BLADE OF SWORD 第十一夜
作者: 清嵐青梨   2009年05月10日(日) 19時18分23秒公開   ID:L6pfEASBmTs
本当なら明日にでも学校に行こうとしたのだが怪我を癒すために一日休んでも支障は出ないと、アサシンが言うものだから仕方なく今日一日は休みを取ったのだが如何しても昨夜のことが気になってしまったので夜中、凛に電話をかけてみたら丁度彼女は用で出かけようとしてたところだった。

とんでもないところで引き止めるようなことをしてしまったなぁ…俺は後悔の念を露わにしたのだが、気にしないのと電話の向こうの凛が明るい声でそう言った。




『それと今日学校に来ていなかったユウにも言っておくけど、七人目のマスターは衛宮くんで召還したサーヴァントはセイバー……って、聞いてるのユウ?!』

「え……あ、うん。聞いてる聞いてる、正直驚いてたんだよ。真逆士郎が最後のマスターだなんてな」
『それで明日ユウ学校に来れるわよね?一寸話があるから絶対に来なさい』
「了解、やり残した進学補習のプリントをやらなきゃいけないなーと思ってたところなんで」




そう言って、俺は凛と明日の朝一番教室に来るようにと約束を交わし、話がついたところでようやく通話を切ると、朝一番に学校に行こうかなと思い早めに就寝することにした。
















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翌朝、運良く朝のバイトが休みだってことがあって伸び伸びと起床することが出来た。本当なら二度寝したいなーとか思ったのだが昨夜交わした凛の約束のこともあり、宣言どおり朝一番に学校へ登校した。

登校して先ずは進学補習のプリントだな、と思い教室に入り自分用に取っておいてあったプリントを机に広げ席につく。カリカリと紙に向かってシャーペンを走らせる音だけが静寂な教室にリズム感を与えさせていると、右頬に群青の長い髪がふわりと当たる。ちらりと見上げるとアサシンが何時の間にか霊体化を解いて現界していて、興味深げにそれを見下ろしていた。




「……勝手に霊体化を解くなよ、それで何興味強くこれなんか見ているんだよ?」
「ユウがやっているものが気になってな、つい出てきてしまった。ほぅ…これが“ぷりんと”というものか」

「プリントの他にもテキストがあるのに全部終わらすものね、あんたは」
「……てか、何時の間に来たんだよ。凛」




何時の間にかアサシンの隣には何時もの髪型をした凛が赤いロングコートを脱いで椅子にかけてプリントを覗き込んでいた。寄って集ってなんでやっているものに興味を惹かれるのかなー、この二人は。

興味深げにじろじろと見られては勉強どころじゃなくなるじゃないか…俺は小さく溜め息を吐いてシャーペンを置いて後ろを振り向き、ようやく呆れた表情の凛を見ると、それでこんな朝一に話したいことってなんだ?と用件を切り出す。

だけど今の彼女はいつもより真面目すぎるのだがそれが何故か怒っているように見える、俺何かしたっけ?何もしていないと思うんだけどなぁ…。思い当たる節を探していると彼女は行き成り俺の胸倉を掴んで引き寄せると、あんた…なんでランサーと仮契約したことを言わなかったのよ!?と憤慨した。


遂にバレてしまったか…まぁ、いつかバレてしまうだろうと思っていたのだがこんなに早くバレてしまうとは思っても見なかった。多分ランサー自身が俺と仮契約をしたことを話したと思うのだけれど、結果はどちらも同じか…。俺は早くも白旗を上げるような気分で凛の顔を見る。




「何時お分かりになりましたでしょうか?遠坂さん」

「って、なんで行き成り敬語になるのよあんた。っと話が逸れるところだった。何時ランサーと仮契約なんかしたのよ?!それだけじゃないわ、あんたイリヤスフィールのバーサーカー相手に戦ったそうね、なんであんな無茶なことをするのよ!?」
「イリヤスフィール…?…って、若しかしてイリヤのことか。あの子の名前そんなに長かったんだ」
「…ユウは三大魔術師のこと興味なかったものね、良いわ。念のため教えておくけど、遠坂家と間桐家のことは知ってるわね。私と桜の家系の他にアインツベルンという魔術師の家系が存在するの」




アインツベルン…確かに凛はそう言った。アサシンを召還する以前両親の遺品を整理したら突然現れてきた一冊の書にアインツベルンという魔術師の家系のことが書かれてあった。

開いたその内容はあまりにも雑で殴り書きのような本になっていたが、この書を書いた字は亡き父の字だってことが分かった。然し亡き母が分かりやすく説明しようとしたのだろうが、父の字の上に自分の字を記してあったからこの書に書かれてある文が自分にもようやく通ることが出来た。


アインツベルン家のことなら召還する以前に知っている…俺は凛に向けてそう言うと、ガタッと椅子を鳴らしてほんの少し椅子を動かすと凛を見て俺が知っている限るのアインツベルン家のことを話す。




「アインツベルン…、殆どの人がアインツベルンが錬金術に拠って作られたホムンクルスで、今回の聖杯戦争では失われた第三の魔法「魂の物質化」、"天の杯ヘブンズフィール"に至る器だとお父さんが遺した書に書かれてあった…。待てよ……てことは」




真逆な…。俺が其処まで言ってようやく今回の聖杯戦争のキーパーソンである聖杯は何なのか分かった時、それを言おうとした俺を先に分かったアサシンが凛を横目で見て言った。




「つまり…イリヤスフィールという女子が聖杯戦争における“生きている聖杯”ということか、アーチャーのマスターよ」

「物分りが良いわねあんた達は。本当にお似合いのペアだこと」
「褒め言葉ならば喜んで受け取って差し上げよう…と言いたいところだが、お主も彼女が聖杯だってことに気付いておったであろう?」
「中々鋭いわねアサシン…えぇ、私もイリヤスフィールが今回の聖杯戦争の聖杯だってことにようやく理解したわ。だけどね、今回の聖杯戦争はもう一つの聖杯も用意されていたのよ」




そう言って凛は窓の外に視線を投じる、勿論彼女が発した言葉に当然驚きを隠せなかった。思わず椅子から落ちるところだったほどである。

イリヤの他にも“生きた聖杯”を持っている魔術師がいるだなんて知らなかったのだから当然その真実を追求するべきだと俺は真っ先にそう思ったのだが、僅かに凛の表情が曇ったのは気のせいであろうか、彼女の表情がなんだか酷く深刻そうな表情をしていた。
それには気付かず俺はもう一つの聖杯の詳細を聞こうとしたとき、真っ先に彼女の心情に気付いたアサシンがユウ、これ以上首を突っ込んではいけないようだな…、と俺の肩に手を置く。





「アーチャーのマスター、もう一つの聖杯の持ち主は若しやお主の大事な人であろう?違うか…?」
「……本当に鋭いわね、あんたは。もう良いわお手上げよ…っと言いたいところなんだけど、もう一つの聖杯のことは口が裂けても言わないわよ」




後はユウがその答えを見つけることね…そう言って凛はくるりと俺に背を向け、早々とアサシンを霊体化させなさい、もう他の生徒が来ているわよと言って窓の外を見る。

それに釣られて窓の外を見ると朝の部活動に参加する生徒や早めに学校へ来た生徒がぞろぞろと校門を抜けて行くのが見えた。俺はアサシンに霊体化するよう指示をだすと彼はそれに承知して霊体化を始める。完全に姿が見えなくなったところで俺はちらり、と凛を見ると彼女はその視線に気付きベー!と舌を出した。


自業自得ですよーっだ、か…。俺はふっと笑みを零し再び机に向けてシャーペンを走らせると、そういえば今日の進学補習は休みだったかな…と思い出し黒板を見ると白いチョークで『今週進学補習の予定は無し』という文字が映った。

ということは、このプリントも今日でラストか…なんだか物寂しい気がするのだが最近ガス漏れ事件のことがあるから生徒は早めに下校するようにという警告だろうなと勝手に自己解釈し、再び白い紙に視線を投じた。
■作者からのメッセージ
※結構話の展開が早いですねぇ、それにしてもこの主人公マジで理解力が強すぎる…。って設定したのは自分か。

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