? た、立てる?」
「ええ、大丈夫ですわ」
「そう、よかった」



 キラキラと光る笑顔は、ヒマワリのような素敵な笑顔だったのですわ。その笑顔に私は……一目惚れをしちゃいましたの

ほうぇーーーー!!!! なんだかドラマチックだね」


 姫様はぽかんと口を開けながら言った。私は話を続ける。


「それでね、あれからその男の子は、毎日のようにこの花畑に来るようになったのですわ。花の世話をしたり、花について話が合ったりして、親しくなったのよ。でも……ある日のこと、私は見てしまったのですわ。







その子が女の子に告白をしているところを――……。




「好きです、付き合ってください」




私はその場にいるのが嫌で、もう自分の家まで走りましたわ。泣いて…泣いて……」



「桃奈……ちゃん……」


姫様は悲しげな顔をする。



「でも、それを励ましてくれたのが有紀なのですわ」
「有紀くんが?」
「ええ」





あの時……





「姉さん、入ります…よ?」
「……」




ガチャッ……




「有、記」
「どうしたのです? 姉さんが好きなピーチティーですよ。飲んで落ち着いてください」
「ありがとうございますですわ……。有紀ぃぃぃぃいいいい!!!!

私は泣きながら、有紀に飛びついたのですわ。

「……姉さん、ボクもわかりますよ。大丈夫です、時間がたてば忘れるのですよ。姉さんもボクも、まだ小学生です。また、新しい恋が生まれますよ」
「うっ……ひっく……ごめんね…有紀」
「ボクに謝る必要はありませんよ」
「ごめんね…ごめんね……。うっ…ひっく…」





それから、あの男の子は、告白した女の子と付き合うようになったらしいのです。そのときの私は、つらかったですけど」

「も、桃奈…ちゃん……。桃奈ちゃんは、こんな恋を経験したんだね……うっ……っ」
「ぷ、姫様! 泣く必要はありませんわよ、泣いたら…」





――私があの時の私に戻っちゃいますよ――





なんとか…涙をこらえないと。




「――姫様」
「え?」
「私がこの話で言いたいことは、姫様には幸せになってほしいのですわ。日向くんと幸せにね。モチロン、生徒会の皆にも……皆…皆ね」






そう







姫様が、私みたいになってほしくないのですわ。






最後に……姫様には言ってないですが、さっきのお話の続きがあります。






「桃奈ちゃん、オレ、彼女ができたんだ」
「そう…ですか。おめでとうございます」


私は少し悲しげな顔で言った。その男の子は気づいてないようですが。


「後、お礼。コレ……」
「え?」



それは、ドラセナのお花の写真だった。



ドラセナは花言葉が『幸せな恋』を意味する。



「桃奈ちゃんにも『幸せな恋』ができますように、ってね」
「はいっ! ありがとうございます!!」



そのときは、私も彼もヒマワリのようなキラキラな笑顔だったこと





それは、今でも忘れない。





「今度こそ、いい恋ができますように」




私はドラセナの花の写真を持って、最後につぶやいた。




⇒To Be Continued...

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