愛という名の正義の果てに 最終章 〜不幸天使の降臨〜
作者: なぁび   2009年06月08日(月) 22時58分59秒公開   ID:/dxzQ0Wmf36
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 今日は満月。
 
 こんな暗い森の中でも月明かりで充分に明るかった。

 「…あ、れ…?」

 満月の夜、また、あの洋館の前に迷える子羊が1匹。

 彼の名は…空上 有紀

 「…どうして僕…?」

 暗闇と孤独感の中、有紀は必死に思考を巡らした。
 しかしどうして?などとこっちが誰かに聞きたいくらいだ、という結論に行きついただけだった。

 「まぁ…とりあえず帰った方がよさそうですね…?」

 そう思って方向転換したはいいものの、道と呼べる道はない。

 ――自分はどうやってここに?

 頭の中に浮かぶことといえばさっきから疑問ばかりだ。

 でもとにかく一刻も早くここから出ないと…!

 疑問と、恐怖の中での葛藤。やはり恐怖の心が勝ったようで有紀の表情にもう落ち着きはなかった。

 「と、とにかく…!こ、こんなところ、いたらだめな気がします…!そもそもここはどこ…?」

 また浮かんだのは疑問だ。しかし、答えてくれる相手は――…



























 ――ココハ、昔使ワレテイタ生徒会ノ寮…ダヨ?





 いた。有紀はその場でしばらくフリーズする。

 「あ…せ、生徒会…?の、寮なんですか?」

 震える声で有紀はその声に問いかけた。

 ――ソウダヨ?本当ハアナタタチモココヲ使ウ予定ダッタノ

 「え?…ぼ、僕たちも?」

 どこかに恐怖を覚えながらも有紀はついつい反応してしまう。

 ――ダカラ、興味ナイ?

 「え?興味…ですか?」

 本音を言ってしまえば興味はあった。しかし今まで見たことのないこの建物、そして何よりもこの声を信頼してもいいものなのか…?

 疑問と恐怖の葛藤は続く。いや、今は…好奇心と疑問の葛藤だ。

 ――ココニハネ、モノスゴイ秘密ガアルノ

 「秘密…」

 またも有紀の好奇心が揺れる。

 ――ソレトモ帰ル?ソンナ勇気、アナタニハアルノ?

 その瞬間、世界は全て闇に覆われた。
 雲が、唯一の明かりである満月の光をさえぎってしまったからだ。

 とたん、有紀はさっきよりも比べ物にならないくらいの恐怖に駆られた。

 ――ココハ、少ナクトモ安全ダト思ウヨ?

 たしかにそうだ。見た目はかなり古いもののここなら雨風をしのげるし、少なくとも少しは恐怖から逃れられるかもしれない。

 人は、第一に生理的欲求を、第二に安全への欲求を求める。

 ――怖ガルコトナイヨ?…安心シテ?

 



 またしても 運命の歯車は 狂おうというのか――…?




 その言葉になぜか有紀は安心感を覚えて、一歩、また一歩と洋館へと近づく。




 そして、有紀が洋館の扉を開けた時――…












  新たなる歴史への秒読みカウントダウンは始まった






⇒To Be Continued...

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