江戸組っ!第二章〈修正版〉 #1
作者: ちびハチ公   2010年12月25日(土) 19時09分46秒公開   ID:MRiX6gH5OZ6
 「よって勝者、ミオシティのリョウ!」
 「うっしゃー!」
良はガッツポーズをした。
 「レン、お前のおかげだよ!もしお前がさっきアドバイスしてくれなかったらこの勝利は無かったぜ!」
フィールドにいるレン、と名付けたレントラーの元に走って、良はレンを強く抱きしめた。
 「おめでとう、リョウ君。君の勝ちだよ」
「あ、すいません。つい・・・」良は赤面してジムリーダーのヒョウタに頭を下げた。
「レンも巻き込んで悪かったな。ゆっくり休んでてくれ」
 そしてレンはモンスターボールにも戻された。
 「そうやって素直に喜べるのはいい事だよ。このコールバッジは君のものだ」
 良は黙ってバッジを受け取った。
 「そういえば君、図鑑もバッジケースも持ってないみたいだけど、どうしたんだい?」
「え。あの、それは・・・」良は冷や汗をかき始めた。
 
 実を言うと良は、日本からシンオウ地方に「迷い込んだ」人間だ。ポケモンはある事件がきっかけで仲間になり、ある意味の新人トレーナーだ。ミオシティ出身というのも苗字である「宮元」と言いかけた時誤魔化せるように、という理由でつくった嘘だ。

 良が怪しまれないための口実を考えていた、その時だった。
 「すいません!」
 突然、一人の青年が現れた。
「武蔵兄さん!何しに来たんだよ?!」
 その青年は良のいとこである武蔵だった。とはいっても一度死んでいるのである意味ではゾンビなのだが。
 「図鑑とバッジケース、届けに来たんだよ。ナナカマド博士に頼まれてたのに忘れてたよ。ゴメンな」そう言って武蔵は図鑑とバッジケースを良に渡した。
 「あ、自己紹介遅れました。私はカントーのオーキド博士の下で助手として働いております、ムサシと申します。この良は私の妹でして」武蔵は良の頭に手を乗せて言った。
 『何で俺が武蔵兄さんの妹になるんだよ』良は小声で口を尖らせた。
『仕方ないだろ。いとこ同士、何て言って怪しまれる可能性大なんだからな』
武蔵は良を睨みつけていた。


 その夜。
 「お前、相変わらず何でも一味唐辛子加えるのかよ」
「うん。味が無さ過ぎるっていうか甘いっていうか・・・何だろ」
「昔は甘いものメチャクチャ食ってたくせによく言うな」
「うっせ」
 武蔵も良も口の利き方が他の四人より酷いからお互い喧嘩をしている様な口調に聞こえる。が、2人は会話を楽しんでいるように見える。
 と、その時。
 『良』何物かの声が良の耳にだけ聞こえた。
「父さん?!」
良は突然立ち上がった。そして聞こえたはずの声の主を探した。その表情は必死そのもの。
 「どうしたんだよ、良。どうかしたか?」武蔵は唖然としていた。
 「え?だから、その・・・父さんの・・・。やっぱり何でもない」
良は空耳だと悟り、すとんと座った。
 「何だよ、じれったい奴だな」ため息をつき武蔵は言った。
それに対して良は何も言わずにうつむいていた。
 その十秒後。
 『良、何してるの?早く来なさい。迷子になっても知らないわよ』
その声に対し、良はぎゅっと目をつぶり聞こえなくなるのを待った。
「空耳だ、空耳だ。落ち着け、空耳なんだ」良は自分に言い聞かせるように小声で言い続けた。
「おい、良。お前、体調不良なのか?さっきから妙におかしいぞ」武蔵が顔をしかめて言った。
「俺もよく分かんない・・。でも・・・父さんと母さんの・・・」
「・・・まさかとは思うが、春奈おばさんと勇二叔父さんの声が聞こえたのか?」
 良は不意をつかれたような顔をし、黙りこくった。
 「ぬるいな」シンジが一人、そう言い切った。
「何だと?」良は即座に反応し、シンジを睨んだ。
 「死んだ人間の声が聞こえるなんて、ありえないだろ。幻聴以外考えられない。七年も前に死んだ人間の事を考えてるなんて過去にしがみついてるだけだ。ぬるい考えだ」
「・・・けんな」
「・・・良?」
「ふざけるな!」良は握りこぶしを振りかぶった。
 とっさに武蔵が止めた。
「武蔵兄ちゃん!放せ、放してくれこいつをぶん殴らなきゃ、気が静まらない!」
「殴ってお前は得するのか?!」
 その瞬間、良は握りこぶしの力を抜いた。
 良は下唇を噛むと、何処かへ走り出してしまった。
■作者からのメッセージ
よくある喧嘩です。でも良とシンジにとっては重大で仲直りがしがたい・・・ようです。
実は良とシンジの2人旅です。話、訳分からないですよね。

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