#学園HERO# 5話
作者: 神田 凪   2009年03月20日(金) 13時43分02秒公開   ID:Fpk3UqE6X6I
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■ □






(最上side)

僕はしばらくその場から動けなかった。ただ、宮城さんが出ていった扉を眺めて立ち尽くすしかなかった。
何を言ったのだろう僕は。何も出来ないくせに。

ここは学校という領域なのに。
僕たち[教師]が彼女たち[生徒]に何も出来ないなんて。

悔しい。あの時、僕が彼女を送っていれば。安達君にまかせずに僕が。
安達の影響力を見くびっていた。馬鹿だ。


《 そう、あなたは馬鹿だ 》

フッと頭に言葉が流れる。ああ、これは。
あの時の・・・


《 結局あなたも【助けて】って言わないじゃないか。求めればいい、自分で頑張ってもどうしようも無いときは。そのために人は多くいる 》


!!
そうだ。彼はそう言ったじゃないか。僕は何を忘れていたんだ。
一人では何事にも限界がある。どんなに頑張っても一人では無理なことがある。
ならば、求めるんだ。誰かを。

携帯を取り出し、体が覚えている番号をゆっくり押す。
電子音が五回コールしたとき、相手が出たのが分かった。

「僕だけど、お願いがあるんだ。君の力を貸して欲しい」

これは僕の我が儘だ。ただ、彼女をこの学園から去らせたくはなかった。
彼女はこんなこと望んでいないだろう。それでも、僕は・・・。



電話の向こうでクスリ、と相手が笑ったのが分かった。








□ ■





(生徒会side)

「どうしました?」
さっきから反応を返さない生徒会長の帝に副会長の辰巳は尋ねた。仕事に関しては一切手を抜かない彼が執務中にペンを止めるとは珍しい。そう思い声をかけたのだ。
「最近、ヒーローの奴が出てこないと思ったら、その正体候補の安達関連の騒ぎか。チッ面倒なことを起こしやがって」
辰巳の問いかけに答えたわけではなく、ただの独り言のようだがだいたいは理解できた。
先日安達に取り入った女子生徒宮城真央の存在は、大きくこの学園を騒がせた。櫻井の存在の次となるのか、誰もが彼女に羨望と憎悪を感じた。
ならば、自分もと彼女のように取り入ろうとする輩が増え、トラブルが続出。その後始末は生徒会のほうにも回された。


ふと、先ほど入った情報を思い出した。
「・・・そういえば、彼女退学するようですよ」
何となく口にした言葉だったが、帝の意識を向けさせた。
「何? なぜだ、あいつは安達に気に入られたんじゃないのか?」
「さぁ、理事長のほうに彼女の両親からそう連絡があったそうです。もしかしたらあの情報は過剰に演出を加えたものなのかもしれませんね」
「よくあることだ。・・・だが、それならヒーローが出てくるかもな」
ニヤッと先ほどまでの不機嫌な表情から一変、何やら面白そうに笑った。
「濡れ衣を着せられた可哀想な生徒を助けてこそヒーローだろう?それに安達本人が関わっていることだ、乗り出して来るに違いない」
「その可能性はあります」
「しばらく理事のほうにその女子生徒・・・えぇっと何て名前だ?」
「宮城真央さんです」
「その宮城の退学届けをしばらく受理するなと伝えろ。理由はお前がそれらしく付け加えろ、ヒーローを引っ張り出す」
「はい」
帝の指示に辰巳は立ち上がり、サッと書類を手に生徒会室から出ていった。


その直後、入れ替わるように書記の姿が入ってきた。
「あの、芹沢様。今、帆阪様が急いでいたようでしたけど、何かあったのですか?」
おどおどとしながら、書記――高宮アカネは何やら機嫌の良い帝に視線を向けた。
帝は、アカネの姿に一瞥するだけですぐ視線を離した。そこにあったのは例の張り紙。
それをくしゃりと握り潰した。
■作者からのメッセージ
随分久し振りです。最後に書いたのが大晦日・・・。
八割は書けていたんですけど、最後で迷って遅くなってしまいました。
次はヒーローが書けるかな。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
次回も読んでいただければ嬉しいです。

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