何があっても
作者: ルーク   2011年04月08日(金) 18時24分06秒公開   ID:SECjYw56uE2
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「うぁ…」
ベッドから起き上がるのもやっとだった。

発熱、頭痛、鼻づまり…。



完全に風邪の症状だった。

ベッドボードに置いてある携帯電話に手を伸ばす。
メールを作成する。

宛名は、今一番声が聞きたい人。
だけど、今一番声を聞かせたくない人。
今一番心配をかけたくない人。


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sub:風邪
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頭痛い


    -end‐
===========

こんな単純なメールを作って送信する。
最近、というか、相馬と付き合い始めてから、メールが質素になっていくような気がして少しおかしかった。
相馬は、言葉や表情からして絵文字をたくさん使いそうなのに、事実全く使わない。というか、単語が多い気がする。
映画、とか、俺の家、とか。
最近はその影響が出てきてしまったような気がする。


家も近いわけじゃないし、まだ朝の8時だからきっと来ないけど、せめてメールの返信くらい…と淡い期待を抱いてまた布団をかける。

家には今誰もいない。
お母さんは今日朝早く仕事に出かけてしまったし、お父さんは出張で明日にならないと帰ってこない。
おかゆを作ったりするのもおっくうなくらい体がだるい。

10分かそこらかで、突然インターホンが鳴った。

宅急便屋さんかな、そういえばお母さんが荷物が来るからって言ってたっけ。
でもこの状態じゃとても外に出られない。
頭ががんがんしてまともに歩けない気がする。

余韻を置いて、携帯電話が鳴る。電話だ。
名前を見て、頬がほころぶ。

「…はい」
『マキちゃん?俺』
「わかるよ」
『風邪、ひどそうだね』
「うん。頭痛い」
『ドア、あけてくんない?』
「は?」

一瞬、呼吸も忘れて目を見開いた。
『…起きれない?』
「さっきの、相馬?」
『そうだよ』
電話の向こうで、相馬がいたずらっぽく笑う声がした。
「庭に回って?私の部屋…窓あけとくから」
『わかった』

そういうとじゃあね、という声とともに電話が切れる。



ほんとに、来てくれた。


思わずほおがゆるんでしまう。

「マキちゃん?」
「…相馬」
「大丈夫…じゃないよね。今お粥作るかr」
「…」

レジ袋を持って、部屋を出ようとする相馬の服の裾を思わず掴む。
「どしたの?」
「……いかないで」

ああ、迷惑かけちゃうな。
自己嫌悪に軽く浸りながら、それでもつかんだ裾を放さないでいると、相馬は私のおでこをそっとなでた。

外気に触れたせいなのか、私が熱いのか、彼の手はひんやりとして気持ちよかった。

「だいじょーぶ、すぐに戻ってくるよ」
「ん…」
私はゆっくりと目を閉じた。


⇒To Be Continued...

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