愛という名の正義の果てに 〜森の館に潜む秘密〜
作者: なぁび   2009年06月03日(水) 21時51分38秒公開   ID:te6yfYFg2XA
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 目の前に、古い館があった。


 「…? どこなんでしょう、ここ…」

 迷える子羊が、また1匹、餌食になろうとしていた。



 彼女の名は空上 桃奈



 その日もまた満月で、不気味に漆黒の森の縁を際立たせていた。
 周りは見渡す限り木、木、木。今まで自分はどこを通って来たのだろうか――…?

 「こ、こんなとこ…」

 桃奈はだんだん気味が悪くなって来た。
 
 ざわざわと不気味に揺れる木の陰、それを一層際立たせるかのように一段と明るい満月。

 一刻も早くここから抜け出そうと、桃奈は震える足を動かし始めた――その時

























 ――ネェ、生徒会ノ秘密、教エテアゲヨウカ?












 不意にどこからかした、かすれ気味の声。

 「…え? 生徒会の秘密…?」

 怖い怖いと思いつつも反応してしまう桃奈。声はさらに桃奈に囁きかけた。



 ――今ノ生徒会長ハダァレ?



 「い、今の生徒会長は…ひ、日向 陽くんよ…っ!!」

 恐怖のせいか桃奈の声が上ずっている。



 ――ソノ人、本当ニ生徒会長ナノ?



 「…え?」

 そんな事を聞かれても困る。
 だって、現に今の生徒会長は日向 陽、本当にそうなのかと聞かれても、そうなのだからなんと言えばいいかなんて分からない。


 
 ――全テノ秘密、教エテホシイ?



 「…な、なんのことかよく分からないですわ…」

 ――ココニ入レバ分カルヨ

 「ここに…って、この洋館のこと…?」

 ――ソレトモコノママ帰ル?

 その次の瞬間、世界は闇に染まった。
 雲が、完全に月を隠してしまったからだ。
 こんな森の奥深くに明かりなどない。桃奈はますます恐怖に駆られた。

 ――夜ノ森ハ危険ダヨ ドウスルノ?

 「…う…」

 桃奈は迷った。このままこの真っ暗な道なき道を帰るか、それともこの洋館で夜をしのぐか。

 「じゃあ、ちょっとだけ…」

 ――君ハ、イイ子 キット君ニハイイコトガアルヨ…

 扉が軋みながら開く。その先に広がっているのもまた闇。
 しかしためらうこともなく桃奈は足を1歩踏み入れた。





 ――君ハ、ドンナ運命ヲタドルノカナ?








 
全ての運命は、闇の中に葬られた








⇒To Be Continued...

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