これCry Lovers 第15楽章 偽善の愛だとしても
作者: なぁび   2009年09月06日(日) 23時00分53秒公開   ID:sw0xlSukK4E
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 せっかくヒロインに抜擢されたのに。

 それだけのことで、なしになんかしたくないけれど。




 「…どうしたの? 瑠姫ちゃん」


 「あ、一谷…春海はるみさん、でしたっけ…?」


 一谷いちたに 春海はるみ。役者として、最近有名になった芸能人だ。

 そんな春海が、瑠姫に声をかけた。


 「どうしたの、元気ないね」
 「あー…ちょっと」

 「同じドラマに出る役者としてほっとけないな。俺でよければ相談してよ」
 「あー…はいー…」

 とはいえ相談できるものか。私、好きな人とキスまだなんです。


 そんなこと、絶対に言えない。


 「ま、初めて共演するから信頼してないだろうけど。ラブシーン、よろしく」

 にっこり笑って春海は手を差し出した。遠慮がちに瑠姫はその手を握り返す。

 「緊張すると思うけど、そこはリラックス。大丈夫、プライベートでは変なことしないから」
 「…の、キスして下さい」
 「へっ?!」




 「今、ここでキスして下さい!」


 瑠姫からの大胆過ぎるお願いだった。春海もこれには戸惑いを隠せいない様子だった。


 「い、いきなり君は何を…?」
 「お願いです! ほんと、なんでもしますから!」

 瑠姫は裾を掴んで懇願する。

 「…俺は演技で何度もしてるから構わないけど? 君、初心者なんでしょ?」

 痛いところを刺され、瑠姫は唇をとがらせた。

 「だから演技の前になれておきたいっていうか? …俺はいいけど」



 じゃあ目、閉じて? と優しく囁かれ、瑠姫はぎゅっと目を閉じた。



 「くす、君、いくらなんでもそれはないでしょ。力抜いて?」


 
 迫って来る感じが伝わってくる。





 二つの影が重なるまで、10秒前、



 9、



      8、



          7、




      6、




           5――…。




       












 まぶたの裏に、あの意地悪な笑顔が浮かんだ。











⇒To Be Continued...

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