血染めのノクテュルヌ-You know it's true- 第四章
作者: 清嵐青梨   2009年02月23日(月) 18時04分46秒公開   ID:L6pfEASBmTs
シロウの亡き養父・そして私の元マスターである衛宮切嗣の知人である陶器愛好家であり有名な腕を持つ機巧技術家カラクリアルティスト・北条司の自宅へ訪れた私たちは行き成り彼の義弟である北条隼人に出会い、一時はどうなるかと思ったが時機タイミング良く本人がその場を切り盛りしたおかげで、なんとか私たちは自宅へお邪魔することに成功した。

シロウは兎も角、初めて訪れた凛や私は広々とした屋敷内を見回し呆気に取られていた。台所の向かいにある居間に通された私は用意された座布団に座るなり、広々とした居間を何度も見回し、罠が仕掛けられていないか確認していると此処には罠なんか仕掛けていないよ、と司さんが向こうの席に腰掛けると私に向けて柔らかな笑みをかけた。


「確かに此処は何かと物騒な物が山ほど置いてあるからね、けど…大事なお客様に対するお持て成しはちゃんとしたものでなきゃいけないから、敢えてこの屋敷には罠を仕掛けなかったんだよ」
「それでは…他の場所で罠が仕掛けられていると」
「うん、そうなるね。でも罠の発動時間は夜と決まっているから」


朝に発動出来ない仕組みにしてあるんだよ、と機巧技術家はそう言って居間から覗ける立派な庭園を見ると、此処に用があって着たってことは若しかして陵牙くんのことについてなのかな?と言った。

それを聞いた凛が腰を少し浮かせ前に乗り出すなり、ランサーと戦った相手について何か知っているんですか?!と聞いてきた。凛の隣に座っていたシロウが、遠坂落ち着けと一言かけるが、これが落ち着いていられるかっと言い返される。


「それで、その陵牙っていうんですか?其奴そいつの所在について何か知っていますか?」
「そうだね…陵牙くんの家は此処から大分遠いところにあるんだけどね、マンションで一人暮らしをしているよ」
「一人暮らし……だったら今夜か明日の夜行ったら、」

「残念だけど、夜は俺も陵牙も外出してていないんですよ」


と、凛の台詞が言い終わらないうちにガラリと襖を開けて司さんの義弟・隼人さんが和菓子と抹茶が入った湯飲みの乗ったお盆を持って居間に入室してきた。彼の話に凛が標的を変え、外出って…毎夜あんた等何処に行ってるのよ!?と遂に立ち上がって彼に詰め寄る。
が、深緑色の髪の少年はあの凛の剣幕に対して冷静な態度で、貴方方一般人には極秘なことですと言い、私から順番に抹茶の入った湯飲みと和菓子を配る。


「〜〜〜〜もう!なんで教えて呉れないのよ?!同い年のくせに生意気、「お姉さん…一つ勘違いしてますよ、俺はお姉さんと同い年じゃないです」……え?」


シロウの抹茶と和菓子が置かれた瞬間、隼人さんが静かに凛の台詞を訂正すると彼女はきょとんとした顔になり、彼をじろじろと頭の先から爪先まで見る。
確かに彼の身長は彼女の身長とはほぼ変わらない高さで、遠くから見ても高校生だと見間違えられるほどのスタイルだ。彼女から見たら彼は同い年にしか見えない。

と、さっきまで黙っていた司さんが行き成り口許を抑えてくっくっと笑い出すと、そうだよなぁ…矢っ張り見間違えるよなぁ…と必死で笑いを堪え乍ら凛と隼人さんを交互に見る。


「見間違えるって…如何いうことです?」
「つまりだ。遠坂さんから見たら高校生に見えるが其奴はまだ中学三年生だ」


残念だね、同い年じゃなくてと口許を抑えた手を下ろすが笑みは絶やさず凛と隼人さんを見て言った。彼の話を聞いた彼女は、え…嘘…と呟き目を丸くさせ口をぽかんと開けたまま隼人さんを指差す。指差された本人は顔色一つ変えずに、そういう事と短く言って居間から退室して行った。

呆れたものだ…。私ははぁ…と溜め息を吐くと置かれた抹茶の湯飲みを持ち一口飲むと、凛…早く座らないとお茶が冷めますよと言って未だぽかんと呆気に取られている彼女に向けて言い放つと、湯飲みを手の中に収めたまま顔を上げ司さんの顔を見る。


「北条さん、今晩もまたお屋敷に寄らせても宜しいでしょうか…?」
「…えぇ、別に構いませんよ。今夜も隼人は陵牙くんと出かけるようですし、若し彼等に会いに行くんでしたら」


気をつけてくださいね、と司さんは私に向けて優しく柔和な笑みを浮かべると、さぁ…折角のお茶が冷めてしまいますよと言って、彼は先に和菓子のほうに手を出す。

それに見習い、私も和菓子を食べようとしたが、ふとシロウが和菓子に手をつけていないことに気付く。鮮やかな着色を施した見事な和菓子を凝乎と見詰めたままちらりと、凛の機嫌を直している彼を見て、私はそろそろと真ん中の凛の席に手をついてシロウの席に近寄る。

幸運にも二人にバレぬよう向こうの席についた私はシロウの和菓子を懐紙ごと持っていこうとした時、はしたないですよセイバーさんと司さんがくすくすと和菓子を頬張り乍ら私の行動の一部始終を見ていた。


「士郎くんの和菓子を奪わなくても、ちゃんとお代わりはありますからね。でもちゃんと味わって食べてってくださいね」
「……すみません」


素直に私は行った行為に反省し彼に向けて謝罪すると早々と自分の席に戻り、ようやく自分の分の和菓子に手を付けた。


「遠坂落ち着けよ、隼人くんは元々あんな性格だからさ」
「でもあんな態度はないじゃないの!私より2つも下のくせに!」
「シロウ、凛。静かにして呉れませんか、折角のお茶が台無しになってしまいますよ」


緩慢と甘い和菓子の味を堪能し乍ら後ろでぎゃーぎゃー騒ぎ立てている二人に向けて言い放つと、抹茶の入った湯飲みを持って一口飲んでふぅ…と落ち着きを払った。
■作者からのメッセージ
第四章は初のセイバー視点を書いてみました。如何でしょうか?どうもFateはアニメでしか見たことがないので、感覚が所々曖昧な点がありますが、気にしないでください。
では、第五章でお会いしましょう。清嵐でした。

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