シェイキングA
作者: ケイ   2010年04月19日(月) 19時43分50秒公開   ID:m5M8TG0eh.A
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その男は初めて会ったその瞬間からずっと話し続けている。

「奴の通称は<ハッサー>。唯一無二な地獄と言われるハッシンはわかるか?」

「決まってるじゃない。知らない人なんていないわ。天国と地獄と同じくらい有名な場所だもの。赤ん坊を泣き止ませるためにこの名前を口にするくらいよ?」

「奴はそこからのただ一人の脱獄者。」

「!!」

ハッシン
噂によれば地獄より苦しい場所だという。
死よりも恐ろしいその場所から
あたしの家族を殺した奴は
出てこれたというのか?

「おそらく、相当な手練だろう。まず、それはわかったか?」

「・・・癪に触るわ・・・。」

「ん?」

「何か恨みでもあるわけ?どうしてそんな奴があたしの家族を?」

男は苦笑いした。

「お前のところだけじゃない。だから迷宮入り。奴が何者かもわからない。人間でもないのかもしれない。」

「ありえない。」

「お前は何年生きたんじゃ!」

男はあたしの頭をどつく。

「いったーい!」

あたしはすでに半べそ状態。

「あっはっはっはっはー!お前の泣き顔最高っ!!」

こいつは世に言う捻じ曲がった奴。
最悪な人間だ。
人の泣き顔を最高ですってー!

「あんたってさー。最低って言われない?」

「言われるよ?なんで?」

開き直るな!

「そういえばどこの人?変わった瞳ね・・・。」

男の瞳は緑?青?
どっちともいえる色の瞳だった。

「俺はね〜・・・。少なくともこの国の出身じゃないよ。」

「見ればわかるわ。」

「でもどこ出身かは教えなーい。」

「そこが重要なのに・・・。」

男はまた笑った。

「そういえばお前も違うんじゃねぇか?」

「は?あたしはずっとこの国の人間よ。」

「・・・ふぅん。」

男はつまらなそうに口をとがらせた。

「・・・アレだと思ったのに。(ボソッ)」

「何?」

「いや?」

あたしはついに気になっていたことを口に出す。

「あんた名前は?こんなに話して名前聞かないなんて変だよね。」

「ん〜。俺?俺は〜・・・クォンティカル・クリス・フォン・ミューア。」

「長い・・・。何て呼べばいい?」

「クォンでいいよ。」

「クォンね・・・。わかった。」

あたしはこの異色の男とまた会うのではないかと思った。
この予感は見事に当たることになるのだが・・・。
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