交差する彼らの居場所 第一章『異変』 | |
作者: 悠蓮 2009年05月23日(土) 23時54分42秒公開 ID:XnxKweJ8Y8w | |
次の日。 昨日の騒動が嘘のようにいつもと変わらぬ休日を彰人は過ごしていた。特に何も痕跡がないのであれは全て夢であったかのような錯覚を彰人は覚える。 「……結局なんだったんだろ」 一人、彰人はそうつぶやく。 あまりに衝撃的な出来事だったため、少々頭が混乱してる。 とはいえあまり悩んでいても仕方がないのでそのことは置いておくことにし、彼は行動を開始した。 衣類を洗濯機に投入し、先ほど食べた朝食の後片付けをする。 せっかくのなので家全体に掃除機でもかけておこうと準備し始めた。 両親がいないため家事は自分で何とかするしかないのだ。 健全な男子高校生なら休みの日ぐらい彼女とデートぐらいすればいいものだが、あいにく彰人にそんなことが出来る相手など居なかった。 あらかたの家事を終わらせてふと時計を見ればもうすぐ十二時。そろそろ昼食の準備をする必要がある時間だ。 「……俺の休日って家事だけだよな」 ふとむなしくなって彰人はそんなことをつぶやいてみた。が、この家には彰人しかいないのでどこからも返答はなかった。 さらにむなしくなった彰人は一旦思考を停止し、昼食の準備をするためキッチンに向かう。 冷蔵庫を開け、必要なものを取り出しながら気づく。 「あ、やっべ。忘れてた」 冷蔵庫の中は隙間だらけで、まともな食材が入っていなかったのだ。昼食ぐらいなら何とかなるが夕食までは無理だろう。 「……めんどくせぇ」 これで午後の予定は買出しで決定だ。午後ぐらいゆっくりしたかったのに、と彰人は愚痴をこぼした。 * * * 彰人は今近場のスーパーまで夕食の材料の買出しに来ていた。 適当に野菜類をカゴに放り込んでいく。 今日のメニューはカレーだ。理由は二、三日なんとかなるから。 会計をすませ、店を出る。 そこで彰人はかすかな違和感を感じた。 なんとなく誰かに呼ばれているような気がする。 もっとも周りを見渡しても知人などはいない。 名前を呼ばれているというよりは存在そのものに語りかけている。そう錯覚させるような感覚だった。 何か分からない不気味さが、彰人を包み込んでいく。 そんな思いを振り払うかのように彰人は大きく首を振った。 (……気のせいか) そう思った、いやそう思おうとした矢先、視界に見覚えのあるものが飛び込んできた。 もちろんそれは知人だとかそんな日常的なものではない。 それはふわふわと宙に浮かんでいる…… 六面体の箱だ。 「……! あれ…」 間違いない、昨日道端で見かけ、なぜか自室の机にあったあの箱だ。部屋で見たときのように少し発光している。 箱は少しの間浮かんだ後、狭い路地へと飛んでいった。 「!」 反射的に彰人は走り出した。 持っている荷物のことなど気にせず、必死で箱を追う。 別に特に理由があるわけではない。ただ気づいたら箱を追って走り出していた。 箱がどこに向かっているのか、何をしようとしているのかも考えずに。 |
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