君がいなくなって初めて過ごす、今は夏 拝啓、松田 真由様
作者: なぁび   2009年09月18日(金) 04時51分43秒公開   ID:sw0xlSukK4E
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 「行こっか、おにーちゃん」

 「おいおい、まだ家の中なんだから名前で呼んでもいいだろ」



 あれから時は過ぎて今はもう夏休み。もちろんのこと、学校はなくて(浜崎はたまに夏期講習はあるけど)今日は久しぶりに二人でお出かけ。

 家にいる時は名前で呼んでるけど、外では私たちは兄妹。
 
 学校でも、お兄ちゃん、って呼んでる。



 本当の兄妹じゃないけどね。


 「うーん、やっぱり夏だね。あっつーい…」


 夏特有のまとわりつくような空気を感じながら、私たちはショッピングへ。




 今日は何見よう? 特にこれといって買うものとかは決めてこなかったけど。


 なんか不意に、浜崎が「買い物でも行く?」って言って来たから。


 宿題もやる気起きないし、私は言われてすぐ行く気満々で準備をした。





 太陽は暑い。風は吹いても生ぬるい。汗は容赦なく吹き出てくるような気がする。



 でも、たまのお出かけはいいな。









 「あ」


 「…どうした?」



 偶然見かけた可愛い雑貨屋さん。


 浜崎には悪いけど、ちょっと中を覗くことに。





 店の外見に負けないような可愛いものが、いっぱいだった。


 キーホルダー、マグカップ、ぬいぐるみ、ミニテーブル…。


 私だって女の子だし、可愛いものは好き。






 何か記念に買って行こうかな、と辺りを見回すと。





 ――…あ。




 目に入ったのは色違いのペアのシャープペンシル。



 上の方に兎がついてて、これがまた可愛い。





 ――そういえば、真由と一緒に…。







 もし、また会うことが出来るなら。一緒にいてもいいというのなら。











 そしたら、一緒に、真由と一緒にいろんなところに行きたい。





 





 はっと気が付き、店内の時計を見るともう入ってから20分が過ぎようとしていた。






 …大変。浜崎、外で待たせてるじゃん!






 再び外に出ると空調のきいたところから出たせいで前よりなお暑く感じる。


 浜崎は、と周りを見渡すと店の前から少し移動した木陰で佇んでいた。




 「おー来たか。じゃあ行くぞ」




 私の姿を発見するとすぐに歩きだす浜崎。私は慌てて後を追う。





 「お兄ちゃん、待って。早いよー…」







 走りだした矢先だった。





 「数学宿題多いよねー」


 「計算問題ばっかりって、きついよ…」





 見慣れた栗色の、高いところで二つ結びにした、気の強そうな子とすれ違った。







 ――今の、って…?






 「何やってるんだよ。早く行くぞ」




 「あ、うん! 待って…」








 よかった。私が見た限りだけど、元気みたいだね――真由





 さっき隣で一緒に話してた子は新しい友達?




 私のこと気がついた?






 …そりゃあ私も浜崎も姿は変えてるけど。







 その様子だと、真由も、姫野っちも天堂っちも元気みたいね。



 よかった。安心したよ。












 拝啓、松田 真由様。




 今、どこで何をしていますか?

 私はちゃんと“今”を生きてます。



 君がいなくなって初めて過ごす、そう、今は――暑い夏です。













⇒To Be Continued...

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