交差する彼らの居場所 第一章『異変』 | |
作者: 悠蓮 2009年05月23日(土) 23時54分42秒公開 ID:XnxKweJ8Y8w | |
「ただいま」 誰もいない家に向かってそう彰人は言った。 彼の両親は現在仲良く海外旅行中である。 なにかの懸賞で旅行券を当てたらしいが――残念。その手の旅行券は二名様までと相場が決まっている。 ということで彰人はさらっと両親に置き去りにされたのだ。まあ学校もあったし。 自分に正直に生きるのが長生きのコツだ、というのが母親の口癖もとい一人息子を置いていく言い訳であった。 誰も居ないリビングを通過し自室へと向かう。 明日から週二回の休みのため、先に課題をやってしまうつもりだ。 部屋に入り、ベッド近くの床に鞄を下ろす。 換気のため机の横の窓を開けたとき、 それに気づいた。 「……なんであるんだ」 机の上には六面体の箱が置いてある。その箱の六面全面に奇妙な文様が描かれている。 間違いなく彰人が空き地に置いていった箱だ。 どこのホラーだ! と思いながらも彰人はその箱を眺める。 それは確かにあの箱と同じように見えたが…… (少し小さい?) あのときは両手で持つぐらいの大きさだったが今目の前にあるのは片手で持てるぐらいの大きさだ。 しかし、それ以外はまったく同じなので、余計に気味が悪い。 試しに手に取ってみようと思い、箱に手を伸ばす。 「っうわ!」 そのとき突然箱が光りだした。 箱は光ながらゆっくりと宙に浮かんでいく。 いきなりのことに彰人は呆然とした。 そのとき。 机の横の窓からなにかが急に飛び込んできた。 『見つけた』 誰も居ないはずの家で自分ではない声が聞こえる。 目の前にあるのは、怪しい箱と 見たこともない四足歩行の動物。 一見ウサギのようにも見えるがウサギにしては体が少し細い。 耳の形も違うし、爪も黒く鋭い。長い尻尾も備わっている その動物は口にめずらしい形のナイフをくわえており、それがなおさら異質に見えた。 呆然としながらその動物を見つめていると、視界の端で何かが動いた。 箱だ。浮かんだまま窓から外へと飛び出したのだ。 『逃がすか!』 また、声がしたと思ったらそのまま動物は箱を追って消えていった。 「……なんだったんだ、今の」 ⇒To Be Continued... |
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