オレ×俺、僕×私。〜ドジっ娘、M〜
作者: 原田悠浩   2010年09月22日(水) 00時10分05秒公開   ID:rCPKsfrr8dY

目の前に、男の人が、いる。
私が教室を出るよりも少し先に同じ教室を口論しながら出た男の人2人。
細身の鮃(以下鮃っちと呼ぼっと。)がおの人が前を歩き、
その後ろを長身のイケメンの男の人(以下長イケってよぶ。)が
鮃っちを追うように歩いている。
どうやら行き先も同じだったらしく、
私は彼らの後を追うかたちで屋上へと向かう。
屋上の入り口へと続く階段へ私が足をかけたとき、
長イケが急に一歩下がってきた。
私は体を縮こませてしまい、足を踏み外して後ろへと盛大に転げ落ちた。
あーぁこんなことじゃまた悠ちゃんに
「ドジバカアホ間抜け。」って満面の笑みで言われちゃう…。
それにしても、

「痛い…。何で下がってくるの…。…ぁ責任転嫁しちゃった。」



…私は男の人が苦手だ。
別に触れない、近寄れない、視界に入れたくない、
一緒の空気を吸ってるのも嫌だ!
って程じゃないよ。ちょっと怖いだけ。
何で怖いの?って言われると困るけど、何か怖いんだよね。
普通に会話とかしてる分には問題ないんだけど、
過度な接触とか、2人っきりとか無理。
いや、ホント無理、うん。



「卑怯なもん使いやがって!」

グルグルと頭の中で言い訳やらなんやらをしていた私は
急に叫び声で現実へと引き戻された。

私が言われたのかと思って顔をあげると、違ったらしく、
先程と変わらず長イケの背中しか見えなかった。

刹那、風が吹き込んできた。
目の前が明るくなった。

何が起きたのか、すぐにはこれぐらいしか私には分からなかった。
数秒、いや、何十秒もたったかも。
やっと、頭が働き始めた。

風がおき、光が差し込んできた理由は、屋上への道が急に開けたからだった。
理由は簡単。
私が背中を見上げていた長イケが、
前を歩いていた鮃っちを殴り飛ばしたから…ドアごと。
って、え!?ドアごと!?
ありえない!悠ちゃん以外にもそんな原始的な人が!?
目の前の出来事が信じられず、私はまた呆然としてしまった。




「真綾!」



聞きなれた声に、思考から現実に引き戻される。

「悠ちゃん…?」

いつの間にか、大切な人の心配そうな顔が目の前にあった。
温かな両手でほほを包まれる。

「真綾、頬から血が出てるよ?誰にやられたの?」

頬から血…?疑問に思って悠ちゃんの手をどかし、
自分の手でほほに触ってみると、成程。
手に血が少しだけついた。
だけど、本当にほんの少し。それに、もう止まりかけていた。

「やったのは、あの男?」

悠ちゃんの声からはあふれんばかりの怒気が感じられる。
いや、溢れちゃってるんだけど…ね?
悠ちゃんの指が差す方向をみると、さっきまで私の前に立っていて、
鉄製のドアごと一人の人をぶっ飛ばした長イケが倒れていた。

「え…えぇえぇ!?何であの人倒れてるの!?」

「オレがぶっ飛ばしたから。」

「え、悠ちゃんまた!?って、そうじゃなくて、あの人じゃないよ!
 この傷は、さっきこけたからその時につけたもの!」

「まじで?」

「まじで。」

…多分。

「…やっちゃったぁぁぁ!!!あー、どうしよう、真綾!
 頭思いっ切りけっちまった!」

「悠ちゃん!頭は危ないからやめてよー、もう!と、とりあえず、介抱しなきゃ!」

「ごっごめん。」

「僕も手伝おっか?」

ふいに頭上から声がかけられた。

「あ、ひら…じゃなくて、さっきドアと仲良く飛んでった人だ。」

「うわぁ、ぶっちゃけた言い方。」

心のなかで鮃顔だから鮃っちと呼んでたとはいえまい…。

「…真綾、オレは先にこいつ屋上につれてっとくぞ。」

「あ、うん。膝枕かなんかして頭を心臓より高くしてあげてね!!」

悠ちゃん、なんか怒ってる?

「あ、白ちゃん、僕が運ぼうか?女子一人だとつらくない?」

「これぐらいどうってことない、なめんな。」


悠ちゃんは鮃っちを一睨みして、軽々と倒れている長イケを担ぎあげ、
屋上へと姿を消した。

「おー、本当に軽々と…お見事。うん、彼女もいいな。」

「あの、私もこれで屋上に行きますね。」

「あ、ちょっと待ってよ。聞きたい事があったんだ。」

えー、勘弁して下さいよ…。
とはいえず。

「何でしょう?」

「何で君、彼女が怒ってた時に彼を必死でかばってたの?彼のことが好きとか?」

「は?なわけないじゃないですか。初対面ですよ、長イ…っ、あの男の人は。」

「じゃあ、なんで?」

「答えるの、嫌なんですけど。」

「答えてくれないと、いやだなぁ。」

…ま、減るもんじゃないし、いっか。

「悠ちゃ、、、彼女は、私のことを守ってくれる王子様ナイトなんです。
 ただ、それだけのこと。それじゃ。」

私も鮃っちの言った「彼女もいいな。」という言葉が気になったけれど、
これ以上男の人と二人きりというのが耐えられなくて、
私は悠ちゃんの後を追うようにして、逃げた。



本当は少しちがう。
悠ちゃんは、私の王子さまなんかじゃない。
ただ、私のことを傷つける人が許せない。
そんな人がいれば、その人をあり得ないほどにめちゃくちゃにする。

自分が昔、私のことを守れなかったから、
その分守ろうとする。
それは異様なほどに。
私のことしか頭の中にないとでもいうかのように。
私が、彼女の世界の中心だとでもいうかのように。


私は、そんなにいい子じゃないのに。


■作者からのメッセージ
またもや、痛恨のミスww
俺→オレ→私
になってしまったww
ま、気にしないで行きましょうっ!

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