これCry Adventure 瑠姫の小さな小さな大冒険 mission1
作者: なぁび  [Home]   2009年10月02日(金) 03時04分35秒公開   ID:sw0xlSukK4E
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    〜女子side.〜






 「普通の授業のがいいのに。仕事ならよかった…」


 準備を進めるなぎさに、瑠姫るきがぼそり呟く。


 「まあまあ。授業なんだし、しっかり受けよう?」

 「これを授業とは言えませんー」


 理科室の机に突っ伏し、うだうだと声を上げる。

 逆にやる気満々なのは、梗樺きょうか。なぜなら机に固定されて黒板と、先生とにらめっこせずに過ごすことが出来るからだ。


 「あたしやるやる〜! こういう授業なら何時間でもいいや」


 片手にざらめ、片手におたまを持ってうきうき笑顔で珍しく教科書とにらめっこをしていた。

 ちなみに梗樺の作る煮物は美味しいらしいが、お菓子の腕前は。


 「毎日こんな授業ばっかりだったら学校じゃないじゃん」

 「そうなんだけどね〜」


 にこにこと突っ込む渚だが瑠姫は背筋に何か嫌なものが走った。

 瞬時にその場から去ろうと試みたが、渚に「あ、ついでに雑巾持って来てくれる?」と笑顔で頼まれまた戻って来るはめになった。


 「…ホントに冗談抜きで殺されそうだ」

 
 しかも瑠姫が雑巾を持って戻ってきたかと思えばもう作り終えている始末。

 出来あがったカルメラは――見た目的には大丈夫そうだ、が。


 「…これって重層入れるから膨らむもんだよね?」

 「ちゃんと入れたんだけど、ありゃ?」


 なぜかぺたんこだった。従順な作り方で作れば、重層を入れるからそれによって炭酸ガスが発生して膨らむはずだ。


 「でもとりあえず、色的には・・・・大丈夫、だよな。ってわけで感想を言ってくれ!」

 「え、自分で食べるんじゃな…ふぐ」


 あろうことか普通なら自分で食べるだろうが梗樺は目の前にいた瑠姫の口にそれを無理矢理突っ込んだのだった。

 いろんな意味で瑠姫の顔が青ざめる。


 「おー! 膨らんだ膨らんだ!」


 隣の班から声が聞こえた。


 「え、うそ。なんかあたし作ったの膨らまなかったんだけど」

 「すごいね〜。見せて見せて!」


 その声に渚と梗樺が反応した。


 「うわ〜きれいに膨らんでるね! おいしそう…ね、瑠姫も見て…って、あれ?」

 「どした? 渚」


 次の瞬間、瑠姫がいなくなっていた――のは、気のせいか。


 「何か取りに行ったのかな」

 「そうじゃない、の…っ!」


 梗樺はなぜか勢いよくその辺にあった紙屑を開け放たれた窓から外に投げた。


 「男子のとこまで飛んだら面白い」

 「いやーそれだったら梗樺は野球選手になってたと思うよ〜」


 この、いつもは「可愛い」で済まされる渚の天然な性格を、きっと瑠姫は恨んだだろう。



 しかしそれ以上に梗樺のことは、もっと恨んだに違いない。











⇒To Be Continued...

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