交差する彼らの居場所  第六章『行動』
作者: 悠蓮   2009年05月24日(日) 00時37分15秒公開   ID:XnxKweJ8Y8w
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「サモン……フェアリー?」
 それはどちらが言った言葉だろうか。しかし間違いなく、四枚羽の少女がエイダの攻撃を受け止めていた。
 彼女の目の前には巨大な盾がある。
「! ……私の呪縛を解くなんて」
 思いもよらぬ出来事にエイダは一度体勢を立て直す。
 予期せぬ事態に彼女は混乱していた。
 もっともそれはエイダに限ったことではない。
「……えと、……なんで?」
 彰人はエイダ以上に状況が飲み込めずにいた。

 ……タスケニキテクレタ

「え?」
 突然の声に彰人は目を丸くする。

 ……アナタハワタシヲタスケニキタ……ダカラワタシハジユウニナレタ

 彰人はその言葉に戸惑った。
 別に自分がなにかしたわけではないはずだ。
「え……と」

 ……アナタノコウドウ、コトバ、ソレガワタシヲジユウニシタ

 彰人は今だ状況が飲み込めない。
 そして、立ち直りはエイダのほうが早かった。
「……なるほど。だからさっき……」
 エイダには何が起きたか分かったようだ。
「めんどくさいことになる前に殺しちゃったほうがいいかな」
「!」
 エイダの言葉に彰人は体を硬くする。

 ……ダイジョウブ

 サモン・フェアリーはそう言う。
 するとあたり全体が急激な光を放ち、彰人とサモン・フェアリーを包み込む。
「え? え?」
 彰人にはなにが起こったかさっぱり分からない。
 しばらくすると光が収まり、目の前に円と線を組み合わせた模様が浮かんでいた。
「精霊《スピリット》同調……まさかここまでするとは……」
 一人状況を把握しているエイダも信じられないことがあったという顔している。
 彰人に関してはすでに許容範囲を超えているせいか軽く放心状態にあった。
「ふ、フハハハハハハ」
 いきなりエイダが笑い出した。
 その声を聞いて彰人も放心状態から立ち直る。
「面白いことになってきたわね。でも……」
 エイダがまとう空気が一気にドス黒いものへと変わっていく。
「だからどうしたってわけじゃないでしょ?」
 エイダの言葉に彰人の体は萎縮する。
 しかし、ふと温かい感覚が体を包み込んだ。

 ……ダイジョウブ。ワタシノイウトオリニシテ

 なんだかわけが分からなかったが彰人はその言葉に耳を傾ける。
 さっき現れた模様に手をかざし、エイダを見据える。



『嘆キノ歌ヲ奏デマス。ソノ歌ノ音ニ答エテクダサイ』

 それはどちらの言葉だっただろうか。
 どちらからでもなく、その言葉を発していた。
 完全に二人が一つになったかのように。

『私タチヲ助ケルタメニ、目ノ前ノ脅威ヲ消シ去ルタメニ』

 彼らの歌は続いていく。
 声が響いていくたびにあたりに風が吹いていく。
「っ、ここまで力が強いなんて……」
 風にあおられ、エイダはその場を動けない。
 その間も二人は歌を歌い続ける。

『私タチノ前ニ現レテ、ソノチカラトナッテクダサイ』

 一つの歌が終わりを迎える。

『今、コノ地ニ舞イ降リヨ』

 歌が終わって瞬間、その場に爆発的に風が当たりを駆け回る。
 立ってるのがやっとのほどだ。
 風は刃となり、エイダを襲う。
「! あの精霊《スピリット》からこれほど力を出すとはね……」
 エイダは傷つきながらも薄く笑った。
「いい、いいわ。すっごく楽しぃ……」
 風の中でエイダは一人不気味に笑い続ける。
 エイダが鎌を握り締めたとき……

「見つけたぞ、魔族! それ以上動くな!」

 唐突に第三者の声が響いた。
 五人ぐらいで、ヴェルのような服を着た集団だ。
「……魔道師。いいところで……」
 エイダは一旦その場から飛び上がる。
「……興ざめだし、今回はこれぐらいでほっといてあげる。……またね。少年」
 そう言ってエイダはその場から離れていった。
 何人かの魔道師が追っていったようだが、多分捕まえることはできないだろう。
 そんな光景を眺めながら、彰人は意識を失った。


 少年のしたことはどのような結果を生み出すのだろうか。
 一つの物語の終わりはまた新たな物語の始まりとなる。
■作者からのメッセージ
第六話です。
一応事件の決着はつきました。
あとはエピローグを残すのみです。


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