#学園HERO# 8話
作者: 神田 凪   2010年05月01日(土) 19時20分23秒公開   ID:Fpk3UqE6X6I
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キュッ、キュッ、
隅々まで磨かれた廊下を歩くたびに音が鳴る。
鼓動の音もはっきり聞こえる。
遠くから部活動生の声が聞こえた。だが、生徒会のおかげでこの棟だけは静まりかえっていた。
誰にも見られることもなくここまで来られた。


一歩一歩、歩くたびに足が重く感じる。
それでも、私は真っ直ぐ進む。


【 第4社会教材室 】

示されたプレートをジッと見て、手を掛ける。
フーッと深呼吸して、一気に扉を開けた。

中は薄暗く、静かだった。
ヒーローがもう来ていると思っていた私は何だか拍子抜けしてしまったが、中へと入った。
話の通り中は広かった。これはもう図書室と言ってもいいのではないか。
2メートルはありそうな大きな本棚が10個縦に並び、その中は難しそうな本がぎっしりと並べてある。
廊下側の棚には大事そうに何かの資料や、歴史がありそうな品が置かれていた。
少し離れたところには小さな机と椅子が二つポツンと置いてあった。一般にある学習机だ。

ほんの少し埃が被ってあったが、ここもきちんと業者が清掃しているのだろう、断然綺麗だった。
放課後、とは書いてあったが具体的な時間は書かれていない。ヒーローが来るまで待っていなくてはならない。
時間つぶしに机に置いてあった本を見てみる。なにかの物語のようだ。表紙には子供向けのようなイラストが描かれていた。


「何でここにこんな物が・・・」


社会教材室には似合わない、それを言えば高校にも似合わない。
内容をパラパラと簡単に見てみる。



  僕が必ず助けるよ、



ドクンと心臓がなった。絵本のセリフの一つが目に飛び込んできた。
びっくりした。ハーッと息を吐いて、もう一度よく見てみる。

何て事のないありきたりな物語だった。
魔王に浚われたお姫様を勇者が助け出すおはなし。

ハッピーエンドが決まっている物語。
悪い魔王は倒され、勇者はお姫様と幸せに暮らす。

読み終わった本をゆっくりと閉じる。
感想は特にはない。分かりきっている展開・・・裏切られることもなく予想通りの終わり。
今の自分の立場が嫌でも考えてしまう。だけど、すぐ苦笑してしまった。

私は、私は・・・お姫様なんかじゃない。
だから、助けられることはない。助けてくれる人なんて・・・



−タスケテ欲シイカ?−




昨日のメールを思い出す。
溢れるように気持ちが抑えられない。ほとんど無意識に私は呟いていた。


「・・・助けて」




この学園が嫌いだ。
嫌いだけど、この学園から離れなくない。
確かに私は2年間頑張ったのだ。私の居場所はここだったのだ。


私を信頼してくれた家族がいた。
私を心配してくれた先生がいた。


生徒はみんな敵と言ったけど、話してくれた人はいた。
でも、私はそれを自分から拒否したのだ。勝手にこの人は何かを考えているのだと疑った。

普通に話してくれた櫻井多喜と安達悠様がいた。
私に自分で行動するという理由をくれた生徒会の二人がいた。

私は、もっと、もっと、もっとこの学園で過ごしたい。
この学園でもっともっと自分を変えたい。



「たすけて、」




私は、





「この学園から、離れたくない!!」























「答えは確かに聞いたよ」















「え、」



静かな室内の中に響いた自分以外の声。
呆然としたが、ゆっくりと顔を上げる。10個並んでいる棚の一つに寄りかかりながらこちらを見る影。
いつのまにそこにいたのか。時間は過ぎ、辺りはすっかり薄暗くなっていた。
顔は見えない。


影はゆっくりとこちらに歩いてくる。だが、すっと私を通り過ぎた。
慌てて振り向いた瞬間、パッと明るくなった。そこで電気をつけたのだと気付く。
そして、


「やぁ、一応・・・初めまして、かな?」



表情は見えない。
なぜならば、目の前の影の顔には、戦隊もののお面。


この影は・・・!!






「ヒーロー・・・!?」














→next story
■作者からのメッセージ
おかしいな。予定ではヒーローの正体が書けるはずだったのですが・・・。
まぁ、やっとヒーローを書けたので満足ですが。一応、主人公なのに、ね。

あまり見直す時間がとれなかったので、字や文章の間違いがありましたら教えてください。

それでは。ここまで見て頂き有り難うございました!

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