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魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜第U幕
日時: 2015/02/28 05:14:12
名前: 孝(たか)

アルハザード……遥か昔に大次元震動により滅び、人々から忘れ去られた超科学都市と謳われた世界…

シナプス……天上人(てんじょうびと)が住まい、天使の舞うヴァルハラと謳われし世界…

ペルソナ……ラテン語で「人」・「仮面」を意味するが、遥か太古では「本能」とも言われ、現代では「もう一人の自分」、別人格が具現化した特殊能力を指す。

魔族……人間達には悪魔として認識される存在ではあるが、本来は誇り高く、気高い種族であり、人間とは比べるのもおこがましい程の強大な力を持っている。

魔王……魔族や悪魔を統べる絶対的存在。その魔王にも、「善・悪」が存在する。

天使…天上人、あるいは「神の御使い」と言われる尊き存在。清き心のまま亡くなった者達を極楽浄土へと導く存在と謳われている。


これらは遥か太古の時代に存在し、現代では大昔の空想・偶像・伝承となっている。

だが…それは間違いである。

魔族も…天使も…悪魔も…神も…

人間達に感知出来ていないだけで…

別の次元…

別の世界…

隣り合う世界でありながら、決して近づく事のない。

そんな世界に……存在しているのだから…。


そして…これは…そんな伝承に語られた者達が出会う…

そんな物語…

弘政「記憶を取り戻しつつある氷牙さんと、その仲間の物語」
なのは「魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜第U幕……始まります。」

アリサ「私達の今後はどうなるの?」
すずか「どうなるんだろうねぇ〜?」
メンテ

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Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜第U幕 ( No.1 )
日時: 2015/07/18 05:32:03
名前: 孝(たか)

クロノ「なん、なんだ・・・彼はいったい・・・?」

 突然起きた氷牙の変貌に戸惑いを隠せないクロノ。
眼の前で卵の様に包まれた氷牙を凝視し、我知らず冷や汗を一筋垂らす。

 動揺を無理矢理抑え、冷静に現状を把握していると、不意に聴覚を刺激する。

ドクン・・・ドクン・・・ピキ、パキ・・・と、鼓動の様な音と、微かに聞こえる何かが砕ける様な音を・・・

フェイト「いったい、氷牙に何が、起きてるの?」
アルフ「フェイ、ト・・・に、逃げて・・・逃げなきゃ・・・は、早く・・・!」

 フェイトも、氷牙に何が起きているのか分からず、酷く動揺している。
そんなフェイトの動揺を他所に、アルフがカタカタと小刻みに震えながらフェイトに逃げるように懇願する。

フェイト「アルフ?どうして震えてるの?」

 主人であるフェイトにも、どうしてアルフが此処まで震えて・・・いや、脅えているのか分からないでいる。

アルフ「私にも分からない。でも、何か・・・何か凄く、怖いんだ。氷牙が・・・氷牙から漏れだしてる魔力・・・凄く、嫌な気配がするんだ・・・逃げなきゃダメだって・・・心の底から訴えてるみたいに・・・」

 未だに震えが収まらずに力無くフェイトの肩に両手を添えているアルフ。
恐らく、動物の本能とも言える危機感知能力が今の氷牙に驚異を感じたのだろう。

フェイト「でも、氷牙をこのままにしておく事なんて」
アルフ「だけど・・・!?」

 アルフがもう一度フェイトを説得しようとすると、一際大きな鼓動が聞こえた。

ドクン!!!!!

バササ・・・グバアアアアアアアアッ!!!

 ゆっくりと・・・だが大きな動作で氷牙の翼が開く。

そこには・・・見た者に恐怖を植えつける龍の形をした黒い”何か”が居た。

 ゾクッ!!!!!

 その姿を見たクロノ、フェイト、アルフは言い様の無い恐怖が全身を支配する。

 呼吸を忘れる程の衝撃的な一瞬の支配。全身が震え、鳥肌が立ち、無意識に自身を掻き抱く一同。

『バオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

 翼を勢いよく広げ、恐怖を煽る様に両腕も広げ、力強く雄叫びを上げる”何か”。

 大きさで言えば凡そ4メートル程の”ソレ”は、まるで歓喜の産声を上げているようだった・・・。

 そして、少し離れた地上の側からそれを見ていた弘政は・・・

弘政「な、なに・・・これ・・・あの時と、全然違う・・・」

 すずかの自宅で見た氷牙の魔族としての姿とまるで違う姿に、弘政は恐怖を抱く。
心臓が早鐘の様に痛い位にドクドクと脈打つのが判る。

弘政「ハッ、ハァッ・・・くっ・・・」

 呼吸も荒くなり、喉が渇き、冷や汗が流れ、寒気もする。直接向けられたわけでもないのに、氷牙から放たれる殺気に、意識が飛びそうになる。

 一方その頃・・・更に離れた位置にいる神裂一刀と言えば・・・

神裂「うへへへへへ・・・フェイトがピンチ!つまり俺様がここで恰好よく助けに入ってあのドラゴンをぶッ倒せばフラグ回収!ハーレムの仲間入り!ま、そんなことしなくても俺のこのハンサムフェイスによるニコポで惚れさせることなんて余裕だがな!!」

 さぁいくぜ!と、飛行魔法で飛び立とうとした時・・・

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!!!』

 咆哮と同時に放たれた魔力によって煽られ、吹っ飛んだ看板が・・・神裂を吹っ飛ばした。

神裂「ノピョッ!?!??!!!!」

 氷牙(竜)から漏れだす邪悪な魔力を感じ取れず、ただのジュエルシードの暴走体としか思っていないこの馬鹿に、戦場における周囲への警戒などと言う芸当が出来る訳も無く、何もせずに気絶したのだった。


氷牙D『ゴルルルルルル・・・ガアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』

 氷牙D(ドラゴン)の雄叫びによりクロノが委縮した途端、氷牙Dはその巨体からは予想できない速度でクロノに肉薄する。

クロノ「(なっはやいっ)ら、ラウンドシールド!!」

 あまりの速度に意表を突かれたが、ギリギリでラウンドシールドを展開し、氷牙Dの拳を防ぐ。

 しかし、咄嗟に展開したラウンドシールドは通常よりも脆く、ほんの一瞬だけ拳を止めるだけでしか無かった。

クロノ「くっ!?」
氷牙D『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』

 ラウンドシールドが砕け散る寸前で真横に回避したクロノに、氷牙Dはもう片方の拳で再びクロノを狙う。

氷牙D『グルルルルルルルッ・・・』

 フシュー!フシュー!と、鼻息荒く唸りながら執拗にクロノを襲う。
血の涙を流しながら、一撃でも当たれば一瞬にして命を奪えるであろう大砲の如き拳を振りまわす。

クロノ「このっ!?ストラグルバインド!!」

 クロノも伊達に若くして執務官をしているだけあって、無理矢理に恐怖を払拭して応戦する。龍に変身したのを魔法と思い、魔法効果を打ち消す能力を持つ拘束魔法:ストラグルバインドで四肢を絡め取る。

氷牙D『・・・・・・ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!』

 ガチャリ、ガチャリと自身に絡まるストラグルバインドを視界に収めると、全身から魔力を放出して一気に引きちぎると、三度クロノに襲いかかる。

弘政「氷牙さん・・・泣いてる?」

 遠目ではあるものの、それなりの巨体となった氷牙Dの表情を見るのは容易く、魔導師とは言い難い弘政にも、血涙を流す氷牙Dを確認出来た。

弘政「このままじゃ・・・氷牙さんが取り返しのつかない事をしてしまう・・・何か・・・何か無いの!氷牙さんを止める方法は・・・」

 恐怖に身を震わせながらも必死に打開策を考える弘政。だが、いつも冷静に状況を把握して居ても、所詮はまだ年齢一桁の子供である事には変わらない。

 応援を呼ぼうにも、弘政の魔力量では結界の内外での思念通話は難しく、なのは達を急がせる事も出来ない。

 なんとかできる可能性を持っている弘政でも、その力の引き出し方を知らない自分では、何もできないと痛感する事しかできなかった。

弘政「どうして・・・どうして僕は・・・こんなにも無力なんだ・・・!!」
メンテ
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜第U幕 ( No.2 )
日時: 2015/09/23 17:23:33
名前: カイナ

氷牙D『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!』
クロノ「くっ!」

暴れ回るドラゴン状態の氷牙。その拳をクロノは魔力の盾で防ぐが盾にヒビが入るのを見るとすぐさまその場を離れ、盾を貫通した拳は勢い衰えないまま地面を砕き、辺りに岩と言っても過言ではない程の大きさの土の塊をまき散らす。

弘政「っ!?」

それは無力感に押し潰されていた弘政の方へも飛んできていた。

フェイト「弘政っ!!」

気づいたフェイトが咄嗟に弘政の方に飛び込み、抱きかかえて脱出を試みる。

フェイト「あぐっ!?」

しかし一瞬遅く、結果的に弘政を庇うように抱きかかえる形になっていたフェイトの背中に土の塊が直撃、フェイトはバランスを崩すと弘政と共に地面を滑る形になった。

弘政「フェイトさん!」

弘政は起き上がるとフェイトに声をかけ、揺さぶる。が、フェイトは苦しそうに「うう」と声を漏らしており、少なくとも今すぐに動くのは不可能。アルフが「フェイト!」と叫んでいるもののドラゴン状態の氷牙を刺激してしまっては危険と思っているのかなかなか動けない。

クロノ「ぐあっ!!」

そしてついにクロノも丸太のような腕でのラリアット気味に振るわれた攻撃をかわしきれず、杖で防御したためもろにラリアットをくらったわけではないものの吹き飛び、近くにあった大木に激突。しかしその大木もへし折れるほどの衝撃にクロノはげほっと苦しげに息を吐いた。

氷牙D『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!』

再び咆哮するドラゴン状態の氷牙。しかしそれは慟哭のようにも聞こえ、だが同時に辺りに恐怖を与える。

弘政「……」

どくん、どくん、と心臓の鼓動が鳴り響くのを感じ取れる。フェイトは結果的に自分を守るために怪我をしてしまい、謎の黒服君も倒れた。現在戦えるのは恐らくアルフだけだろう。でもあの力の前では勝って氷牙を元に戻すことはできない。そして、このままでは最悪――

弘政「し……ぬ?……」

氷牙がそんな事をするとは思えない。だが今の氷牙はどこか正気でないというか普段の彼の意思で動いていると思えないところがある。もし何か間違えたらフェイトも、アルフも、黒服君も、そして最悪……自分も死ぬかもしれない。そう、彼は何故か直感していた。

弘政「え……」

ポケットから淡い青色の光が放たれ、弘政はポケットに手を入れるとその光の源を取り出す。

弘政「かぎ?……」

淡い青色の光の源、それは鍵だ。そういえばユーノが以前、この鍵を使って魔法を使っていたと証言していたことを彼は思い出す。と、青い光が大きくなり、そう思うと鍵は拳銃へと姿を変えた。

弘政「……」

その銃を見た時、弘政の顔から感情が消え、彼はくすり、と冷たい笑みを浮かべた。そして彼は拳銃をこめかみへと持っていく。

弘政「ペ……ル……ソ……ナ」

言葉と共に引き金を引く。ガシャァンというガラスが割れるような音が頭の中から聞こえてきた。

??[まったくもう。今の君だとこの力は負担が大きすぎて暴走しちゃうんだってば……まったく。人のため自分をないがしろにする、君のそういうところは本当変わんないね……]

そんな言葉が、どこからともなく聞こえてきた。

??[まあいいや……君の今の友達を守るためだからね]

そんな言葉と共に、彼が呼び出した存在――オルフェウスの身体にヒビが入る。そしてその中から以前巨大なスライムを一瞬にして無に帰した死神が姿を現した。

――GYOOOOOOOO!!!――

瞬間、謎の声は聞こえなくなる。それと同時に弘政は意識を失ったように倒れ込み、死神は耳障りな咆哮を上げてドラゴン状態の氷牙の前に相対した。
――――――――――――――――――――――――――――――
やっとこさ書けましたよ孝さん……。
最終的に「死ぬ」という未来を回避するための生存本能的なものがペルソナ解放のキーワードになる。みたいな感じでペルソナが召喚されました。
では後は任せます。(疲れた)
戦い方で質問があるなら受け付けますけど、一応基本的には右手に剣持ってるのでそれによる高速の斬撃とかその辺でなんとかなると思います……。
メンテ
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜第U幕 ( No.3 )
日時: 2015/11/09 03:34:47
名前: 孝(たか)

氷牙D『グルルルルルルルルルル・・・』

 自身の前に降り立った恐怖の代名詞・・・死神を見たドラゴン状態の氷牙。

 威嚇しながら姿勢を低くし、いつでも駆ける事の出来る様に態勢を整える。

−GYOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!−

 だが、死神の方は一切の慈悲を持たずに右手に持ったその巨体に見合った大きさの剣を氷牙Dに向けて振り降ろす。

−GYAAAAAAAAAAAAAAAA!!!−

氷牙D『ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

 氷牙Dも自らの右の肘から剣の様な鋭い角を生やすと、死神と鍔迫り合いになる。

 ギシギシ、ギチギチと刃同士が押し合う。

氷牙D『グルアアアアアアアアアアアアア!!!!』

 その拮抗を崩す為に、左の拳を死神の顔面めがけて振りぬく。しかし、死神も左手でそれを容易く受け止める。

−GYOOOOOOOOOOOOOO!!!−

 斬!!!

 死神が右腕に力を込めると、一瞬だが剣に光が灯ると同時に氷牙の肘角を切り落とした。

氷牙D『ギギャアアアアアアアアアアアア!!!?!?』

 切り落とされた肘の角からドロリとした血液にも似た黒い何かがこぼれ、地面を焦がす。痛みに耐えかねた氷牙Dは腕を掲げてもう片方の手で肘を押さえる。

 シュ〜〜と音を立てて瞬時に傷を塞ぐと、その瞳を更なる怒りに染め死神を睨みつける。

 グバァッ!!

 死神に向けて大きく口を開くと、其処には蒼い光を放つ球状の何かがあった。

 その光の球を噛みちぎると、大きく仰け反ると・・・振り降ろしざまに再び口を大きく開くと、死神に向けて氷結の息吹が放たれた。

 俗に言う”ドラゴンブレス”の一種である。氷の属性を持つそのブレスは、その射線上の道に氷の結晶を発生させながら死神へと突き進む。

 だが、死神は剣を両手で構えると、袈裟がけに剣を振り降ろし、ドラゴンブレスを正面から斬り伏せ、逆に押し返して発生した衝撃波を氷牙Dの顔面に叩きつけるのだった。

氷牙D『グギャアアアアアアアアアアア!?!?』

 衝撃波によって牙と顎を砕かれ、両手で顔を抑えながら悲鳴を上げてのた打ち回る。

−GYAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!−

 斬!! 斬!! 斬!! 斬!! 斬!! 斬!! 斬!!

 死神は、倒れた氷牙Dに容赦なくその剣を何度も何度も振り降ろす。滅多切りである。

腕、脚、腹、肩と滅茶苦茶に振り降ろされた剣によってボロ雑巾のようにズタボロにされていく氷牙D。

氷牙D『グガ、アアアアアアアアア?!』

 もはや痛みに悶える事も出来ずに悲鳴を上げる氷牙D。死神の剣を受けとめようと腕を振り上げるも、その腕を肘下から切り落とされる。

氷牙D『ガアアアアアアアアアアアアアア!!?!?!』

−GYOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!−

 両手に持って掲げた剣で、倒れ伏した氷牙Dの頭にトドメとばかりに突き刺した。

氷牙D『ギャアアアアアア・・・ガガ・・・ギ・・・グギャアアアアアアアアアアアッ!?!!!?』

 じたばたと頭を突きさされたショックで暴れるも、数秒もしない内に、ズズン・・・と音を立てて氷牙Dは完全に沈黙したのだった。

クロノ「ぅぐっ・・・やった、のか?」

 肩を抑えながらフラフラと立ち上がり、幾つもの修羅場を越えている為か死神を見てもなんとか耐えているクロノは、倒れたドラゴンを見てボソリと呟く。

 すると、シュウシュウとドラゴンから煙が上がる。
ドラゴンは形を保てなくなったのか、徐々に小さくなっていく。

 最後には、所々服が破けた氷牙が人の姿で仰向けに倒れており、それと同時に、まるで幻の様に死神もスゥッ・・・と消えていった。

クロノ「元に、戻ったのか?」

 警戒しながらも、杖を氷牙に向けながら徐々に氷牙に近づいていくクロノ。そこへ・・・ガキンッ!!

クロノ「な!?バインド!?」

 クロノの両手を磔にされる囚人の様に広げた状態で手首を”桃色”のバインドに拘束される。

???「貴方が・・・やったの?」

 上空から幼い少女の、暗い声が聞こえ、そちらへ視線を向ける。そこには、俯いているせいか良く表情が見えないが、殺気を溢れさせた白い魔法少女が居た。

 そう、なのはだ。氷牙達より遅れて到着したなのはとユーノが目にしたのは、気絶した弘政、背中に強打を受け、うつ伏せに倒れているフェイト、弘政の召喚した死神によって本能的に恐怖が頂点に達して気を失ったアルフ。

 そして・・・ボロボロの氷牙。その氷牙に杖を向けながら近づくクロノの姿。

 既に死神は消えているので、”誤解をするな”と言う方が無理な現場を見たなのはは・・・”キレた”。

なのは「許さない・・・私のお友だちを傷付けた貴方を・・・私は絶対許さない!!!」

 そう言って、バインドで拘束したクロノにレイジングハートを向けて、得意の砲撃:ディバインバスターをほぼ全力で撃ちだしたのだった。

クロノ「砲撃!?くっ!ラウンドシールド!!」

 クロノは拘束されている腕を無理矢理に傾けて杖の先を前面に来る様に力を込めると、防御魔法を形成する。だが、魔力総量の点で言えば圧倒的になのはの方が多く、感情の高ぶりで溢れ出る魔力を込めたディバインバスターは、クロノのラウンドシールドを紙の如く突き破り、無防備となったクロノは砲撃に呑み込まれた。

クロノ「うわああああああああああああああああああっ!?!?!」

 砲撃に押し出される様に地面に叩きつけれらた後に、砲撃が消えるまで地面を抉る様に突き進む。いくらバリアジャケットを纏っていようとも、この衝撃を消す事は不可能だ。

クロノ「ぐ・・・あ・・・な、なんて威力だ・・・」
なのは「シューター!!」

 産まれたての小鹿の様に脚を震わせながらなんとか立ち上がるクロノに、追い打ちをかけるように5発の魔法弾が円を描くようにクロノの周囲に展開され、グルグルと移動している。それはやがて線を描き、一本の輪になったかのように高速移動を始めると・・・

なのは「バレット!!」

 5つのシューターが1つの輪となり、新たに追加された魔法弾が撃ちだされる。

クロノ「グゥッ!?」

 撃ちだされた弾丸を避けると、避けた弾丸は跳ね返る様に再びクロノに向かう。それを感知して更に避けるクロノ。しかし、更に跳ね返り、何度もクロノを襲い、跳ね返る毎に弾丸のスピードは増して行く。

ユーノ「あ、あの技は!?(この間テレビでやってた車をモチーフにした仮面のヒーローが使っていた必殺技にそっくりだ!?)」

なのは「ディバインリフレクト。跳ねれば跳ねる程、加速する弾丸・・・」

 ディバインリフレクト:刑事で仮面の戦士の必殺キック”スピードロップ”を参考に編み出された技で、複数のシューターが敵の周囲を円を描くように高速回転し、新たに生成された魔法弾を放ち、ピンボールの様に何度も跳ね返っては速度を上げて敵を何度も襲う鬼畜な技である。

クロノ「うっ!くっ!?がっ!?」

 実際に放たれている弾丸は一発だけだか、ピンボールの様に跳ね返り続け、速度も上がり続けるせいか徐々にクロノは追い詰められ、何度か被弾している。

クロノ「ガハッ!?ゴホッ!?グフッ!?」

 ガンガン跳ね返り続けた結果、既にクロノには感知出来ない速度に達した弾丸は、クロノに何度も轢き逃げアタックを繰り返し抉り込んで行った。

クロノ「があっ!?(まず、い。意識が・・・)あ・・・」

 遂に耐えきれなくなったクロノは膝を折る様に倒れ込み、姿勢が低くなったクロノの顔面に、最高速度と言っても過言ではない弾丸が叩き込まれ、クロノは”縦回転”で吹き飛ばされるのだった。
メンテ
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜第U幕 ( No.4 )
日時: 2016/03/15 06:05:53
名前: 孝(たか)

 非殺傷設定であっても、打ち所が悪ければ骨折くらいは普通に起きる。
最高のタイミングと最高の速度で放たれた弾丸はクロノの顔面を的確に捉え、激突。

 頭を支点にギュルンギュルンと”縦に回転”しながら吹き飛ばされ、丁度、頭が下になった状態で電柱に正面から激突。

 少し遅れてズリリ、とゆっくりと落下して頭頂部から地面に落ち、仰向けになる様に倒れ込んだ。

なのは「・・・・・・」
ユーノ「・・・気絶したみたいだね?どうする?」

 なのはは油断なく杖を構えたまま視線をクロノから逸らさない様に注意深く観察する。そこへ、ユーノが近づき、クロノが完全に気絶しているのを確認した。

なのは「とりあえず、バインドで捕まえておいた方がいいよね?」
ユーノ「そうだね。じゃぁとりあえず・・・」

 ヴゥンッと、ユーノのを言葉を遮って投影モニターの様な物が2人の視界に写る。

 バッと、数歩だけ距離を取って構えるなのは。士郎や恭也によって何かあればすぐに構えをとる様に教えられたなのはは、それを素早く行っていた。

??『ごめんなさい。少し待ってもらえるかしら?』

 モニター越しの少しくぐもった音声と、其処に写る軍服を着た緑髪の女性が2人に待ったをかける。

なのは「どちら様ですか?」
リンディ『私はリンディ・ハラオウン。時空管理局局員で、次元航行艦アースラの艦長をしています。そこに居る彼は、クロノ・ハラオウン。私の息子で、管理局の執務官です。』

 現れたのはたった今なのはが倒した少年の母親にして上司。それも、時空管理局に所属している者だった。

リンディ『誤解させてしまって申し訳ありません。彼らを倒したのはクロノ執務官ではありません。そこに居る傷だらけの少年がドラゴンに変身。いきなりクロノ執務官に襲いかかったの。』
なのは「氷牙君が、暴走!?(氷牙君が暴れたって事は、また凄く怒る様な出来事があった・・・って、この人達、時空管理局って・・・もしかして・・・)」

 リンディの説明をマルチタスクを用いて聞きながら、同時に現状を整理し始めるなのは。氷牙が暴走した原因がすぐさま思い当たる。

リンディ『クロノ執務官は抗戦していましたが長くは持たず、其処に居るもう一人の少年が呼びだした死神の様な恐ろしい者がドラゴンに変身した少年を倒したのです。そして、元の姿に戻った少年を警戒して杖を向けて居たところに、君達がやって来たと言う訳です。』
ユーノ「・・・事情は分かりました。そして、氷牙さんが暴走した理由も、心当たりがあります。」

 隠したところで意味も無いし、相手にも嘘を付けない様に素直に話すユーノ。

リンディ『それはいったい・・・?』
ユーノ「貴女方が、”時空管理局”という組織だからです。」
リンディ『それは、どう言う事ですか?この管理外世界である地球に、時空管理局の存在が知られている筈はありませんが・・・』

ユーノ「氷牙さんは、地球の人ではありません。昔、時空管理局に”故郷の星を滅ぼされた”犠牲者です」
リンディ『な!?・・・そんな・・・まさか・・・』

 流石に、氷牙が人間ではない事や、何百年の生きている事は伏せて、濁した言い方で話すユーノ。未だ年齢一桁の少年ではあるが、その頭の回転は大人と遜色は無い。

リンディ『・・・いえ。今はそんな事より、皆さんの治療が先ですね。すみませんが、こちらの艦・・・アースラにご同行願えますか?』
なのは「・・・・・・(ユーノ君、どうするべきかな?)」
ユーノ「・・・(そうだね・・・あの人たちが本当に管理局員なら、付いていくべきだけど、氷牙さんが目を覚ました時、管理局の艦内なんて事が知られたら・・・僕達も纏めて宇宙の藻屑になりかねないし・・・)」

 リンディ達に悟られない様に念話で話し合う2人。氷牙が正気を保てるなら二つ返事を返せるのだが、記憶を取り戻し始めた事で、管理局に不信しかもっていない氷牙が、そう簡単に従うのかと・・・不安要素しか思い浮かばないのだった。

G『・・・お2人とも、ここはついていきましょう。』
なのは「(ガングニール・・・でも、氷牙君の事は・・・?)」

 なのは達が念話で会話していると、ガングニールが話しかけてきた。
暴れていた氷牙を大人しくさせようと、また無理をしていた為に反応が遅れたのかそれとも敢えて黙っていたのか・・・。

G『時空管理局員よ、今回は貴様等に従ってやる。だが、氷牙様に危害を加えてみろ。その時は、貴様ら全員宇宙の塵へと変えてくれる!』

 ゾクッ!と、管理局員から見ればただのデバイスにすぎないガングニールからの殺気は、犯罪者を捕えて来た管理局員でも背筋が凍る程の重い物であった。

リンディ『・・・(何、今の殺気は・・・人工知能があるとは言え、機械であるデバイスがアレほどの物を放てるなんて、聞いた事が無い。・・・警戒はしておくべきね)分かりました。ですが、治療だけはさせてくださいね?』
G『・・・いや、貴様等の治療は必要ない。場所の提供だけで結構。貴様等に余計な借りは作りたくないのでな。』

 氷牙と違い、記憶も記録も消されていないガングニールにとって、時空管理局の手を借りる事は何よりも避けたい事柄。だが、自身のプライドよりも主人の事を優先するが故の妥協。それがガングニールの許せる限界でもあった。

リンディ『それでは、出来るだけ全員を一カ所に集まる様にお願いします。』

 言われ、なのははフェイトとアルフを、ユーノは弘政とクロノを氷牙の横たわる場所まで一人ずつ背負って集めていく。

なのは「あの、準備出来ました。」
リンディ『分かりました。少しの間だけ、じっとしててくださいね?エイミィ。転移をお願い。』
エイミィ『了解!』

 ほんの数秒後、なのは達は光に包まれて、一瞬でアースラへと転移されたのだった。

――次元航行艦アースラ――

なのは「・・・・・・ここが、アースラ?」
ユーノ「そうみたいだね。輸送船よりも大きいみたいだけど。」

「それでは、怪我人は我々にお任せください。」
なのは「あ、あの・・・宜しくお願いします!」

 転移室で待機していた医療班の一人がなのは達の前に出てきてなのはに許可を取る様に敬礼してきた。
 それに対して少し戸惑いながらも返事を返し、なのはは頭を下げた。

 一番ボロボロの氷牙を3人がかりでそっとストレッチャーに乗せると、そのまま医務室へと運んでいった。
 辛うじて意識を取り戻したクロノは、肩を借りながらストレッチャーに自分で寝転がると、同じく医務室へと運ばれていく。

 そして、一番軽傷であるアルフ・弘政・フェイトはストレッチャーを使う程の怪我を負っていない為か、抱きかかえるように連れて行かれた。

局員「それでは、こちらへ。彼らと同じ医務室へお連れします。本来ならばすぐにでも艦長の許へお連れしたいのですが・・・お友達の事も心配でしょうから艦長自らお出向きになるそうです。貴女も、お友達の傍に、居たいでしょう?」

 まるでこちらの心情を察してくれたかのような配慮に、なのはとユーノは気持ち深めに頭を下げるのだった。
メンテ
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.5 )
日時: 2016/05/11 02:26:56
名前: 孝(たか)

 コツ、コツ、コツ・・・
アースラの医務室へ向かう通路をゆっくりと歩く人物が一人。

リンディ「・・・・・・(管理局に故郷の星を滅ぼされた子・・・)」

 このアースラの艦長であり、なのはが倒してしまったクロノの母親・リンディ・ハラオウンは考える。

 クロノに襲いかかってきた竜へ変化した少年・氷牙の事を・・・

リンディ「・・・(ここ最近で管理局が関わって星が滅んだ記録と言えば、5年前の水の星と、砂漠の星、そして、11年前の・・・あの人を失った闇の書の暴走・・・だけど、そのどれもが野生生物は居ても、知的生命体の存在は確認されていなかった・・・でも、それ以外で星が滅んだ物と言えば、数十年から数百年以上も昔の記録しかない・・・)彼はいったい、何者なの?」

 恐らく魔法の類だろう竜変化の魔法を扱い、相当の年月を経て成長したAIを持っているであろうデバイス(ガングニール)を所持したクロノ(実年齢14歳見た目10歳前後)と差ほど変らない年頃の少年。

リンディ「・・・(着いてしまった・・・仕方ない。あとは直接聞いてみるしかないわね)失礼しますね」

 医務室の扉前のパネルを操作して一声かけてから中へと入るリンディ。
そこには、心配そうにお友達を眺めるなのはとユーノ、そして医師の姿があった。

リンディ「改めまして。次元航行艦アースラ艦長。リンディ・ハラオウンです。」
なのは「えっと、改めまして、高町なのはです。」
ユーノ「どうも、ユーノ・スクライアです。」

 リンディの自己紹介につられて互いに自己紹介する3人。
少々の緊張が見られる少年少女の2人に頬笑みを返す。

リンディ「早速で悪いんだけど、事情を話してもらっても良いかしら?」
ユーノ「はい。事の始まりは・・・」

 そうして、ユーノはジュエルシードの発掘から輸送中の事故、地球に落下したジュエルシードの探索、そして、現地協力者となったなのはや氷牙達の事を掻い摘んで話した。

リンディ「そう、あなたがあのロストロギアの発掘を・・・」
ユーノ「はい。それで、僕達が回収しようと・・・」
リンディ「立派だわ。」

 リンディは素直にそう答える。ユーノ達はまだ年齢が一桁の子供だ。普通の子供であればまず隠して逃げ出す。
 ロストロギアと言えば、ピンからキリまであるが、一歩間違えば星をも消しかねない程の危険物である。
 それを、分かっていて逃げ出さずに立ち向かう、その責任感の強さを。

クロノ「だけど、同時に無謀でも、ある。」

 ふと、丁度目を覚ましたのか、傷の痛みを我慢しながらクロノがユーノを叱る。

クロノ「一歩間違えば、君達だけでなく、この星も危険に晒す事に・・・」
『それは貴様らが言えた義理ではないだろう。』

 そうしてクロノの言葉を切り捨てるように割り込む声がする。誰あろう、ガングニールである。

クロノ「どう言う、意味だ・・・」
『ロストロギアが危険であり、ジュエルシードが一つだけでも次元断層を起こしかねない代物であると知っていて、なお、貴様等が到着したのはジュエルシードが地球に降りてから”数か月後”それまでに、発動したジュエルシードは21個の内既に11個。半分が発動している。ユーノ殿が行動を起こさずに居れば、この星はとうの昔に消え去っていた。それを・・・貴様が説教をする資格など無い!!』
クロノ「く・・・だ、だが、こちらにも事情が・・・」

 ガングニールの正論すぎる言い分に、クロノも引くわけにはいかないと反論する。

『他の事件で手が回らないとでも言うのだろう?戯けが。次元世界を管理し守るのが使命などと言っておきながら、人手が足りませんでしたと済ませる気か?それこそふざけるなと言う物だ。間に合わなければそこは星ごと消えているのだ。謝罪する相手が居ないのだからとたかを括って現場検証をしてハイ終了。とてもいい加減な次元世界の警察機構だな。』
クロノ「な!?管理局を愚弄するのか!」

 自分が勤める組織をバカにされて、憤慨しない者は少なくない。
傷の痛みなど知った事かと言うようにクロノが立ち上がる。

『ならば、貴様は先程なんと言った?ジュエルシードの危険性を知っていて尚、遅れた理由が”他の事件に関わって人手が足りずに数カ月も遅れてしまいました。”次元断層を引き起こす危険なロストロギアが11個も発動した上で、それを、”管理外世界”であるこの地球に来てどの様な言い分があると言うのだ?』

 ガングニールの言う通り、時空管理局では、地球の事を”第97管理外世界”と名付けている。

 管理外世界とは、管理局が定めた魔法技術及び科学技術が一定を満たさない世界の総称であり、ある一定の基準に至るまで無暗に技術力を高めない為の措置である。

 地球の様に、魔法技術の無い世界から言わせれば、”上から目線のかってな格付け”である。

なのは「管理外世界?」
ユーノ「え〜と、主に、魔法技術の無い世界に対して指定する区分けみたいなものかな?ほら、今回のジュエルシードの様な物を無暗に作り出させない様に、下手に干渉しない様にする為の措置だよ。」
なのは「なるほど。地球で言うところの、核兵器みたいなものなんだね。ロストロギアって・・・」

 ユーノの説明で瞬時に事の大きさを理解したなのはは、実に聡明である。

『ハッキリ言って、確かにユーノ殿の判断は無謀ではある。だが、結果論ではあるが、ユーノ殿によってなのは殿が魔導師として目覚めた。そのおかげで幾度となくジュエルシードの暴走を食い止める事に成功した。素人であり、未成年であるが故に危険な目にもあった。だが、ユーノ殿の行動で、この地球はたった数カ月で11度もの滅亡を事前に防ぐ。それも、滅亡を誰にも悟られず、誰からも知られず、誰からも感謝される事も無い。見返りを求めない。この星の救世主として相応しい功績を残した。貴様等の様に、他星の民を見下すような、選民思想組織の犯罪集団に、叱咤されるいわれは無い!!この戯けが!!』

 これでもかと言うように管理局を虚仮にするガングニールであった。
メンテ
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜第U幕 ( No.6 )
日時: 2016/07/12 07:40:42
名前: 孝(たか)

クロノ「管理局が犯罪集団・・・!ふざけるな!?何を持ってそんな」
『犯罪者に温情を与えて管理局の嘱託として働き、功績を残せば減罪。魔導の力を持っていれば年端もいかない子供を平然と戦地へと送り出す組織が、犯罪集団で無くなんだと言うのだ?』

 そう、管理局は慢性的な人手不足。更には魔法至上主義とも言えなくもない。別に、必ずしも魔法が使える局員ばかりではない。魔導師ではなくとも魔法を持ちいない部署も多々あるが、魔法という”力”があれば、10歳に満たない子供でも職員として雇い、重要な任務に就く事も出来るが、裏を返せば、”優秀な力さえあれば子供であろうと戦地に送り込む”とも取れる。

 聞く人が聞けば少年兵と思われても然程変りは無いだろう。更に、決して一枚岩ではなく、”自分たちの考える正義のためであれば犠牲もやむなし”という危険思想を持つ者が末端部のみならず上層部にもいる。

 また、警察・軍隊・裁判所といった治安維持や法務執行の機能全てを併せ持っている事は、見方を変えれば、”管理局という一つの組織のみの意向や都合によって、裁判等で被告人の有罪か無罪かを自由に取り決める事も出来る”という、ある種の危険な部分もあり、不足している魔導師の人材確保の為に前科のある人間でも積極的に採用する事が容易に可能になっているのだ。

『そもそも、貴様等の組織はその思想が危険極まりない!”正義の為であれば犠牲を厭わない”など、正義とは言わん!そんな物は傲慢だ。自分達の行いが全て正しいなどと謳い、大義名分などと言いながら簡単に命を弄ぶ!それが犯罪で無くなんというのだ!』
クロノ「管理局はそんな組織じゃない!次元の平和を護る為に」
『貴様等が介入した事でどれだけの星と命が滅びたと思っている!!』

 反論を切って捨てるガングニール。クロノ達がどう言おうと、管理局に介入されて滅び、歴史から抹消された物が数多く存在する。

『貴様等の最高権力である最高評議会の愚かな行いで、どれだけの無意味な犠牲が築かれたと思っているのだ!奴らさえいなければ、氷牙様は孤独になる事など「最高評議会ですって!?」っ!?』
リンディ「それは本当ですか!?最高評議会が関わっていると言うのは!」

 最高評議会の名を聞いてリンディは血相を変える。怒りと恥を同時に顕わにするような表情で、ガングニールに問う。

『・・・そうだ。奴らによって氷牙様は故郷を、家族を、友を、仲間を失い、孤独となった。最後に残った弟君は、奴らの手によって”闇の書”に改造された魔導書によってヴォルケンリッターと共に消え去「”闇の書だと”」っ!?』

 またもガングニールの言葉を遮り、クロノが闇の書に反応を示す。

クロノ「闇の書が最高評議会によって改造されたとは本当なのか!?」
『・・・真実だ。魔導研究書であった”夜天の魔導書”。魔法を蒐集し、研究するための魔導書。奴らは、”魔法を蒐集する”という点に目を付け、それを改造する事で全ての魔導を己の物とする為に、氷牙様の弟君・龍牙様を誘拐。そして、それを救出に出向いた”5人の守護騎士”が、”闇の書の最初の犠牲者”となった。』
リンディ「最初の?つまり、リンカーコアを蒐集された、という事ですか?」
『・・・・・・いいや。5人の守護騎士は、”肉体諸共蒐集された”のだ。』

 肉体諸共。魔法や魔力だけではない。生身の肉体と、魂。それら全て存在そのものを奪われたのだ。

クロノ「嘘だ・・・それじゃあ、11年前の父の犠牲は・・・僕達管理局の自業自得だとでも言うのか?・・・そんな、それじゃぁ、今まで僕は、何の為に・・・」

 闇の書の真実を知って、今まで自分の正義を貫いてきたクロノは、それらが全て無意味なものだったと思いこみ、茫然自失となっていた。

『・・・・・・なるほど。貴様等も闇の書の被害に会っていたか。闇の書によって管理局から被害者が出た。私から言わせれば、そんな物は貴様等の自業自得だ。自らが生み出した災厄が、自分達に返ってきただけなのだからな。知っているぞ。闇の書が暴走する度に、貴様等は闇の書によって選ばれた主毎、”魔導砲・アルカンシェル”によって消滅させている事も。本来なら何の罪も無い一般人を、闇の書を所持していただけで犯罪者と決めつけ、幾人かは投獄していた事もな。』

リンディ「なん、ですって?投獄?そんな事、聞いた事も無いわ!確かに、何度も闇の書が暴走する度に、アルカンシェルを使用し、破壊した事は記録にも残っている。でも、闇の書の所持者を捕縛した事実は聞いた事が無いわ!」
『当たり前だ。奴らが自分達の利となる物を早々に漏らす訳が無い。悪人が主だった場合はアルカンシェルで消滅させ、善人であれば捕縛の後に闇の書を奪い、不要となった主は実験体として送られる。奴らは、自分達を絶対の正義と定め、他は有象無象に過ぎない。そんな奴らが設立した管理局が、正義の筈が無かろう。』

 管理局その物を全否定し、設立当初からトップが腐っている事を明言して見せた。管理局の上層部の大半はそんな思想ばかりなのだ。
 真に次元世界の平和を願っている者など、下層部の物が大半であろう。

 それが、ガングニールの記録にある時空管理局という組織なのだ。
メンテ
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜第U幕 ( No.7 )
日時: 2016/12/20 03:40:46
名前: 孝(たか)

氷牙「う、ぐ・・・ぃ」

 ふと、気絶していた氷牙が意識を取り戻し、全身の痛みに苦悶の声を漏らす。

『っ!氷牙様!お目覚めになられましたか?』
氷牙「あ、ぎ・・・し、くふ、を。せ、れい、よ。そ、ちか、しろ、き、なの、しず、とな、て、か、もの、きず、い、せ。・・・ヒ、ル」

 痛みに耐えながら、何かを途切れ途切れに呟いている氷牙。そして、呟きが終わると同時に、粉の様に細かな光が氷牙の身体全体を包み込む。

クロノ「これは、いったい?」
なのは「えっと・・・確か、回復魔法のヒールだったと思うの。」

 数秒。氷牙を包み込んだ光は泡のように消える。そうして、漸く痛みが轢いたのか、ゆっくりと氷牙は起きあがった。

氷牙「い、たた・・・」

 ゴキ、ボキ。と、硬くなっていた筋を解すとキョロキョロと周りを見渡す。

氷牙「・・・知らない部屋だ。」
なのは「氷牙君。それを言うなら、”知らない天井”なの。」

 と、ネタを挟みつつ氷牙は知らない顔の2人に視線を向ける。

氷牙「・・・・・・・・・誰?」

 リンディの事はともかく、クロノの事すら覚えている様子がないようだ。

リンディ「コホン。初めまして。私はリンディ・ハラオウン。この次元航行艦アースラの艦長を務めています。」
氷牙「あ、どうも。初めまして。氷牙で・・・次元、航行艦?」

クロノ「先程も紹介したが、僕は執務官のクロノ・ハラオウンだ。」
氷牙「は、はぁ。えっと・・・親子?」

 先程の事を全く覚えていないせいか、軽く混乱している氷牙。

『氷牙様。目が覚めるまでに、何をしていたか覚えておりますか?』
氷牙「え〜と・・・学校が終わって、帰ろうとしたタイミングでジュエルシードが発動して・・・ファリンからガングニールを受け取って・・・弘政と一緒に向かって・・・フェイト達と協力して封印して・・・それをフェイトに預けて・・・っ!?」

 そこまで思いだす直前にクロノの顔を見て、バッとベットから飛び出してクロノから距離を取る。

氷牙「管理局・・・!」

 クロノとリンディの正体が判り、怒りを顕わにして睨みつける。
今にも魔力を解放してこの艦諸共に宇宙の塵に還そうとする。

『氷牙様!お待ちください!この艦には我々以外にもなのは殿やフェイト殿達もおります!今しばらくの辛抱です!!』
氷牙「ガング、ニール・・・なのは、ユーノ・・・弘政、アルフ・・・フェイト・・・!?」

 ガングニールの声に反応して、ゆっくりと部屋の中を確認する。
リンディのすぐ横にはなのはとユーノ。視界の端にはベットに眠るアルフと弘政。そして、フェイトの姿を確認すると、再びリンディ達に視線を戻す。

氷牙「お前達、この星に何をしに来た・・・」

 また気を失った事で更に記憶が戻り、警戒を解かずにリンディ達に質問する。

クロノ「・・・次元震の反応を追って、この星に来た。数ヶ月前に要請があった。ロストロギア、ジュエルシードの回収だ。」
氷牙「・・・渡さない!アレは、ジュエルシードは僕達に残された遺産の1つだ。これ以上、お前達管理局に僕達の技術を奪われてたまるか・・・」

 ジュエルシードの回収と聞いて、再び怒りが沸き上がる氷牙。魔力が漏れ出し、陽炎のように揺らめく。

クロノ「・・・誤解しないでくれ。今の僕達に、アレをどうこうする気は・・・無い」

 覇気も無く、酷く落ち込んだような表情で氷牙に返答するクロノ。それを疑わしげに見る氷牙。

『氷牙様。どうやらこのアースラの乗員、少なくともここにいる2人は最高評議会の手の物ではない様です。』
氷牙「あ、そうなの?」

 先程までの怒りが一瞬にして消え去る。
ガングニールへの信頼故だろうか、それを疑う事も無く普段の氷牙と変わらない落ち付いた状態に戻った。

ユーノ「軽!?そんなあっさり!?」
氷牙「ガングニールには嘘発見器みたいなの搭載してるから。ガングニールが違うと言えばそれが真実。」

なのは「もうガングニールは何でもありなんだね。」汗

 さっきまでの険呑な空気はなんだったのだろうかと呆れるなのはだった。

氷牙「ところで、なのは。」
なのは「ん?何氷牙君?」

 氷牙はふと気になったのでなのはに聞いてみることにした。

氷牙「ファリンはどうしたの?」
なのは「・・・・・・」
ユーノ「・・・・・・」

「「あ”」」

 氷牙達が傷ついて倒れていて、その原因だと思い込んでいたクロノを倒す事に集中し過ぎて肝心のもう一人、ファリンの存在をすっかり忘れていたのだ。

なのは「どどどどどっどどどどうしよう!?ファリンさんの事忘れちゃってたの!?」
ユーノ「ご、ごめんなのは!僕もファリンさんの事忘れてたよ!結界張ってたのはフェイト達だからその辺り失念してた!?」

クロノ「・・・そのファリンというのは、この人の事かな?」

 ぽちぽちと端末を弄って地球のジュエルシードが発動した地点を映し出す。

そこに居たのは、氷牙が竜変化した時に落としたランスを危なげに抱えて右往左往しているメイド服を着たファリンの姿があった。

 自動人形であるファリンも、それなりに筋力があるのだが、氷牙の扱う槍は、総じて重いのだ。

突撃槍:ランスは基本的に大きい物が普通であるのだが、片手で扱える物も当然ある。しかし、氷牙の扱う槍は一番軽い物でも300キロもある。そして、今ファリンが抱えているランスは、500キロである。普通の人間なら、まず一人で抱えて持ち運ぶなど出来ない代物なのだ。

氷牙「そうそう。ファリンは魔力を持ってないから、許可してない結界内に入れないんだよね。・・・呼べる?」
クロノ「連絡さえ取れれば、こちらに転送しよう」

 一瞬、迷いはあったが氷牙の機嫌を損ねてアースラが沈んだら目も当てられない。リンディが許可を出すのを確認してから了承するクロノ。

氷牙「ん。じゃぁ・・・『ファリン。こちら氷牙。応答願いまーす』」
ファリン『ひゃ!?えっと、氷牙君ですか?どこから?』

 ファリンはキョロキョロと人がいない事を確認してから返事を返す。

氷牙「『えっとね。ちょっとそこでじっとしてて。』クロノ。お願い。」
クロノ「分かった。エイミィ、この女性をこちらに転送してくれ。彼らの仲間だ。」
エイミィ『アイアイサー!・・・・・・っと。転送完了!』
クロノ「じゃぁ、彼女を医務室まで案内を頼む。」
エイミィ『了解だよクロノ君。』

 プツン。と、通信が切れる。間もなくファリンを連れてやってくるだろう。

クロノ「・・・・・・?なんだい?僕の顔に何かついてるか?」
氷牙「さっきのエイミィって子・・・クロノの彼女?」
クロノ「んな!?ち、違う!彼女はただの同期であってそういうんじゃない///」

 突然の事で不意を突かれたせいか顔を真っ赤にしてムキになりながら反論するクロノ。それだけで、だいたいの事が判るというものだ。

クロノ「ゴホン。ところで、君には聞きたいことが2つ・・・いや、3つあるんだが、聞いても良いかな?」
氷牙「答えられることなら。ただし、質問一つにつき、僕達からも1つずつ質問を返させて貰うけど?」
リンディ「ええ。それで構いません。」
氷牙「じゃぁ、そちらからどうぞ。」

 言って、氷牙はまずクロノ達の聞きたい事を尋ねる。

クロノ「まず一つ目。ユーノ達の話だと、君は地球人ではないとの事だが・・・」
氷牙「・・・うん。僕は最高評議会が原因で滅ぼされた”アルハザード”の最後の生き残りだ」

クロノ「そう、そこだ。僕達が気になっている事は。最高評議会が原因というのもあるが、アルハザードは遥か昔に滅んだとされている伝説の地の筈。その理由が知りたい」
氷牙「・・・遥か昔なんかじゃない。アルハザードが滅んだのは、ほんの400年前だよ。」
クロノ「いや、十分昔レベルなんだが・・・確かに、遥か昔と言えば古代レベルの筈。400年なら・・・いや待て、400年前なら、何故君は今ここに居る?コールドスリープでもしていたのかい?」

 そう、普通の人間なら生きている筈が無い。コールドスリープで眠っていたという方が現実味がある。氷牙は多少の躊躇はあったが、話始める。

氷牙「いや、僕は普通にそれだけの年月を生きてるよ。ガングニール。僕の記憶では、520歳くらいなんだけど、実際は?」
『今年で704歳になられました。』

 ガタンッ!という音と共に、クロノとリンディは立ち上がり、アルフがベッドから転げ落ちた。どうやら途中から起きていたらしい。

クロノ「な、704歳!?どう言う事だ!」
リンディ「そんな年月を生きていられるなんて、それもアルハザードの技術なのかしら?」
アルフ「ど、どう言う事だい氷牙!?あ、アンタはいったい何者なんだ!?」
氷牙「おはようアルフ。今は少しだけ落ち着いてね?後、これは技術でも何でもない。元々、アルハザードの住人は長寿なんだ。」

 三人は思う。700年が長寿で済まされる訳が無い・・・と。
メンテ
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜第U幕 ( No.8 )
日時: 2016/12/21 04:41:07
名前: 孝(たか)

氷牙「今の僕の十倍が平均寿命かな。」
クロノ「ああ、つまり7000前後のってふざけてるのか君は!?いくらなんでも、数千年も生きるなんてドラゴンじゃな・・・・・・ま、さか・・・」

 その時、クロノはつい先ほどの戦闘を思い出す。目の前の少年は、竜の様な姿に変化していたではないか・・・と。

氷牙「そう。アルハザードの住人は、”人間じゃないんだ”。」

 氷牙は儚げな表情でそう返す。それが真実であると。

リンディ「・・・つまり、アルハザードの技術力が総じて高いのは・・・人よりも上の存在であり、長い年月を生きているから・・・と言う事でいいのかしら?」
氷牙「うん。そのせいで、ありもしない物まで有ると勘違いされた事もあるね。一番多い例えは・・・死者蘇生と、不老不死の技術。そんな物は、いくらアルハザードの技術が高いと言っても存在しない。医療技術が何倍も進んでいて、死者蘇生と勘違いされたのと、超寿命による不老不死と勘違いされた。それだけのことなんだよ」

 寿命が長すぎるが故に不老不死の技術があると勘違いされ、医療技術が高過ぎるが故に、死者蘇生の技術があると勘違いされた。

 ただ噂が独り歩きして大げさになってしまっただけなのだ。

クロノ「君が人で無い事は、理解した。つまりその姿は・・・擬態と思えばいいのかな?」
氷牙「う〜ん。別に擬態してるつもりは無いんだけどね。簡単に言うと、人型の血が混じってる龍・・・龍人種だと思ってくれればいいよ。人の形をした龍。」

 人間ではないが、ヒトでもあると言う事なのだろう。と、クロノ達はそう解釈した。

氷牙「じゃぁ、次は僕から・・・君達は、最高評議会がどう言う存在か、気付いてる?」
リンディ「それは、どう言う意味かしら?」
氷牙「・・・管理局が設立してから凡そ300年弱。その間に、評議会が、”代替わりした”という話を聞いた事、ある?」

 その一言を聞いて、リンディとクロノも理解する。何故、今までその事に気付かなかったのか・・・と。最高評議会は、管理局が設立されてから一度も代替わりしていないのだ。それを、次元世界の誰もが気付いていないと言う異常に、今になって漸く気付く事が出来たのだ。

リンディ「そ、それじゃあ・・・今、評議会は一体・・・!?」
氷牙「・・・ガングニール。」
『御意。これが、最高評議会を名乗る愚者共の正体です。』

 そう言って、ガグニールはある映像を映し出す。
そこに映っているのは・・・何かの液体で満たされた巨大な円筒状のポッドに浮かぶ、3つの脳髄だった。

 それを見た瞬間、一同は呼吸を忘れる程の衝撃が襲う。
管理局の設立者達は、既に人ではなかったのだ。

クロノ「こ、れが・・・最高評議会だって?こ、こんなの・・・」
リンディ「脳髄だけを残して、延命しているとでも言うの!?」
なのは「う、うぅ・・・」
ユーノ「なのは、大丈夫?」

 クロノとリンディは、自分達の組織に初めて疑問を持ってしまう。そして、なのははあまりにショッキングな事実に、吐き気を催す始末。

氷牙「奴らは、管理局を設立して組織が大きくなるにつれ、ある思想が生まれた。”自分達がいなければ、世界は平和にならない”。そんな、傲慢な思想が、肉体を捨てる事を簡単に選んだ。そう・・・僕達、アルハザードの技術を使って!!」

 氷牙はまた心の底から怒りが沸いてくる。だが、それを無理矢理に押しとどめる。今、ここでそれを爆発させる意味が薄い故に・・・。

氷牙「・・・この事を信じるかどうかは、君達の自己判断に任せるよ。話を聞いてそれを鵜呑みにしているようなら、人形と変わらないからね・・・次の質問は、何かな?」
リンディ「・・・ええ。これが事実かどうかはこちらでも調べてから判断します。2つ目の質問は・・・闇の書についてよ。」

 リンディ達にとって、闇の書は家族を殺した仇である。情報が欲しいのは当然のことだった。

氷牙「闇の書・・・僕も、まだ記憶が全部戻った訳じゃないから、ガングニールに説明の補佐を頼むけど、いい?」
クロノ「・・・ああ。聞かせてくれ。」

 クロノ達は、覚悟を決めて話を聞く事にした。

氷牙「闇の書、本当の名は、夜天の魔導書。その用途は、研究資料書だよ。魔法を蒐集し、それを研究、調整する為の物。それ自体に、誰かに害を齎すことなんてあり得ない物。ただし、その時から転生機能は有ったんだ。だけど、魔法を蒐集する機能と、転生機能に目を付けた者たちが居た。それが、管理局の設立者・・・最高評議会だ。」

 ガングニールから聞かされていたとはいえ、自分達が所属していた最高権力が、正義を謳っていた組織が、災厄を生み出したと聞かされて正気でいられるわけがない。だが、それは話を聞き終えるまで耐える2人だった。

氷牙「当時、夜天の魔導書は、僕の弟が所持していた。物心つくころにはいつの間にか持っていたみたい。この辺は僕の記憶があやふやだから割愛するとして、君達は、管理局の技術力が、設立から300年程度にしては、高過ぎると思った事はあるかな?」
リンディ「・・・正直なところ、私が所属してから今まで劇的な変化は無かったから、あまり疑問視していなかったというのが、正直なところよ。」
クロノ「・・・僕も、同じだ。既に当たり前の技術だと思っていたからね・・・」

 管理局は複数の次元世界と同盟を結んでいる。ならば、それだけ多世界の技術が集まってくるのだ。高い技術は当然と思っていたのだろう。
メンテ
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝承に語られし者達〜第U幕 ( No.9 )
日時: 2016/12/22 07:09:51
名前: 孝(たか)

氷牙「・・・そう。やっぱり、今の人たちは知らないんだね・・・。管理局は、本来ならこの時代には存在しない組織だ。」
クロノ「それは、どう言う事だ?」

氷牙「言葉通りの意味。管理局は・・・最高評議会を含めて、未来から来た未来人だ。」
リンディ「まさか!?いくら管理局でも、時を遡る技術なんて持っていない筈よ!」

 そう、いくら技術があろうとも、時間逆行など出来る筈がないのだ。だが、現にこうして管理局は存在しない時代に設立されてしまった。

氷牙「その原因は、僕だ。僕の持つレアスキル”次元干渉”それが暴走した結果だと思ってくれていい。」
クロノ「次元・・・干渉?次元航行艦の様に次元を渡る技術の事かい?」
氷牙「・・・そんな可愛い物じゃないよ。僕の能力を全開にすれば、次元断層を起こす事も、消す事も、捻じ曲げる事も出来る。こんな風に・・・ね。」

 そう言って、氷牙はゆっくりと左手を挙げると、×の字を描いて、その中に腕を肘まで差し込む。
それは、クロノの視線からは氷牙の腕が肘から下が綺麗に無くなっている様にしか見えない。

クロノ「んなっ!?」
リンディ「ひゃっ!?」

 そして、その消えている腕は、リンディの右肩を軽く叩いていた。

氷牙「空間を捻じ曲げ、距離と言う概念を無くし、其処に干渉する。更には、時間と言う概念も捻じ曲げると・・・」

 今度はクロノの周囲に氷牙が腕を差し込んだ穴の出口が十個ほど現れると、氷牙の左腕が同じ数だけ”同時に現れた”。

氷牙「平行時間に干渉して、同じ時間に、複数の自分を存在させることも可能となる・・・次元に干渉するという事は、概念を捻じ曲げる事でもある。そう、この力は・・・虚数空間にすら干渉出来る。恐ろしい物なんだ。」
リンディ「時間も、距離も関係無く、概念を捻じ曲げる力・・・」
クロノ「次元断層だけでなく、虚数空間にすら干渉する能力を、1個人が持ち得ていると言うのか!?」

 存在自体が規格外、人じゃないとか、龍人だとか、そんなちゃちな枠じゃない。生きた天変地異・・・いや・・・

 それは・・・・・・神の領域・・・・・・ではないだろうか。

氷牙「まぁ、出来ると言っても、次元断層を起こす気なんて無いけどね。危ないし。」

 そうして氷牙はすぐさま能力を切る。疲労している今ではこの程度の能力発動でも負担になるからだ。

氷牙「この能力も、最初から有った訳じゃない。突然目覚めて、それと同時に暴走を起こした。その結果が・・・未来の世界で、虚数空間に呑み込まれた管理局の次元航行艦を、助ける羽目になってしまった。それが、僕の最大級の禁忌であり、絶望と後悔と苦痛の始まりだった・・・。」

クロノ「絶望と、後悔と、苦痛?」
氷牙「その次元航行艦は、大破していないのが不思議なくらいにボロボロだった。中に居た人達を、救助して、手当てして、序に艦も直した。だけど・・・奴らは裏切った。」

 先の暴走で随分と記憶が戻り、月村邸で覚えていなかった事も思い出していた。

氷牙「僕達が人間ではない。僕達1人1人が持つ魔力の総量は、管理局の持つ魔力測定機の想定を超える物ばかりだと知ると、手のひらを返した。お前達の存在は危険だ。だから、”我々が管理してやろう”と、そして・・・僕達子供を人質にしたんだ。」
リンディ「そんな・・・まさか・・・管理局がそんな事をするなんて、信じられないわ!」
氷牙「組織というのは、大きければ大きい程、闇も深くなる。明るみに出ないだけで、裏では日常的に行われているんだから。管理局お抱えの、善良を謳う研究所を探ってごらん。恐らくだけど、7割以上は管理局が自ら禁じている物を率先して行っている筈だから。・・・話を戻すよ?誘拐された中には厳重に隔離されている者が2人いた。」

クロノ「2人?たった2人だけを隔離していたのか?」
氷牙「当時、アルハザードにあった皇族の子供。所謂王子である僕と、弟の龍牙だ。」
リンディ「あら、貴方は王子様だったの?」

 これは意外だと驚いた表情のリンディだった。

氷牙「一応は。隔離されている間に、夜天の書は奪われ、”ナハトヴァール”というシステムを組み込まれた・・・その後、僕らを救出しに来た僕らの護衛・・・5人の守護騎士・ヴォルケンリッターが侵入したんだけど、人質である僕らを盾に・・・ヴォルケンリッターは夜天の書・・・いや、ナハトヴァールに肉体毎吸収されてしまった。」
メンテ
Re: 魔導戦記リリカルなのは〜伝 ( No.10 )
日時: 2017/04/29 01:53:54
名前:

クロノ「肉体・・・ごと?それじゃあ、今まで闇の書の事件に現れた闇の書の守護騎士とは・・・!?」
氷牙「そう。ナハトヴァールに呑み込まれ、プログラム生命体に改造され、意思を奪われ、ただの操り人形のように使われている。自分達の技術を過信し、暴走したナハトヴァールを制御できず・・・いつしか、闇の書と呼ばれるようになった。」

 それが、闇の書の真実。管理局創設者達の隠蔽してきた事実であった。

クロノ「・・・・・・最後の、質問だ・・・君は・・・管理局をどうしたい?」
氷牙「・・・正直に言うよ。管理局自体に興味は無い。」

 クロノ達にはそれは意外だった。予想としては管理局全てを消し去りたいと言われても仕方が無いと思っていたからだ。

氷牙「・・・本当なら、管理局をこの世から消してしまいたいよ。でも、それで解決するわけでもない。それに、管理局によって保たれている部分があるのも理解してるつもりだよ。」
リンディ「でも、氷牙君自身は納得していないんじゃないかしら?」

 理解は出来ても納得は出来ないだろう。リンディは自分が同じ状況に陥った場合を考え、そう返す。

氷牙「そうだね。だから、僕自身がやるべき事は・・・最高評議会とそれに便乗して甘い汁を吸っている外道共を・・・生身のまま、物理的に地獄に送る事・・・それだけだ。」

 瞳のハイライトを消し、一切の感情を捨て去った表情で告げる氷牙。それを見た一同は身震いする。

なのは「あ、あのね・・・その、生身のまま地獄に送るって、どう言う事?」

 生身のまま地獄に送る。人が死ねば天国か地獄に行くと言われているのに対し、まるで生きたままでも行ける様な口ぶりだからだ。

氷牙「そのままの意味だよ。天国も地獄も、概念なんかじゃなく、物理的に存在してるんだ。魔界と天界の違いはあるけど、生身でも行く事は出来るよ。制約はあるけどね?死亡して肉体から魂が抜け出ると門をくぐって冥界に行き、閻魔に生前の行いからその場で判決を受け、地獄の門と天界の門に別れていく事が出来る。生者のままだと、濃度の高い魔力に酔うかもしれないけど、特殊な方法で行く事が出来る。さっき見せた僕の能力とかでね?」

ユーノ「えっと、その違いはなんなの?生身のままで地獄に送られるのと死者としてそこに送られるのとで・・・」
氷牙「え〜と・・・ガングニール」

G『御意。簡単に言いますと、肉体とは魂を入れる器です。魂を器で囲い、善悪の制御を行いやすくするのです。そして、器にも個体差・・・この場合、個人差と言い変えましょう。魂は外へ出ようとする。器はそれを押し留める。魂が出ない様に器はそれに対応しようと形を変える。それが容姿という形です。それに対応して見せた器は、善となり、なのは殿達の様に、整った容姿や心を形成します。聞いた事はありませぬか?瞳や拳は魂を映す鏡である。と・・・』

 魂と器がぶつかり合う事で善悪が生まれ、魂と器が対応すれば善へ、対応出来なければ悪へと堕ちる。という事なのだろう。

G『そして、魔界や天界では魂だけで行動できる次元なのです。というより、アレですな、身も蓋も無い言い方をすれば、肉体とは消耗品です。年老いて限界がくれば魂は解き放たれる。しかし、人間界・・・所謂地上では魂は汚染されやすいのです。その為、死神が魂を集め、新たな器に入れ替える。それが、輪廻転生のシステムだと思ってください。』

 つまり、魂は器を変えて”リサイクル”されていると言う事なのだろう。

G『もし、生身のまま天界や魔界に訪れたとしましょう。そうすると、魂と肉体の境が無くなり、完全に同化します。地獄とは罪人に罰を与える場所・・・それも、魂に直接罰を与える。肉体と違い、魂その物に干渉する苦痛は、肉体の受ける比ではありません。故に・・・魂と器が同化すれば、精神と肉体の両方の苦痛を受ける事になる。それは、想像を絶するでしょうな。何故なら、”どれだけ傷付けられても、意識は覚醒したまま、苦痛を味わい続け、決して砕ける事がない”のですから』

 それはまさに・・・無限獄・・・逃げ出す事の出来ない永遠の苦痛を味わうと言う事である。
メンテ

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