ポケモン不思議のダンジョン 二色の探検隊 〜 き ず な 〜 | |
作者: なぁびandコマツ 2009年07月25日(土) 21時17分33秒公開 ID:te6yfYFg2XA | |
――――時限の塔。 「ヒノアラシ。お前が、ここを離れる時…虹の石船でここから別れを告げる時…お前の悲しみが、ここまで強く伝わってきた。お前が今も願うなら…ポッチャマも同じく願うなら…私もそれを受け入れよう。お前たちはこの世界に必要な存在だ。だからこそ…託すのだ! お前たちに…これからの未来を!これは私からの礼だッ!受け取るがいいッ!! グオオオオォォォォォ…ッ!!」 泣きじゃくるヒノアラシと、それをなだめるビッパの、隣。 丸い頭にペンギンボディ。それに、黄色の短足。 彼女は、傍にいる2匹に震える声で呼び掛けた。 「…ヒノアラシ?」 その声は、ちゃんと2匹にも届いたようで。 「…ポッチャマ?」 ヒノアラシは恐る恐る声のする方を向いた。すると、たしかにポッチャマが、あのポッチャマが、そこに立っていた。 それでもまだ信じられないヒノアラシは、こんなことを言った。 「あ、れ? どうしよう、ビッパ。とうとう幻覚が見えるようになっちゃった」 「えっ?! い、いやあっしにも見える気がするんでゲスが…」 信じられないのも分かる。だって今ヒノアラシがこの世でいちばん会いたい人(ポケモン)だから。 恋しくって、恋しくって。でも会えなくて。 これが、本当だったら。 ――――嬉しすぎて、たまらない…っ!! 「ポッチャマ!!」 ヒノアラシは叫んだ。そして抱きつこうとしたがポッチャマが先に抱きついた。 「ヒノアラシ!」 今度は涙も含んで。人(ポケモン)は、悲しくても、そして嬉しくとも涙が流れるものだ。 お互いがいることが、嬉しい。とにかく嬉しい。それ以外の言葉でどう表現できる? (でも…) そんな中、ポッチャマの心に引っかかることがひとつ。思いきって聞いてみることにした。 「…あの、ヒノアラシも、とうとう天国?楽園?…に来ちゃったの?」 どうやら、彼女は天然らしい。すると、ヒノアラシも (…その考えがあったか!!) と納得してしまう始末。 (そうか! 僕はとうとう死んじゃったのか! それならこの状況も説明できるしね! うん、納得! ギルドのみんなに恩返しとか少し未練はあったけどまぁ、ポッチャマに会えたならそれはそれで…) 「じゃないでゲスよ!?」 心の中でやたら納得するヒノアラシ。やっとビッパが突っ込んでくれた。 「あれ、ビッパ、君も死んじゃったの?まだ若いのに…」 「え、年はそれほど変わりな――じゃなくて! まだみんな死んでないでゲスよ!」 そこで冷静になる2匹。 ((そう言われれば、僕(私)、まだ死んでなかったな…。それに感触も確かだし…)) 先ほどまでの会話を思い出すと、なんだか笑いが込み上げてくる。 「「「あはははははははっ!!」」」 3匹はひとしきり笑った。 (あ、そういえば…) ヒノアラシはふっと言い忘れていた言葉を思い出した。 「…おかえり! ポッチャマ!!」 「ただいま、ヒノアラシ!……あ」 あ、とポッチャマも言い忘れていた言葉を思い出す。 「どうしたの、ポッチャマ」 「…ね、ヒノアラシ。…だぁい好き♪」 それからポッチャマは嬉しいのかなんなのかバブル光線を発射し始めた。 それはいくつかヒノアラシにダメージを与えたけれど。 「だぁい好き♪」 この言葉を聞いて、ダメージなんて受けられるはずがない。今は不死身の気分だ。 そう、ポッチャマがいるだけで。 そしてあたりも暗くなってきたところで。 「ギルドに帰ろう? ヒノアラシ。私、おなかすいた〜」 無邪気にポッチャマは言うとヒノアラシの手を握った。 「うん。帰ろう。ギルドに」 ヒノアラシも力強くポッチャマの手を握り返した。 ――――もう、二度と離してしまわないように。 そんな2匹の頭上に、一番星が明るく輝いていた。 |
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