生徒会Lovers! 第2小節 からくり仕掛けの舞曲を君と
作者: なぁび  [Home]   2010年02月01日(月) 20時46分03秒公開   ID:/dxzQ0Wmf36
【PAGE 2/4】 [1] [2] [3] [4]









 星蘭学園せいらんがくえん、高等部。



 「ねえねえ、かなちゃん、この前お見合いしたんでしょ?」
 「……だから何よ」
 「相手どんな奴だったわけ? で、どんな印象?」


 高校生にしてはまだずいぶんと幼い少女3人が廊下を歩きながら何やら話をしている。
 中心に居るのは、金髪縦ロールというなんとも漫画に出てきそうな髪型のお嬢様、名前は中原 奏実といった。

 彼女を挟むように立っているのは同級生の白石しらいし みさき、青色あおいろ そら
 何やら奏実に問いただしているようだが。


 「名前くらい教えてくれたっていいじゃん。かなちゃんのケチー」
 「そうだぞ! 水臭いな〜」
 「教えたって何の得もないでしょ! あんたらがその人とお見合いするわけでもあるまいし!」


 この前の奏実のお見合いについて二人は興味津々なご様子。

 彼女たちは中学生なのだが生徒会の用事があって今日は高等部にお邪魔している。

 今日は朝からお見合いはどうだった、相手はいったいどんな人だった、と質問攻めにあっているため奏実はもういい加減うんざりだった。


 「まあそうなんだけどさー気になるものは気になるんだよ! それに聞いたって減るもんじゃないし」
 「もうなんでもいいじゃん。終わったことなんだし、一応私のことなんだし」


 二人より先頭に立って高等部の校舎を歩いてゆく奏実。
 彼女の容姿はやはりどこでも目立ってしまうようで道行く人みなが振り返る。


 「ねーなんで教えてくれないのー? もしかして一目ぼれしちゃったから〜?」
 「ないない。空が定期テストで全教科120点取るくらいあり得ない」
 「なんだよそれ!」


 しばらくはまだ続きそうだな……と今日で一体何度目なのかもわからないため息を奏実はこぼす。
 そういえば、と思い出してみれば相手の名前は轍 夕人。なんでも轍というのは世界各国共通語らしくてその名を知らないものはいないという。

 まさかこいつらが知っていたとしたら、なんて言われるんだろう。

 それは99.9%あり得ないが、もし知っていたら面倒なことになるのは目に見えているので言わないでおくのが賢明だろう。
 彼女はそう判断した。


 (こいつらが知ってて私が知らなかったっていうのもなんかあれだしね……)


 何よりも一番の理由は面倒くさいから、というのが本音なのだろうけど。
 それから彼女にもプライドというものがある。
 勉強も運動もやろうと思えばなんでもこなしてしまう奏実だ。そんな常識的な(彼女にとっては非常識的だが)ことを知らないだなんて自分のプライドを傷つけるどころか自分の親である中原社長の顔に泥を塗ることにも繋がるだろう。

 ちなみに中原家の名は、轍に次いで2番目によく耳にする名前である。

 それ以外にも単純な理由があるのかもしれないが。


 「ねーかなちゃんてばぁ、少しくらい教えてくれたって……」
 「そーそー。気になるんだ……」


 まだまだ問い詰める気満々の二人の声を遮るように、校内放送のビブラフォンが鳴った。


 『えー中等部からお越しの、生徒会役員、中原 奏実さん……』
 「え? 私? ってかこの声って」


 校内に備え付けてあるスピーカーから流れたのは、低い、しかししっかりとした響きを持った男子生徒の声。
 奏実はこの声には聞き覚えがあった。


 「真宙まひろじゃん」


 本名、氷室ひむろ 真宙まひろ。高校生で、奏実とは漫画好き、いわゆるオタク繋がりだ。


 『高等部校舎内におりましたら婚約者が来ておりますので至急、高等部昇降口までお越しください。もう一度連絡いたします……』


 辺りは騒然とする。
 もちろん空やみさきも、だ。


 「婚約者ぁ?!」
 「え、マジで? 今婚約者って言ったよね?」
 「まあ……あの社長令嬢だしな……あの年で居てもおかしくはないよな」
 

 しかもこれは全校放送だ。つまり、校舎内に居る人全員にそれは伝わっているわけで。


 「次に会ったら……ぶっ飛ばすっ!!」


 怒りに震えた奏実は力任せに壁に拳で大穴をあけたのだった。もちろん素手で。









⇒To Be Continued...

■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集