君がいなくなって初めて過ごす、今は夏 拝啓、椎名 天音様 | |
作者: なぁび 2009年09月13日(日) 02時00分41秒公開 ID:sw0xlSukK4E | |
「真由ちゃん、宿題終わった? 終わってないなら図書館で一緒にやらない?」 そうそう、新しいメンバーが増えたんだ。 この子は 天音と過ごした時間もあっという間だったけど、奏と過ごす時間も早く過ぎてるような気がする。 「数学宿題多いよねー」 「計算問題ばっかりって、きついよ…」 人混みの中を、奏と二人で歩く。 天音もいたらいいのに。奏には天音のこと言ってない。言ったら、気を悪くしそうで。 人混みの中を歩いてると、時間が早く進んでるような気がする。 人がせかせか歩くから。何を目指して、そんなに急いでるのかな? 「休み明けテストでしょ? 50点以下補習だって。私無理だよ〜」 「え、テスト? 何それ、私聞いてな…」 一瞬、本気で声掛けようと思った。 「…真由ちゃん?」 全然、似てないのに。 天音は金髪で巻き毛だった。でも今の子は、亜麻色の髪を、ツインテールにしてた…。 一つも合ってない。なのに、どうして。 「お兄ちゃん、待って。早いよー」 「……?」 「真由ちゃん、どっかした? 何か落としたの?」 「え…あ、ううん! なんでも…なんでも、ない、けど…?」 天音だと、思ったんだろう…? 「そ? じゃあ行こう? 暑いし」 「う、うん! そうだね。図書館は涼しいだろうし」 拝啓、椎名 天音様。 今、どこで何をしていますか? 私はちゃんと“今”を生きてます。 君がいなくなって初めて過ごす、そう、今は――暑い夏です。 |
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