生徒会Lovers! 第0小節 不協和音を奏でる木枯らしの季節 
作者: なぁび  [Home]   2009年12月28日(月) 03時25分10秒公開   ID:AJmuvnbMP/c
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 ――中原家。


 知る人ぞ知る有名資産家・それが中原家。

 そこにはとてもおしとやかな令嬢が……。



 「はあぁ〜?!」


 いるらしいのですが。

 「お見合いぃぃ〜?!」
 「はい。まさか意味を知らないなんてことはないでしょう?」


 金髪縦ロールに長いまつげ、ヒマワリ色の瞳……さっき叫んだのは紛れもない、この少女、名前は中原 奏実といった。


 「なんで私がそんなこと……めんどくさい、大体その日は大事な検定があるんだけど」
 「終わってからでも充分です。というか予定ではそれが終わってからなので」
 「前にも言ったけどね、私は行かないわよ」


 奏実は頑固だ。意地でも自分がこうと決めたら動かない。それが奏実。
 そんな奏実をいつも強引に納得させるのが中原家執事の若柳わかやなぎ まもる


 「結婚を親の意思で決めるのはね、ほんとどうかしてると思うの。なんで好きでもない人と結婚なんか」


 ぐだぐだと言い訳を述べながら奏実は窓辺へ歩み寄る。


 「お言葉ですが、お嬢様……」
 「何よ」


 窓を開け、そこから青いスニーカーを放り投げる。
 

 「14歳の誕生日までに相手を決めると言ったのは奏実様でしょう?」
 「……う」
 
 たしかにそれは去年の誕生日、奏実が言ったことだ。
 お見合いの話を持ちかけられ、それが嫌だった奏実がその場の勢いで言ってしまった。


 「もう誕生日から結構経つというのに貴方という人は……」
 「あっ相手ならもういるわよ! だからいるっていってるじゃないの!」
 「じゃあそれは誰です?」
 「……空よっ!」
 「空お嬢様はレズじゃございません」



 このままではいつものように無理矢理、ということになりかねない。
 こうなったら奏実のとる行動はひとつ。


 「とにかく、今回のお見合いも……あっ」
 「今日は空と約束があるの!」


 ここは2階、骨折はしても死にはしない程度ではあるが――仮にもお嬢様、そんなこと彼女にとってはどうでもいい。
 窓から軽々と飛び降りて空との約束を果たしに行ってしまった。


 「……まったく」

 開け放たれた窓から冬近くの涼しい、とはもう感じられなくなった風が入り込む。

 今に始まったことではないがこんな性格じゃお見合いでもさせないければ一生結婚なんて無理であろう。
 いつの日か彼女の両親もそう言っていた。

 中原家の一人娘、後継ぎのこともある。
 こんな時期から考えなくても、と思うかもしれないが奏実のことだ。この先心配でならない。


 「破天荒なお嬢様」

 もはや『お嬢様』という名詞すらこの子に対しては似合わない。


 仕方なしに机の上に置いた写真も……きっとこの先開かれることはないだろう。






⇒To Be Continued...

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