錨 1
作者: Florrie   2011年07月12日(火) 18時58分41秒公開   ID:4CIi0q99SDQ
「俺と、結婚してください」
「…なあにそれ。新手の冗談?」

笑えないよーう、と言いながら思いっきり笑っている彼女に、はたけカカシは大きく嘆息した。
…やっぱり、俺には荷が重すぎるんだよね…。



「…いいえ、キリハさん。これは冗談なんかじゃありません」

気を取り直してカカシが言う。…というか、冗談で求婚する男がいるか。
任務の話をするときのように、真剣味のこもったカカシの視線を受けて、キリハはようやく笑いをおさめた。
そして、まじまじと後輩の顔を見つめる。

「じゃあ、何? カカシは本気で言ってるの?」

私と結婚したいって? …ここまで露骨に胡散臭いものを見るような視線を向けられるのは久しぶりだ。
虚しくなる気持ちを抑え、カカシは頷く。

「もちろん、本気です。…結婚してくれませんか、俺と」
「……」

キリハは何も答えない。返事に迷う、というよりは今この状況を楽しんでいるみたいだ。
カカシとキリハは、忍の里の暗部――暗殺戦術特殊部隊での先輩後輩の関係だが、…はっきり言えば、それ以上でもそれ以下でもなかった。
キリハは尊敬できる先輩だし、女性としても魅力的だと思うが、だからといって恋人に名乗りを上げようと思ったことはない。
正直言うと、そんなあっさりとした関係だというのに、求婚という荒技に出たのは、カカシだけの意思によるものでは、当然なかった。

――つづく。








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