BLADE OF SWORD 第十六夜
作者: 清嵐青梨   2009年05月20日(水) 00時12分04秒公開   ID:L6pfEASBmTs
結局サーヴァントと一対一の話し合いは放課後まじかに迫るまで時間が掛かった、お陰で学校の昇降口に入って直ぐ手前にある保健室で身を潜める羽目になった。だけど良く考えてみたら弓道部の部長である美綴綾子が今日休みだって聞いたから今日の部活は休みだってことになるんじゃ…。

なんでこうも部活関係の事情を思い出さなかったのだろう、俺という男は。
慌てて保健室に出て教室へ向かって見ると丁度桜が俺の教室へ向かおうとしているところを見かけ、彼女に声をかけると彼女は振り向き驚いた表情をして、如何したんですか高嶺先輩…そんなに慌てて…と彼女の傍でゼェゼェと荒げた息を整えようとしている俺に恐る恐る聞いてきた。
俺は大分整ってきた息をスーハーと二度ほど深呼吸を繰り返しドクンドクンと高鳴っている心臓の鼓動を抑え乍ら彼女に答えを返す前に聞き返す。




「桜こそ…校門で待ってた筈じゃ…?」
「今日部活もありませんし、掃除当番ではないですから高嶺先輩をお迎えにと思って」




余計でしたか…?と彼女の深刻そうな表情を見て俺は、全然!寧ろ後輩と一緒に帰れるのが嬉しいよと前向きな返答を返すと彼女は何処か安心したかのようにふっと笑みを浮かべ、私も高嶺先輩と一緒に帰れるのが初めてで一寸緊張しています、と可愛らしい返事を返す。

矢っ張り男女同士の下校というのは普通どちらかが緊張するのかと思ったのだが、意外と緊張しているのはお互い様だなということに若干違和感を感じるのだけども、実際此方も女子と一緒に帰るのが初めてで正直緊張している。


でも紳士らしく可愛い女の子に疚しいことをしないよう確乎りとエスコートしなくては…。俺は自分自身をきっちりと引き締めると直ぐ鞄取って来るから待ってて、と桜に言うと教室に入り、かけたままの鞄を取り再び廊下に出て彼女のところへ向かい、それじゃ行こうかと一言かけると彼女は笑顔で、はいと明るく答えた。

矢っ張り彼女は笑顔が似合うなーとても聖杯戦争の参加者に相応しくはないなー。って、何言っているんだろ俺。なんで桜を見て行き成り聖杯戦争のことを思ったんだろ。だけど本当に彼女が聖杯戦争の参加者に相応しくはないと思っているのは確実である。参加しそうなのは義兄の慎二のほうだ。絶対に彼奴は参加しそうだし聖杯も欲しいに違いない。




そんなことを頭の隅っこで考えて乍らも桜の買い物に付き合い、序でに士郎たちと一緒に食後のデザートでも用意しようかなと思い甘味コーナーに置いてある羊羹を買って衛宮宅へ向かう。

いつものように俺からお邪魔しますーっと一言かけて玄関へ上がりいつものように士郎、そして新たにセイバーの出迎えを受ける……筈なのだが……。




「遠坂サン、ナンデオ前ガ士郎ノ家ニ上ガリ込ンデイルノデスカ」

なんで片言なのよ。ユウに言うの忘れたけど、私衛宮くんの家で居候することになったから」




宜しく、とピンク色のエプロン姿の凛がにこっと俺に向けて笑顔を向けて言った。だけどその笑顔が逆に俺に恐怖を与えるのですが…。
そもそも士郎と同盟を組んだからって態々彼の家に居候する理由があるのだろうか、俺には想像出来なかったのだが理由が今一理解しない俺に凛が、あの慎二がライダーのマスターで、その慎二が衛宮くんに同盟を持ちかけてきたのよ、と耳打ちで説明して呉れた。

成る程、士郎は慎二にとって友人だから友人に同盟を持ちかけるのは当然手駒が増え慎二側が有利になるということか。然し乍ら士郎は既に凛と同盟を組んでいるわけで当然慎二との同盟は成立しなかったのだが、代わりに彼は柳洞寺に魔女がいるという情報を受け渡したのだ。


魔女…つまりキャスターに違いない。慎二の奴、何時の間にその情報を掴んだのだろう…。だけど考えているその前に本日の夕飯は凛の御飯になりそうだ。だが桜は、分かりません…と先輩である凛に向けて反抗的な言葉を呟く。
分からない…そう彼女は言ったのだが如何いうことだ…。ちらりと桜を見ると彼女は俯いたまま先ほど言った言葉をもう一度繰り返した。




「遠坂先輩のおっしゃっていることが分からないと言ったんですっ。先輩、台所お借りします…」
「え…ぁ…桜?!」




凛に向けて言葉を突き放った後彼女は士郎の返答も待たずに上がりこみ真っ直ぐ台所へ向かって言った。
流石の俺は今回ばかりは只々ポカーンとその状況を見ているだけしか出来なかった、真逆大人しい彼女が凛に向けてあんな反抗的な態度を示すなんて思ってもいなかったので自分でも大いに驚いている。

と、凛がようやく靴も脱いでいない俺に気付き制服の袖を掴み引っ張り乍ら、何ボウッとしているのよユウ!早々と上がりなさい!と言って急かし始める。


俺はようやく彼女に引っ張られていることに気付き、せめてスリッパ履く時間を呉れよと一言かけ素早くスリッパに履き替えると凛に引っ張られるがまま俺は士郎とセイバーと共に台所へ向かった。
■作者からのメッセージ
※一寸反抗的な真ヒロインこと桜を目指してみる…といっても、原作そのものですけどね。

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