BLADE OF SWORD 第二夜
作者: 清嵐青梨   2009年04月19日(日) 22時55分46秒公開   ID:L6pfEASBmTs
「へぇー、ユウがサーヴァントを召還するなんて思っても見なかったわ」

「あのなぁ、これでも召還魔術を使ったの初めてなんだぞ。失敗したらどうなるやら想像しただけでぞっとしてしまうよ」
「それもそうね、失敗したら協会側が黙っていられない…常識でしょうね」




ところで今貴方が召還したサーヴァント連れて来てるの?と同級生にして俺の幼馴染の遠坂凛が俺を屋上に呼び出して、さっきから俺と後ろをじろじろと見詰めてくる。本当に召還したサーヴァントが見たくて仕方がないようである。

だけど如何せん、俺のサーヴァントは俺に貸家を呉れた柳洞寺の山門の警備をしているのである。
7つの時突然の事故により姉を亡くしてしまった身寄りの無い俺を引き取って呉れたお礼として何かしてやりたいと思い、アサシンに柳洞寺の山門を警備して欲しいとお願いした。
然し此処で貴重な令呪を使うわけには行かないので取っておいた。何か危険がきた場合は令呪で呼べば一瞬で済むのだから、敢えて使わないでおいたのだ。


けど無念。真逆サーヴァントを見たい、然もよりにもよってあの遠坂凛なのだから断りたいけど断りきれない。なんたってあの「あかい悪魔」なのだからな。思わず溜め息が出てしまう。




「なんか言った?ユウ」
「いや何も。気のせいじゃないか?」




そして素早く反応するその鋭さは相変わらず健在のようである。流石遠坂凛、侮れん。




「ところで、貴方のサーヴァントを連れてきているの?いないの?明瞭しなさい」
「う……実は連れてきていません。第一俺が一番乗りだから他のマスターにもサーヴァントにも逢ってないぜ」

「逢ってないのは当然でしょ、まだ聖杯戦争まで時間があるからね。でも間に合って良かったじゃない、ユウは元剣道部の主将だしね…若しかして召還したサーヴァントはセイバーかしら?」
「さぁーね。俺が召還したサーヴァントがセイバーと思っているならば自身の目で確認するんだな………ん?ところで凛、さっきから聞いていて思ったんだが真逆まだサーヴァントを召還していないだろう?」
「う……相変わらずその図太い勘は健在のようねユウ。完敗ね」
行き成り話を逸らすな目を逸らすなおい。はぁー、矢っ張り召還していないのかよ」




道理で凛の口から自分のサーヴァントの話を切り出してこないわけだ。俺は屋上のフェンスに寄りかかる。

此方がもう既にサーヴァントを召還したという事は、他の魔術師たちもそれを追うようにサーヴァントの召還を急いでいるのかもしれない。そんなことを思い乍らふぅと小さく息を吐き捨てると再び彼女を見て、如何するんだ?今頃他のマスターも次々とサーヴァントを召還しているころだぜ?と聞いてみると、そんなこと分かっているわよとやや苛立った様な荒げた声で言い返す。

あの様子からして大分切羽詰っているようにみえた、俺はフェンスに寄りかかったまま両手をズボンのポケットに突っ込む。




「手伝ってやろうか?いくら幼馴染でもそれくらいして呉れたって良いじゃないか」
「良いわよそんなの、召還魔術くらい私一人だって出来るんだから」
「そういって、またいつものドジを踏むんじゃないだろうな?元々ドジをするのは遠坂家の」
「あーもう、煩瑣いわよユウ!一々私にプレッシャーをかけるようなことを次々と投げるなぁーっ!」

「はいはい、そりゃ失礼しましたっと。ところでお前はセイバーを召還するんだろう?親父さんの様な弓士アーチャーのサーヴァントを召還しなくても良いのか?」
「……ユウ、貴方が召還したサーヴァントが真逆セイバーなの?だったら」
「ノンノン!俺が召還したのはセイバーじゃねえよ!誤解するなよ凛!」
「じゃあセイバーじゃなければ一体何を召還したのよ?」




観念して大人しく私に教えなさい!と凛が俺に近寄るなり制服の上着を掴んで激しく俺を揺さぶり始める。
其処までして俺の口からアサシンの名を吐かせるつもりだ、仮令ガンドで俺の身体を穴だらけにするという冗談も平気へやってのける女だからなー。

却説さて、如何したものか…俺は彼女に揺さぶらされるまま此処から抜け出せる解決策を練っていた結果、凛の手を掴んで俺の上着を無理矢理引き剥がすと、もう直ぐお昼休み終わるぞ、早く教室に戻ろうなーっと言ってそのまま凛の手を掴んだままフェンスから離れ屋上のドアへ向かう。


一寸!まだ話終わってないわよ!と反論する凛に再び溜め息を吐くと、その話は今度話すから、という言い訳を言って早々と屋上を出て階段を下りていく。俺の勝手な言い訳に彼女は後ろから、いつもアンタは言い訳ばっかりするほうよねぇ、と溜め息混じりで言う。




「けどユウは生まれつき女顔だからねぇ、とても言い訳するような顔に見えないわよ」
「俺は元々女顔です。それと女顔でも言い訳はするんです。悪かったですね」
「……若しかして拗ねてるの?」
「別にぃ。拗ねてねーよ凛の馬鹿」




俺はそう言って教室に入り其処で彼女の手を離すと、また何かあったら連絡頂戴、と彼女に向けてひらひらと手を振り乍ら言うと自分の席に戻り、鞄の中から教材を取り出して次の授業に備えた。
■作者からのメッセージ
※主人公は凛と士郎とは同い年で、凛と同じ教室です。

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