BLADE OF SWORD 第十四夜
作者: 清嵐青梨   2009年05月15日(金) 19時44分04秒公開   ID:L6pfEASBmTs
一体週に何回くらい怪我したら気が済むんだ…バーサーカーといいライダーといい、なんでマスターじゃなくてサーヴァントが一々俺のところへ向かっては殺そうとして来るんだよ…。それに2月に入って早々凛がセイバーのマスターになった士郎を殺そうと躍起になったり士郎がライダーに殺されそうになったり…なんでこう俺の回りは血の気が多い奴ばかりいるんだよ…。

災難だ…。俺はようやく完治した右腕を擦り乍らはぁーっと長い溜め息を吐いていると、如何かしたんですか?高嶺先輩、と桜が出来上がった肉じゃがを盛り付け乍ら心配そうな表情をして俺に聞いてきた。
今食卓にいるのは俺と桜しかいない、後からタイガー先生も来るだろうし士郎も直ぐに制服に着替えてから来るだろう。然し今の状況を考えてみれば完全に俺が彼女を心配するような表情をさせている。


やばいやばい、彼女の前でこんなことを考えては余計に彼女を困らせるだけじゃないか。俺はぶんぶんと激しく首を左右に振って、なんでもないよといつもの調子で彼女に向けて言うと、そうですか…と彼女はようやくほっとした表情になり盛り付けた肉じゃがの皿を食卓に並べる。




「そういえば先輩は未だ知りませんでしたよね?衛宮先輩の家に居候することになったセイバーさんっていう方」

「セイ、バー…?…」




突然桜がセイバーという名前を口にしたことに俺は思わず目を疑った。士郎が召還したサーヴァントがセイバーだってことは分かっているのだが、真逆士郎の魔力はセイバーを霊体化させる域にまで達してはいないのか。

だけど未だセイバーの姿も確認したことがない、かといってこの間のランサーとセイバーの戦いもこの目で見てたわけではないから、戦力はどのくらいなのか分からないが、多分ランサーの力を凌げる程度の力を持っているサーヴァントだと推測する。


だったらこの目で確認しなければ…俺はそう思い、士郎を呼びに行ってくると桜に言って、士郎の部屋へと足を向ける。
長い渡り廊下を無言で歩いていると、丁度士郎の部屋の障子がガラッと開け放たれ部屋からは制服姿の士郎と見慣れない女性が現れてきた。

非常に綺麗な女性だった。小柄な身長であり乍ら何処か凛々しく獅子を感じさせるような雰囲気が出ていて、金髪碧眼という外国ならではの輝かしい色彩を持っており顔が獅子というよりまだ子供の獅子という感じで可愛らしい顔つきをしている。
服装は簡素だがシンプルさと清浄さを感じ取るスタイルで、白いワイシャツに青色のタイ、そしてタイと同色のロングスカートをうまく着こなしている。


思わずその清楚な姿に見惚れていたら、如何したんだユウ…?と士郎がきょとんとした表情で俺を見て聞いてきた。直ぐにはっと我に返り、その女性の人は…?と彼の隣にいる彼女を指差す。
士郎も桜同様俺に紹介そびれたのだろう、直ぐに気付いて彼女を俺の前に差し出すと、ユウは知らなかったな…と言った。




「此奴は訳あって一緒に居候することになったセイバーだ、で…こっちが俺の友達の高嶺優香だ、ユウと呼んでやって呉れ」

「初めましてユウ…。セイバーと言います、といっても既に私のクラスをご存知ですよね」

「勿論、初めましてセイバー。其処の友人に名乗られたとおり俺が高嶺優香だ。宜しくやって呉れ」
「……え?真逆ユウも聖杯戦争のマスター、」
「そうだけど…真逆凛に言われていなかったのか?俺がマスターだってこと」
「聞いてもいないし遠坂から言われたこともないさ!何で俺に教えて呉れなかったのさ?!」
「教えたら絶対にセイバーが俺のところへ襲い掛かってくるかもしれないから敢えて言わなかっただけさ……で、如何するよセイバーさん。今此処で俺を亡き者にする?それとも見逃して呉れる?」




俺はふっと呆れた笑みを浮かべ彼女――セイバーに向けて弾丸のような言葉を次々と吐き出すと、彼女は一瞬士郎を見て逡巡しこの状況の決断を如何下すか瞼を閉じて考えると、瞼を開け碧眼の瞳を俺に向けると彼女が下した決断を答えた。




「シロウの友人の貴方に危害を加える必要はないと見做みなします。第一マスターであるのなら何故サーヴァントを出さないのです?」

「……最後の取って置きってことで俺のサーヴァントのことも見逃しては呉れないかな。彼奴はマスターである俺に忠実な奴だから」
「……分かりました、貴方がそう言うのなら今回はサーヴァントも見逃してあげますが、次回はありませんよ」




そう言って彼女は俺の横を通って食卓へ向かった、さっきから思ったのだがセイバーの様子がかなり不満というか怒っているように見えたのだが、気のせいなのだろうか。
念のため士郎に聞いてみると、どうやら彼は昨日ライダーに襲われ一人でサーヴァント相手に挑んだという。だけども彼は令呪で呼ぶようにという彼女の約束を破ってしまったことにより、彼女はまさに昨日の出来事に相当怒っているようである。

そういう俺もそうなのだが呼び出したのは仮契約をしたサーヴァントであって、実際に令呪を使ったことはお互い一回も使っていないということか…俺は何故か此処に同士がいたことにほっと一安心をしたのだが、問題の凛は矢張り令呪を何度も使っているだろうなと思いつつ、俺と士郎は食卓の障子を開けると既にセイバーが座っており今か今かと朝御飯の開始を待っている。


本当に獅子のようだなと思いつつ俺も座って桜から御飯の盛った茶碗を受け取り早速朝食を戴こうと肉じゃがに箸を伸ばした時、カチッとセイバーの箸に当たる。




「あ……すまん。セイバー」

「いいえ、此方こそすみませんでした」




丁寧に俺に向けて謝ると肉じゃがを箸で摘んで口の中に入れると御飯を掻っ込む勢いで箸を進める。
顔にそぐわず意外と速いんだな、と思いつつ俺はそんな彼女のスピードに負けてはいられないなと思い、彼女の倍以上に箸を進める。彼女も俺のスピードに気付いたのだろうか、やけ食いをするかの様な感じでまたスピードを少し速める。

これじゃ丸で早食い競争をしているようにしか見えないな…そう思った俺だがなんだか面白い感じになってきた。空の御飯のお代わりを桜に要求すると再びおかずに手をつける。


結果、タイガー先生が楽しみにしていた肉じゃがを俺とセイバーが一気に平らげてしまい、正直彼女には申し訳ないなという気持ちと大人気ないなというアサシンの突っ込みにより、俺のテンションが一気に下がってしまった。

…でもたまにはサーヴァント同士との早食い競争もありなんじゃないかな――ふと思った俺の気持ちに、霊体アサシンは長い溜め息を吐き矢張り大人気ない…と再び俺に突っ込みを与えた。
■作者からのメッセージ
※ようやくセイバー登場。が、何故か早食い競争並みの展開になっちゃいました。

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