交差する彼らの居場所 第五章『決断』 | |
作者: 悠蓮 2009年05月24日(日) 00時29分32秒公開 ID:XnxKweJ8Y8w | |
……これからどうするか? 正直、何も思いつかない。 とりあえずこのままここに居れば俺の安全は保障されて、サモン・フェアリーは消滅する。ヴェルは一生あのままになる。 別にそれでもいいかとは思う。 昨日今日のことを夢物語にして、普通の日常に戻ればすむ話なのだから。 もしかしたら特異体質とかのせいで普通ではなくなるかもしれないが、命の危険はないだろう。 所詮一般人の自分ではもう一度エイダと対峙しても死ぬだけだ。 けれど。 本当にそれでいいのだろうか? なぜかそんな考えが頭をよぎる。 やるべきことでも、必要とされてるわけでもない。 ――自分のやりたいことはなんなんだ 「やりたいこと……」 そんなこと今まで特別考えたことなかった気がする……。 俺のやりたいことって……なんだ? 俺は…… ……タスケテ 「!」 突然、声が頭の中へ飛び込んできた。 その声は間違いなく…… 「……サモン・フェアリー?」 間違いなく四枚羽の少女の苦しげな叫びだった。 ……今ここで逃げたら彼女の必死の叫びはどうなるのだろう。 助けを求められている。自分に向けられた言葉じゃないにしても、それを見逃していいのだろうか? いや、そんな義務みたいなんじゃなくて、もっと単純に……。 助けたい。あの時自分に語りかけてきた彼女を。悲しい顔にゆがんでいた彼女を。 彰人はチラリとヴェルを見る。 魔道具の暴走で全てが変わってしまった少年。 サモン・フェアリーがいれば彼は自分のしたいことができる。 その思いを無視したくない。 あぁ、そうか。 「……そんな単純なことでいいのか」 やるべきとか必要とされるとか、もっと言えばできるかどうかとか。 そんなことは二の次で。 やりたいことはやってみればいい。 彰人はそう思って家を飛び出していった。 もしかしなくても少年の行為は愚かなものだ。 何の対策もせず、敵地へ向かうなど……。 しかし、彼の結論は愚かだと言えない。 そんなものは本人にしか分からないのだから。 |
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