BLADE OF SWORD 第二十夜
作者: 清嵐青梨   2009年05月30日(土) 23時48分43秒公開   ID:L6pfEASBmTs
それで…とメディアが手にしている物――ライダーの令呪が刻まれた偽臣の書――の表紙を一瞥した後視線を変えて石段に腰掛けているアサシンを見るなり、貴方はライダーの仮マスターになると言うの?と彼に問いかける。

彼は腕を組んで遥か彼方の向こうを見ていたのだが、やがて視線を逸らしメディアの顔を見ると、真逆…ユウにライダーの仮マスターをやらせろと言いたいのかと逆に聞き返した。その言葉に彼女は詰まらせ、ちらりと俺を見た後柱に寄りかかっているライダーを見る。




此処はメディア自身が代々伝わる神代の魔術に拠って作られた“神殿”である。好き勝手にやりたい放題した彼女なのだが、若しものことがあったら避難場所に相応しい場所としても過言ではない。
俺はその神殿の石段に座っている、然しアサシンが座っている場所とは違いドーム状になっている神殿の石段に座っているのだ。

何故俺たちがライダーと共に此処にいるのか…無論、ライダーの仮マスターのことである。アサシンがライダーの仮マスターと宣言したのち、メディアにそのことを話した途端彼女は血相を変え場所を神殿へと移し、上記の光景となる。
彼女が言葉を詰まらせるのも無理もない。一気に三人のサーヴァントを使役するには相当の魔力を与えなければいけないし、俺が使役するサーヴァントの人数は実力と想定すると精々二人しか使役することしか出来ない。


つまり一気に三人も使役するには荷が重たすぎるのだ、だから俺の身体に負担が掛からぬようアサシンが仮マスターとしてライダーを使役することを選んだのだ。その選択肢には問題はない筈だが、一つだけ欠点が残っているのだ。




奪った偽臣の書は仮にも間桐の家の物であって俺の物ではない、万が一のことがあったら場所が割れていつか奇襲に遭う恐れがある。
だからメディアの宝具でライダーの令呪を無効化にし、彼女かアサシンのいずれかのマスターになるしか術がない。俺は数分も間そう言っているのだがライダーはそれを何故か拒んだ。

元々令呪は桜のもの…令呪を無効化にしたら桜はライダーを使役出来なくなる。彼女は自分のマスターである桜に不安をかけたくはないのだ。無効化したら真っ先に不安に駆られるのは桜の方だ、絶対にライダーの身に危険が遭ったに違いないと思ってしまう。


だからメディアの宝具で令呪を無効化にしないで欲しい…ライダーはそう言うのだがそうはいかない。俺はようやく石段から腰を上げ立ち上がると柱に寄りかかっている彼女を見た。




「ライダー…そりゃ桜を不安にさせない為に令呪を無効化にしたくはないことは分かるが、若しこのまま放っておいたらマキリの一族にバレてしまうぞ。それでも良いのか?」

「仮令居場所が割れてしまっても…只桜を助けることであればそれでも良い。それに、桜は私にとって唯一のマスターです。マスターを放っておくという行為はサーヴァントにとっては失格のようなものです」
「それはそうだけど………だけど、」

「ライダー…貴女が自身のマスターを手放したくはない気持ちは分かります」




と、今まで言葉を詰まらせていたメディアが重たい口を開く。彼女の言葉にライダーは反応してアイマスクをしたまま彼女を見る。
メディアは今まで被っていたままのフードを取り素顔をさらすと彼女に近寄り、そっとライダーの細い手を握り締める。




「だけど今は自身のマスターの運命を救う為にも貴女はあの決断をした…あの決断は間違いだと思う?」
「……いいえ、あの決断は決して間違いなんかじゃありません。あの決断は私のマスターを救う為に下したものです」
「なら、何故貴女は令呪を手放すことを拒むの?それは確かに貴女のマスターの不安をさせるのだけども、それも貴女のマスターの運命を回避出来るための一つなのよ。だから、」

「ライダー…キャスターの言うとおりだ、令呪を手放せば若しかすると桜の運命の回避に繋がる好機かもしれない。それでも信じないというのなら力ずくでも俺はキャスターの宝具を借りてお前の令呪を無効化する」




嗚呼…矢張りこれも“賭け”の一つなのだろう…。俺が言った言葉を思い返しようやくこの“賭け”が今まで掛けてきたものよりも重たく感じるものだと今改めて実感した。

メディアと俺の言葉を聞いたライダーは一瞬だけ逡巡したかと思いきやちらりと彼女が持っている偽臣の書を見て、その書は無効化出来ても未だ実体は保てますが刻まれた令呪は発動出来るとは限りません、と言った。


その言葉にメディアは反応した、ライダーがマスターである桜の運命を回避することが出来るのならそれに賭けてみようと令呪を手放す決心をしたに違いない。彼女はそうと見て黙って彼女は宝具を出しライダーの胸に宝具の刃を刺す。
最早ライダーの行動には躊躇いの色が見当たらない、それは決心した証拠だと見た俺は偽臣の書に描かれたライダーの令呪がほんの一瞬だけ赤い光を放った瞬間、次第にその光は薄れていった。

無効化されていった令呪は恐らくメディアの手に渡ったのだろう、彼女の右手の甲にはライダーの令呪が刻まれていた。彼女はちらりと令呪を確認した後只の本ではなくなった書をアサシンに手渡し、これでも貴方は仮マスターになるというの?と聞いた。




が、彼はなんの躊躇いもなくその書を手にすると、仮マスターという肩書きだけでも充分通ると言ってスゥ…と霊体化していった。彼の言うとおり仮マスターという肩書きだけでもなんとか通るのだが、それはいつまで持つのかが時間の問題である。
そんな状況の中、果たして無事にバレることなく切り抜けることが出来るのだろうか。考えるだけでも段々不安に駆られてくるが、今は不安に足を掬われてはいけない。

俺はふるふると首を左右に振ると、ライダーを如何するんだ?とメディアに聞くと彼女には午前の門番として宛がうことにします、それで良い?ライダーと言ってメディアは彼女に賛成の言葉を促すが、その前に彼女はその言葉を言う前に、私のことは構わず真名で呼んでも構いませんと言って彼女もまたマスターの命もなしで勝手に霊体化していった。


真名で呼んでも構わない、と言ってもライダーの真名は爽然さっぱり分からない。そんな俺を見兼ねたのか、メディアがライダーのアイマスクを見ても真名が何なのか分からないのですかと聞いた。




「…御免、全然分からん。分かったなら教えて呉れ」

「ヒントなら差し上げますよ、ヒントは私と同じギリシャ神話の中でも最も有名な人物ですよ」
「ギリシャ神話の中で有名な人物……えっと、あれか?その目を見た瞬間石になってしまう魔眼を持っている人物か?」
「そうですよ、却説…その名前は?」

「……メ……メ……メデューサか!!」
「はい、正解です。神話に詳しくはない優香さんにとっては頑張ったと言って良いでしょう」
「成る程…ライダーの真名はメデューサかぁ。…道理でアイマスクを外そうともしないんだな」




ライダーの真名にようやく関心を持った俺にそれで、優香さんも今後は如何なさるつもりで?と聞いてきた。
そういえば未だ今後の行動については彼女に話していなかったことを思い出し、きっぱりと断られるが覚悟で俺は彼女に今後の行動について打ち明ける。




「…一寸無謀すぎるかもしれないけど、バーサーカーのマスターに会ってみるよ。それで若し危険を感じたなら令呪でアサシンを呼ぶ。…駄目、かな?」

「私は…アサシンと優香さんのことには口出しは致しませんが、これだけは言っておきます。…決して無理をなさらずに」




メディアが言っている言葉はきっと身の危険を感じるから生きて戻ってこれるかどうか心配しているもののきっと俺に傷一つなく無事に帰ってこれるよう言っているに違いない…そう解釈した俺は、分かった…絶対に無理はしないようにするよと言って彼女の横を通り階段を下り今は警備がいない神殿を後にした。
■作者からのメッセージ
※ステータス[ライダーが なかまに なりました。]
 ようやく第二十夜に達しました。今度は三十話を目指してみようかな。

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