狂物語>本編2>英雄の子 |
作者: ハル [Home] 2010年05月05日(水) 19時39分29秒公開 ID:m5M8TG0eh.A |
「軍に入りたいんだよね?」 「はい!」 案内をしてくれているリリ。 リリから視線を離さないダリア。 ダリアはリリに聞いてみた。 「あの、あなたは昔、何かしちゃったんですか?あなたがいる部隊って過去も何も関係ない所ですよね?そんな風には見えないんですけど・・・。」 するとリリの動きが止まる。 「・・・ちょっと、あってね。人には言えないこと。でも・・・・。」 それ以上リリは何も言わなかった。 ダリアは気まずくなった空気を払おうと その辺にあった本を手に取った。 「これってなんですか?けっこう厚いですけど・・・。」 表紙には『英雄集』とあった。 「英雄集?」 それにリリが答える。 「ええ。それには数々の英雄達が書かれているのよ。写真もあるわ。」 「へぇ~。」 ダリアは本を開く。 ピラピラとめくっているとダリアはある1ページで止まった。 リリが不思議そうに見る。 「どうしたの?」 「・・・・。」 ダリアは無言だ。 「ダリア君?」 「・・・!」 ダリアは我を取り戻したようだ。 リリは覗き込む。 「そのページに何かあった?」 ダリアはアタフタした様子で本を閉じる。 「昔、憧れだった人がいたんだ・・・。」 「憧れ?」 「うん。憧れ・・・。」 ダリアは暗い顔でうつむいてしまった。 リリはそれに気づかず話を続ける。 「この人は昔に一番偉かった人だったよね?でも病気で・・・。」 リリはダリアがあのページの人が死んでしまったから悲しんでいるのだと思った。 ダリアは顔を上げ、微笑んだ。 「そうです。偉かったです。憧れでした。今でもそうです。」 ダリアはリリに案内を続けさせた。 ダリアとリリがある廊下を歩いていたときだった。 前方から誰かが歩いてきた。 若い黒髪の男だった。 男はリリと一緒にダリアに目を見開く。 「誰だ?」 「あ、ジル隊長!あの、この人は軍入隊希望者です。」 「そうか。名前は?」 ダリアはここぞとばかりに声を出した。 「ダリアです!隊長!」 「おお!元気いいな。どこに入るつもりなんだ?」 リリが思い出したように言う。 「忘れてました!婆様の所に行って、聞いてきます!」 「おお。そうだな・・・。」 男は歩き始める。 そして立ち去り際にこう言った。 「ま、せいぜい覚悟しとけよ。」 どういう意味なのかダリアはまだ知らなかった。 「こういうことか・・・・。」 リリのいう婆様の所へ着いたダリア。 そこにはもう80はいってそうなおばあさんがいた。 おばあさんは半分しか開いていない目でダリアを見る。 するとおばあさんはリリに「出て行け」と合図をした。 リリは出て行ってしまった。 「・・・・お前さんの耳に付いているそのピアスは?」 おばあさんは細い目を見開いた。 ダリアはそれを手で覆い隠す。 「・・・心配せんでええ。私はマルテル。この軍に住み着く婆じゃ。このマルテル、口が堅いからのぅ。」 (嘘くせぇ・・・。) 「・・・だからそのピアスはなんじゃ?よく見ると竜?蛇?何か彫られておる。まさか、お前さん・・・・・!」 マルテルは目を閉じた。 「リリ・アルがいたじゃろう?あの子と同じ部隊に入るがいい。」 「特別部隊ですか?」 「そうじゃ。きっとお前さんみたいな秘密を持ってる者はそこに行った方がええ。」 「・・・・。」 「さぁ、出て行け。お前はもう軍の一員じゃ。このマルテルと話す理由はもうない!」 ダリアはマルテルに背を向ける。 そしてダリアが立ち去った後 マルテルが言った。 「英雄の子よ・・・。」 |
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