少女Aの災難
作者: 神田 凪   2009年07月17日(金) 20時11分46秒公開   ID:Fpk3UqE6X6I
【PAGE 2/2】 [1] [2]









名前は先ほど書いたように、新木千歳あらきちとせ。白尾高等学校二年生である。

容姿は整っている方だけれども、目立つ感じではない。髪は黒だけど、ガリ勉タイプではない。だからといって派手なタイプでもない。


ま、『普通』だ。


部活は帰宅部。趣味は読書と映画鑑賞。好きな教科は国語と古典。嫌いなのは数学と理科。勉強はそこそこ、運動もそこそこ。友達もそれなりにいます。


どう見ても、主人公タイプの人間ではない。


実は・・・なんて秘密もないし、イケメンに助けられた記憶もなし。これからもそんな予定はない。

それなのに、我が白尾高等学校は漫画〜(以下略)の舞台になりそうな感じの所だ。無駄に綺麗で広くて、設備ばっちし。

だからだろうか、生徒も漫画〜(以下略)に出てきそうな人達ばっかだ。

まずここから間違えた。入学する学校を間違えた。
くそっ、あいつのせいだ・・・。



まぁ、それはおいといて。

とにかくそんな環境のなかで私は『普通』の生活を送ってきた。


そんな私がなぜこの、いかにも何かおきそうな体育館裏にきたのかと言うと・・・。
理由は簡単、持っていたプリントが風でここまで飛ばされたからだ。

ああ、ほっとけばよかった。いやいや、これは大事な課題プリントだし。無くしたら教科担当の先生に怒られてしまう。それは嫌だ。


「榊君とあんたが友達なはずないでしょ!」
「いい加減なこと言わないでよ」

「そんな、私は・・・」


目の前には一人の少女を四人の女生徒が囲んでいる。
少女は、前ページで述べた少女漫画のヒロインである一ノ宮未来いちのみやみく

人形みたいな容姿が特徴。勉強も運動もできる。友達もいっぱい。
・・・べ、別に羨ましくはないもん。

で、榊君というのはスポーツ漫画のイケメン。榊翔哉さかきしょうや
こちらも運動も勉強もできる。性格もよく、学年通り越して学校の人気者。


二人とも同じクラスだが、ほとんど会話をしたことがない。
というかしたくない。



となんとか考えている間に、なんだか不穏な感じになっていた。

このままだと一ノ宮さんは暴力をふるわれてしまう感じだ。
うーん、まだねちっこいイジメじゃないだけましなのかな。




関係ないな、イジメも暴力も痛いものは痛い。


でもだからといって、出ていって四人組を止めることは出来ない。
ほら、か弱い女の子だから。

それに、あの四人組は卑怯だけれども悪い子じゃない。
ただ、榊君が好きなだけだ。だから悔しいのだろう。

さて、どうするべきか。

・・・・・・・・・『普通』に解決するか。





「うわわっ」

バサリと持っていた鞄から取り出した教科書数冊を落とす。
作戦名【たまたまここに来た生徒に見つかりました】だ。

こういう人目につかないところでやっているということは、人に見つかることを恐れているのだ。

「あれ? 何してるの?」

ああ、私役者になれるかも。
まさに今来ました、的な顔をしている私を疑う人はいない。

「な、何も・・・ただ、ちょっと話を」
「そう、そうよ。うん、もう終わったから。じゃ、じゃあね一ノ宮さん」

思った通り焦ったようにその場から逃げていく。
あっという間にその場に残ったのは私と一ノ宮さんの二人だけになった。


さて、問題は解決したし、このまま何も知らない生徒として帰ろう。


・・・・・・・・・・・・・・・と思ったのに。





「え、っと・・・一ノ宮さん?」

がっしりと掴まれた右手のせいで動けない。
その原因である一ノ宮さんの顔がなんだかきらきらしている。

え、何だろう。何か嫌な予感が・・・。


「新木さんだよねっ。同じクラスの!!」


なぜか興奮しきってそう言う一ノ宮さんに圧倒されて、こくこくと首を縦に振る。
あれ? 名前知ってるの? と思う暇なんてない。




「私と友達になって!!」




お断りします!!!!!!





とこの時そう答えていたら、よかったのだ。
答えてさえいれば『普通』の生活は続いていけたのだ。


だけど、私は何を言われたのか理解が出来なくて・・・反射的に頷いてしまったのだった。











→nextstory
■作者からのメッセージ
少女Aシリーズなんとか書き終わりました。ネタだけは随分前に出来ていたのですが、なかなか書けなくて少年Aから少女Aに変えました。
これから千歳が主人公タイプの方達に、振り回され巻き込まれていきます。

ここに投稿して3年目になりました。いやー、時が経つのは早いですね。
明日から夏休みなので、たくさん投稿できたらと思います。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。

■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集