アナザーワールド 1スレッド目
作者: Leaves   2009年07月28日(火) 22時14分44秒公開   ID:tIm2P9orRJI
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「おぅ、着いた」
視界があけるとそこは目的地であった平原だ。
目の前に広がる草花はここがゲーム内の仮想空間だということを忘れさせるような現実的な美しさを持っていた。
――ノイニ平原
多くのプレイヤーが最初に訪れる伝統的な場所だ。
「ナギが来るまでここで待つ。貴方が迷うから」
澪はそう言ってその場に佇んだ。
「『おぅ、着いた』じゃ、ないわよッ!!」
その後すぐナギがその場に現れる。
どうやらテレポートで来たらしい。
いきなり置いていかれたことにかなりご立腹だ。
「……文句はこっち」
トゥエルはそう言って澪を指差す。
「方向音痴のほうが悪い」
澪は澪で特に悪びれる様子は無いようだ。
「どっちでもいいわよっ!! とにかく2人とも私を置いていったことには変わりないんだから! 回復してあげないわよ!?」
怒りに任せてナギは叫んだ。
「じゃあ何するの?」
その言葉にトゥエルが首をかしげる。
回復援助をしない光魔道師が一体何をするというのだろうか。
……実は殴り光魔道師だとか言うのか。
「決まってるじゃない……まずはお説教!!」
そんなことを考えたりしたのだが、結局なんだかズレた答えが返ってきた。
「ふーん。でも後ろには気をつけたほうがいいよ?」
「ほら、来てる。」
アナザーワールドに出てくるモンスターは基本的にオートでプレイヤーを襲う仕組みになっている。
そのため一度ダンジョンに入れば、襲い掛かるモンスターを倒し続けるか存在を認知されないように動くかする必要がある。
説教などしている暇はない。
「大丈夫よ! 時間稼いで逃げるくらいは出来るから!!」
逃げながら説教するのだろうか。
「ていうか私は回復なんだからそこら辺はあなたたちに頼むわね」
他力本願なことを言いながらナギは澪の背中に隠れた。
「貫け氷! アイススピア!」
その間にトゥエルは呪文を唱える。
水系に属する初級魔法だ。
氷の槍がスライムの体に突き刺さった。
光球となってモンスターは消えた。
「動きにくいから離れて」
うっとしそうに澪は鞭で敵を打っていく。
動きにくいと言いながらもその特に見劣りするような動きではなかったが。
「……じゃあ飛んでようかな。モンスター怖いし」
澪にそう言われたので仕方なくナギは空中に浮遊した。
「少しくらい攻撃呪文覚えなさい」
澪はパチンと指を鳴らし、闇魔法を発動させた。
アナザーの魔法の発動方法は人によってさまざまな方法がある。
トゥエルのように呪文を唱えるタイプもあれば、澪のように動作が発動条件のプレイヤーもいる。
サービス開始当初は全て一律だったが、初代帝によって仕様変更となったのだ。
こんなところにも帝の権限の高さが見える。
「弱くても攻撃呪文は覚えたほうがいい。それか状態異常は必要」
落ちたアイテムを拾いながら澪はナギにそう言った。
「状態異常……攻撃呪文だなんて、1個も知らない」
あっけからんとナギは言い放った
「今からでも遅くない。憶えなさい」
「覚えるの? 澪ちゃん……お姉ちゃんみたい。覚える気はないけど」
空中で回転しながら、そう返事する。
澪の助言を実行する気はさらさらないらしい。
「今まで……ソロ狩りしたことなかったの?」
「私達がいない時はどうするの?」
二人が同時にナギに問うた。
オンラインゲームではいつも誰かとパーティを組めるとは限らないのだ。
「うん! だって男子どもに付き合って……とかだったし? 天使は戦いを好まないからね、基本的」
そこまで言って一瞬固まる。
「え? トゥエル達がいない時? ……どうしよう……。じゃあ、簡単なのを2,3個……」
「パーティ登録してないし、フレンド登録もしてないからいつも一緒とはかぎらない。レベル上げくらいなら手伝う」
「今まで回復で来たから……本当に分かんないのよねぇ」
軽い調子でナギは答えた。
「光魔道は回復だけじゃ……ない。よくそれでCいけたね」
あきれた風にトゥエルは言う。
「だからうちは伝統にうるさいのよ。だから戦いだけはするなって耳が腐るほど言われてたわぁ」
「……じゃ、……防除魔法は使えるの?」
それなら攻撃ではないだろう。
「……それなりには」
「今のはなんの間?」
トゥエルが問い詰めようとしたその時。
「……トゥエル、あぶな……」
「ふぁ?……ふぐっ」
「おっと・・・大丈夫か?」
トゥエルは一人の青年とぶつかった。
「……だから言ったのに。もう」
言うのが遅すぎである。
「あ、う……すいません」
トゥエルは素直にその青年に謝った。
「あぁ、大丈夫そうだな。注意してあるけよ」
青年は特に気にした感じもなくそう言った。
「何? こいつ……?」
ナギは上空から興味深げに彼らを見下ろしていた。
「……ん。注意する」
青年の言葉に同意しながら、トゥエルは青年をじっと見つめていた。
「なんかエラそーな奴……」
ナギはボソっとそんなことを言ったが青年に気にした様子はない。
「さてと、ここはもう良いか。んじゃ俺本部に帰るから、お前ら気をつけてな」
そう言って青年はその場を去ろうとした。

ガシッ

しかし、トゥエルに腕をつかまれたためそれはかなわなかった。
「待って。今前衛が足りない」
トゥエルは青年に言い放つ
「はぃ?」
「トゥエル、あんたもしかして一緒に行くつもり?」
「来て貰うつもり。……魔道師二人と暗器使いじゃバランスが悪い」
戸惑う二人もお構いなしだ。
「つまり、俺にパーティになれと」
「……前衛がいないとバランスが悪い。あんたは双剣士だろ?」
「あぁ、そうだけど。あまり役に立たないと思うがな」
「大丈夫。こっちはZ」
「初心か。まぁ俺もちょうど仲間を作ろうかと考えていたところだ。俺でいいのならばよろしくシルビアだ」
「ん。よろしくシルビア」
シルビアと名乗った青年にトゥエルはそう言葉を返す。
「私はナギ。回復役。よろしくね」
空からナギは自分の名前を告げた。
「……降りてこないの?」
「あ、降りた方いい?」
自己紹介するときぐらい降りてくるのは礼儀なのではないだろうか。
「上にいるお嬢さんがナギで、君は?」
もっともシルビアは気にしていないようだ。
「あ。えっとトゥエル。魔道師。氷」
「まぁ、こんな感じで一応よろしくね」
「澪。C。よろしく」
先ほどまでずっとモンスターを狩っていた澪が会話に加わる。
「澪か、よろしく」

全員の紹介が終わったところで、彼らはクエストを再開しだした。



⇒To Be Continued...

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