交差する彼らの居場所 第四章『遭遇』 | |
作者: 悠蓮 2009年05月24日(日) 00時18分49秒公開 ID:XnxKweJ8Y8w | |
ドスドスドスと体にナイフが刺さる音がした。 けど体にさっき以上の痛みはこない。 「?」 不思議に思って目を開く。 「……ヴェル!?」 目の前に居たのは銀の髪の少年。 その体は今、あちこちに赤い染みを作っている。 「あらなんだ。使えない獣魔道師さんじゃない」 エイダはくすくすと笑っている。 「ヴェル……なんで……ここに」 「うるさい……。精霊《スピリット》の力の発動を感じたから来ただけだ」 別れた時と同じ調子で話すヴェルだが額には汗が滲んでいた。 「無理しないほうがいいんじゃない?」 「黙れ。貴様に……言われたくはない」 エイダを睨むヴェル。しかし、だんだん口調が苦しそうになってきている。 「邪魔者が入ったし、今は見逃してあげるわ少年」 「逃げる……のか……!」 「逃げてあげる、のよ」 二人が話している言葉が遠い世界の言葉に聞こえた。 エイダは大鎌で自分の横を切り裂く。何もないはずの場所に穴が開いた。 「今夜十二時。サモン・フェアリーは消滅する」 おもむろにエイダはそう言い放った。 「なんとかしたければ頑張って止めてみることね。じゃさようなら」 穴の中にエイダもサモン・フェアリーも吸い込まれ、消えていった。 彰人がその光景を呆然と見ていると、隣から荒い息遣いが聞こえてきた。 「! ヴェル! 大丈夫か!?」 彰人は慌ててヴェルの元へと駆け寄る。 「うるさい、騒ぐ……な」 「お、おい!」 こういうときどうすりゃいいんだ?と彰人は慌てる。 そうこうしているうちにヴェルの体がぐらりと傾き、 倒れると同時に獣の姿に戻った。 「! おい、ヴェル!」 何度か呼びかけるが、返事は来ない。 かろうじて呼吸はしているようなので、とりあえず彰人はヴェルをつれて帰ることにした。 全ての道は交差する。 それがどのような結果を生み出すのか誰も知る由はない。 |
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