生徒会Lovers! 第0小節 不協和音を奏でる木枯らしの季節 
作者: なぁび  [Home]   2009年12月28日(月) 03時25分10秒公開   ID:AJmuvnbMP/c
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 冬も近づいた、ここは轍家。

 名前を聞いたことがない方が不思議なくらい有名な資産家である。

 そんな家ではたった今一人の少年がぬくぬくと快適な温度に保たれた部屋で読書中だ。
 彼の名は轍 夕人。れっきとした轍家の人間である


 「夕人様」
 「……はい?」


 こんこん、と軽く部屋のドアをノックする音が響いた。
 夕人が返事をすると、にこっと感じのいい執事が何やら手にアルバムのようなものを持って入って来た。


 「失礼いたします。お見合いのお写真をお持ちいたしました」


 ぱたん、と読んでいる本を閉じ部屋の中央のソファまで移動する。
 そういえば14歳の誕生日を迎えたらお見合いすることになってたっけ、とつい1か月前、まだ誕生日を迎える前に両親が言っていたことを思い出す。


 まったく気の早い両親だ。
 いくら轍家だからとはいえ中学生でお見合いというのはさすがに早いような気もする。


 「お名前は中原 奏実さんというらしいですよ。あの有名な中原社長のお嬢様です」
 「あの中原社長の?」


 轍家に次いで中原の名を聞いたことのないというのもここらでは珍しい。
 そんな相手と……夕人は思わず目を見開いた。


 「これがお写真です」


 そう言って手渡された分厚い表紙。さすがに誰かが見ている場でこれを開くのは躊躇した。


 「え、と、どんなお方でした?」
 「私たちは拝見しておりません。おじい様とご両親なら」
 「どんな反応してました?」
 「そうですね、可愛らしいお方と褒めておりましたよ」


 聞かなければよかった。夕人は少なからず後悔した。
 ただのお世辞かもしれないがそれでも可愛らしいと言っていたのであればそれはそれで意識してしまう。

 「それでは」


 ただでさえ恋愛に関しては奥手な夕人だ。
 人前では開くのは恥ずかしいだろうと気を使って執事は出て行った。

 部屋で一人、それでも夕人は写真を前に手を伸ばせずにいる。

 (どんな子なんだろ)


 やっぱり興味はあるので勢いに任せて表紙を開いた。
 そこに写っていたのは、金髪に縦ロール、長いまつげ、ヒマワリ色の凛とした瞳――漫画に登場しそうなお嬢様の外見をしている、一人の少女の姿。

 (か……可愛い!)

 素直に夕人はそう思った。

 中原 奏実。それが、この少女の名前。

 (こんな人とお見合いだなんて、僕どうしよう)

 




⇒To Be Continued...

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