千羽鶴 -二章 作戦開始-(薄桜鬼二次創作 平千 SSL) | |
作者: 林檎頭巾 2011年11月08日(火) 20時11分30秒公開 ID:p74BzNnFnmA | |
今日折った鶴は合計して百八十羽。千羽にはまだ遠い。 藤堂はたくさんの折り鶴が入った紙袋を片手に帰り道を歩いていた。 「そこにいるのって、藤堂さん?」 不意に名前を呼ばれた彼は声のするほうを振り返った。 「千……?」 そこには、千鶴の友人である千が立っていた。少し微笑んで、こちらを見つめている。 「あれ?千鶴ちゃんがいないわね、喧嘩でもしたの?」 「オレと千鶴が喧嘩する訳ねーだろ。あいつは今入院してて学校休んでんだ」 「そっか……。お見舞いには行ってあげたの?」 間髪を入れずに千が訊ねる。 「千羽鶴が完成したら、行くつもりだよ。あいつ、見舞いに来るな、って言ってるけどな」 「へえ、千鶴ちゃんが藤堂さんを拒絶するなんて意外ね。ところで、さっき千羽鶴、って言ってたけど、彼女にあげるの?」 藤堂はその問いにああ、と答えた。 「私も手伝っていいかしら?」 彼女からの意外な言葉に藤堂は少し驚きを見せたがすぐに肯定の返事をしてから、千に袋に入った千代紙を渡した。 鶴を折るのは、これで七人になった。 目の前に、平助君がいる。私は彼に手を伸ばすけど、その手が届く前に彼の姿は風景に溶けるように消えた。 待って。行かないで、平助君―― そこで、目が覚めた。私の目の前に広がるのは真っ暗な病室。どうやら夢を見ていたようだ。 目から熱い雫が頬を伝う。どうやら私は泣いているようだ。 平助君に会わない、って決めたのに。何だろう、この気持ちは。胸が苦しい。 平助君に会いたい。 私は本音を口にしてから、もう一度目を閉じた。 |
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