友のために麗羽は生きる(Z)
作者: 美月   2010年01月10日(日) 00時47分49秒公開   ID:Ee3yYWMigJ6



「麗羽(れいう)が!?」



鈴風(りんか)はたった今聞いた事実に驚愕する


「はい。私も友達から聞きました・・・。」




李乃は鈴風の驚きように自分も驚きつつも事実を伝える



「あ、悪魔と契約したの何の・・・。ひどい罰を受けるそうです。」

李乃はうつむきながら小声で言う




「それはいつ!?」


鈴風の声が裏返った






「・・・・今日の夜。」







「!!!」









とたんに麗羽との記憶が蘇る





―やっぱり鈴風は今の髪型が似合うよ?―



―必ず、第6回生までなろうね!―



―卵の殻が入ってるよ!―









―ずっと一緒にいようね!―












(失っちゃいけない・・・・!)



鈴風は走り出す




「鈴風ちゃん!?」


李乃が驚愕の表情で鈴風の名前を呼ぶ




鈴風は走る


失うべきではない者を護るために・・・




(色んな意味で失っちゃダメだ!麗羽という存在を・・・・・!)


麗羽は成績優秀である


これから先、社会や国のために役立てるような知識を持っている



いわゆる世の中に必要な存在である




(自分と違って・・・・・。)














鈴風は走り続けた


































「おばさん・・・・・・・。」



麗羽は目隠しをされ、数人のやつれた男達に連れて行かれながら呟く



そして・・・・

「ここがお前の死に場所だ。」



さっきまで縛られていた手が自由になる


「見てみろ。」


麗羽はおそるおそる目隠しを取る




「・・・・・!」



そこは崖だった


逆らった者が決まって罰を受ける場所・・・




麗羽に言い知れぬ恐怖が沸いた




「・・・・・・・・。」


麗羽はその恐怖に無言で堪え続けた




























「あのっ!!!」


鈴風は町行く人に聞く



「いつも誰かが裁かれる崖・・・どこですか!?」



「えーっと・・・・ここより北だよ。」


「ありがとうございますっ!!」



鈴風は短いお礼を済ませるとまた走り出した


北へ・・・・北へ・・・・・・・




「麗羽っ・・・・!麗羽っ・・・・!麗羽ぅっ・・・・・・・・・!!」



























「・・・・・。」



麗羽の赤い目が見開かれる




自分の目の前にあの悪魔がいたのだ



麗羽は小声で言う



「・・・早く私の魂を取って。」



―・・・・・。―



「人に魂を取られたら、願いが叶わないんでしょう?」



麗羽は恐怖を押しつぶすような険しい顔で問う




―・・・今命を絶てば、あの娘に会えなくなるぞ?―



「え?」



麗羽の目がかすかに元の光を取り戻す




「どういうこと?」



―ああいうことだ。―



悪魔はある方向を指差す



とたんに日が沈む



辺りが暗くなり始めた




しかし麗羽にははっきり自分の元に向かってくる少女が見えた



「鈴風・・・?」






「麗羽ぅうっ・・・・・!!!」



鈴風は叫ぶ



その声がやつれた男達の耳に入った




「おい、何だ?あの娘は・・・・。」


「多分この契約者の友達でしょう。処刑の邪魔をしに来たのでしょうか?」


「・・・ならば殺さねばならぬではないか。刑の執行を邪魔するなど、とんでもないことだぞ?」




すると何人かの男達が鈴風の元へ剣を持ち走ってきた



「・・・!」


鈴風はその辺にあった太い木の棒を手に取った



「麗羽!今助けるからね!!」














「・・・・・・鈴風。」




麗羽の心に「生きたい」という感情が生まれた




しかし麗羽はその感情を押さえつける



世の中にとっては罪人である者が生きてて良いと思う者は少ない


そして罪のない者・・・つまり鈴風に迷惑がかかるのではないかと麗羽は考えた




しかし・・・・


(生きたい・・・・!)









「はあっ・・・・!はあっ・・・・!」



鈴風はその持ち前の運動神経で男達を撃退していた



鈴風は残りの男達も殴り付け麗羽の元へ走る




「鈴風・・・!」



「麗羽・・・!」




二人は抱擁した



麗羽の頬に涙が流れる


「・・・・なんで?」


「ん?」



「なんで助けに来たの?」




麗羽は鈴風の顔を見る




「・・・麗羽、まさか死んでいいなんて思ってないよね!?」


鈴風は麗羽の肩を揺さぶる



すると麗羽が胸の中に入ってきた



「死んでいいなんて思ってない!!」



「・・・・!」






「生きたいっ・・・!鈴風と一緒に生きたいよ!でもそのためには逃げないといけない・・・・・!」




「・・・・麗羽。」





鈴風は涙で濡れた服をなでた



「・・・二人でなら大丈夫だよ。それに・・・麗羽は・・・・・。」


(失っちゃいけない人間だから・・・。)










「二人に刑を執行する!!!」



他の男達がこちらに武器を持って走ってきた



「・・・・!」


鈴風は木の棒を持って構える




それを座り込んでしまった麗羽は下から鈴風の顔を見た




(・・・このままだと鈴風は生きてたとしても「逃げる」しか選択権がなくなってしまう・・・!)



麗羽は辺りを見回す


するとそこには悪魔がいた




「お願い悪魔っ!鈴風をっ・・・!」








―逃げることのない世界へ・・・・!!!!―
















「麗羽っ!?」




麗羽は鈴風に向かって手を伸ばす



そして・・・・・






グイッ!





「うっ・・・・!きゃああああああああああああ!!!!」




鈴風は無理やり崖へ落とされた




「悪魔ぁあ!!」



麗羽は叫ぶ



すると鈴風を黒い光が包み始める







段々見えなくなっていく麗羽の姿・・・



「麗羽ぅううううううう!!!!」







腕を伸ばしても届かない自分の手



なぜこんなに短いのか自分で自分を憎んだ















「鈴風の方が・・・よっぽど必要な人間だよ・・・・・・。」














―麗羽っっっ!!!!!―




鈴風は声にならない声で呼び続けた



しかし自分の体を包み込む黒い光からは逃れられない







鈴風はただむなしく手を伸ばしていた








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