BLADE OF SWORD 第七夜
作者: 清嵐青梨   2009年05月04日(月) 23時34分40秒公開   ID:L6pfEASBmTs
翌日、凛がようやくサーヴァントを召還したという彼女からのメールが届いた。然し乍ら俺はその日のお昼休みは進学補習の呼び出しがあり来れない為、その翌日のお昼休みに延長となった。


そして約束の日、早速二人で屋上へ向かいようやく彼女のサーヴァントと俺のサーヴァントの顔合わせをすることになった。

先ず最初に一番にサーヴァントを召還した俺からお披露目となり、アサシンの霊体を解き姿を見せると凛はまじまじと真剣にアサシンの姿を凝視すると、ユウ一寸こっち来なさいと言って俺をアサシンから離して少し距離を置くと行き成り彼女は俺の胸倉を掴んで、あれがアサシンなの?巫山戯ふざけるのもいい加減にしなさいと言ってきた。




「とはいっても、本当に俺が召還したのは正真正銘アサシンなんだけどな」

「あのね、毎回の聖杯戦争においてアサシンのサーヴァントには、十九人いる「ハサン・サッバーハ」の内の誰か一人が召喚されるのは定石なのよ。だからアンタが召還したアサシンは本来存在し得ないアサシンなのよ、それなのになんでアンタはハサン・サッバーハじゃなくて今現界しているアサシンを召還したのよ?そもそも一体何を触媒にしたのよ!?」

「何って…自分の血だけど?あ、若しかして自分の血と一緒にあれを使ったから小次郎を召還したのかな?」
「あれって何よあれって」
「お父さんが長年の付き合いだった刀匠が打った真打ち」
「アンタ馬鹿じゃないの!?その刀、ユウのお父さんが大事にしてたものなんでしょ!?なんでその刀を儀式の触媒に使ったのよ?!」
「いや、だって…他に使う触媒がなかったもので」
「何がいや、だって…よ!言い訳を程々にしないと、」

「其処までにしておかないか、凛。アサシンのマスターが困り果ててるではないか」




と、彼女の後ろから紅いコートを羽織った長身の男が凛と俺を交互に見比べて彼女に向けて言い放つ。というか、何時の間に霊体を解いたんだ…このサーヴァント。

凛は男の言葉を聞いてパッと俺を離すと、そういうアーチャーも何か言いなさいよ、と男に近寄るなり俺とアサシンを指差して言った。
…ん?待てよ、今彼女なんて言った?自分の召還したサーヴァントのことをアーチャーと言っていたか…ということは…。




「凛、お前…セイバーの召還に失敗したのか?」
「う……失敗じゃなくて誤って召還しちゃったのよ」

「嘘は良くないぞ、アーチャーのマスター。本当のところアーチャー、お前はどんな方法で召還されたのだ?」
「実に乱暴な召還だったね、そのせいで自身の真名が思い出せないのだ」




と、アサシンがアーチャーの隣に近寄り召還の理由を問いただすと彼はあっさりと凛の召還の事を話した。案外根は素直なサーヴァントだな、と思ったのだが、矢張り…と俺は何かを確信して凛を見ると、彼女は俺を一瞥しやがて顔を下へ俯いた。




「……ドジったな、凛」
「はい、ドジりました」




と、凛が俺のところに近寄って顔を俺の胸に押し付ける。余程俺に慰めて欲しいらしい。昔からそうだ、何時も何かドジったり叱られてしまった時はこうして顔を俺の胸に押し付けて慰めて欲しいと促すのだ。

俺はそんな彼女を見てふっと笑みを零すとツインテールの黒髪を撫で撫でと優しく撫で始める。その様子を黙ってみていた二人のサーヴァントが、甘いなと同時に同じ台詞を俺に投げる。今凄くグサッと来ましたがグサッと。




その後凛とアーチャーは今後の予定をする為屋上に残り、俺は再びアサシンを霊体化させて士郎と一成がいる生徒会室へ向かった。そういや未だお昼御飯済んでいなかったことを思い出し、今頃食べ終えている頃だろうなーと思い生徒会室へ顔を出す。

予想通り、既に二人は弁当箱を片付けており生徒会室のドアに寄りかかるようにして立っている俺を見て、遅かったじゃないかユウ、と士郎が最初に声をかけてきた。

凛の話が予想外にも長引いてしまってさ、と適当な言い訳をして椅子を引いて座り弁当箱の蓋を開け遅い昼食を開始する。
そういや優香は今朝のニュースを見たか、と一成が無言で昼食をしている俺に向けて聞いてきた。その言葉に俺は食べようとした唐揚げを一度弁当箱の中に戻し一成の顔を見る。




「今朝のニュースって…?」

「そういやユウは今朝俺と桜と一緒に登校していなかったな」
「進学補習のプリントをやりたくってさ……それでニュースがどうかしたんだ?例のガス漏れ事件か?」




最近多発しているガス漏れ事件…つまりキャスターが起こしている事件は俺でも知っている、多分凛も例のガス漏れ事件の主犯を掴んでいる筈。

然し一成と士郎は同時に首を左右に振り出すと、ガス漏れ事件とはまた別の事件だよ、と士郎が言うと一成がその言葉に同意するかのようにうんうんと首を縦に振るとガス漏れ事件とは違う事件のことをスバッと切り出した。




「殺人事件だ、優香」

「殺人…?こりゃまたガス漏れとは打って変わって凄い物騒な事件だな」

「感心してる場合かよユウ、俺だってその話聞いて昼飯も中途半端に終わったんだからな」
「え、完食していないのかよ士郎!?てっきり早く食べ終わったのかと」
「話を逸らすな優香。いいか、今朝近くの家に住む家族が何者かに拠って殺害された。犯人は特定できてないが、凶器は槍か薙刀の様な細くて長い凶器で………如何した優香、顔色悪いぞ」
「え……あ……いや、大丈夫だよ一成」




黙って彼の話を聞いて俺は殺人事件に使われていた凶器を聞いて、ふと脳裏にランサーの顔と紅い槍を思い出し、若しかして彼奴が殺ったのかと思ってしまい血の気が下がっていくのを感じた。だけど一成と士郎のの心配そうな表情に俺は直ぐに活気を戻した。


確かにサーヴァントはマスターに拠る魔力供給がなければ現界することも霊体になることも出来ない。でも他の人間――つまり魔術師ではない人間――を襲い魔力を供給することがある、これは正式なルールかどうか分からないが魔力が供給する分だけ力が蓄えられることが出来る。

でも魔力を供給するがために殺人を犯すサーヴァントがいるとは思わなかった。使い魔は使い魔らしくマスターの魔力供給を素直に受け入れると思ったのだが、マスター以外の魔力供給を行うがために殺人を犯し、ガス漏れ事件を起こし、死んでしまった人間の魂を食らうのか…。




俺は昼飯を食べ乍ら士郎と一成が先ほどの話で云々言っているところを黙って傍観していると、行き成り生徒会室のドアが開かれたかと思いきやドアを開けた人物は剣道部の現部長だった。

彼は俺を見つけるなり、此処に居たか高嶺、と俺に近寄って肩をぽんと軽く叩く。俺は中に入っている残りの御飯を咀嚼し乍ら生徒会室へ向かう際に買っておいた烏龍茶を飲んで流し込むと、如何したんですか部長、部を辞めた俺のところに来て、と用件を問いただす。

それを聞いた部長は、いや大した用ではないんだがな、と早速用件を切り出した。




「今日の放課後他校の練習試合に行くのだが、本日の道場の掃除当番が休みで代役がいなくて困ってな…悪いが道場の掃除当番お前が代わりにやって呉れるか?」

「掃除当番……あぁ、俺が発案したアレ、まだしてたんですか?別に止めても良いのに」

「いやいや、高嶺が発案した掃除当番があったからこそ部員の皆が道着や防具を大切に扱って呉れる人がいて嬉しいのだ。どうだ、やって呉れるか?」
「んー、放課後の進学補習は休みだしバイトの予定もないですし…良いですよ」
「いやぁ、助かるなぁ高嶺。そんじゃ、放課後頼んだぞ」




部長は俺の手を握ってぶんぶん振ると離して、バイバイと軽く手を振ると大人しく生徒会室を退室していった。
その一部始終を見ていた士郎と一成が、お前掃除当番発案を出していたのか、と異口同音で俺に向けて言った。

言ってなかったっけ俺………言ってなかったなそういや。それにしてもこういう約束を押し付けられたからには素直に行うしかないなと俺は烏龍茶を飲み乍らそう思った。
■作者からのメッセージ
※アーチャーズの一人登場。が、もう一人のアーチャーの出番はまだまだ先。

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