月乃抄
作者: Miki   2008年06月19日(木) 21時31分31秒公開   ID:QGsO1NMPKs.
「君がすきだぁ!!」

「君の絵が書きたいんだぁ!!」

教室中に響く聞くからにまるっきり恥かしい言葉。
そして、それを非難する声。

「何よ!それ!違う!なんで、感動の場面なのに「だぁ」って付けんのよ!ばか!」

叩くなって。痛いって!

「せんぱーい。真面目にやってるんですかー。」
鈴木!言うな!先輩だぞ!

「あたしー、塾あるから帰るー。」
佐藤!お前...。


と言う見るからにめんどくさそうなメンバーでお送りします。

「これはねぇ!感動作なの!!最後なんか!」

『僕は君の絵が書きたい。最後の時間だけど君の絵が描きたい。』

「なーんて!言葉に落とされて見なさい!ドキューンよ!ドキューン!!」

「ドキューンって...。死語じゃ...。」

「煩いなぁ!黙って練習!」

夏コンまであと80日。
大道具おろか、セットの内容まで掴めない一方。

「大体、この部ってどこまで出場したことあんの?」

その顔はまるで修羅のようだったと僕は思う。

「大体!なんで、俺が飛鳥と一緒にラブシーンなんて...。」

「顔は、月臣君だからにきまってるじゃない。顔は。ね。」

酷い言われようだ。

「お兄ちゃーん!!」

「流来亜...。またか...。」

有名高校をさらりと抜け(サボタージュ。)
こんな公立高校に男に会いに来てると知ったら...。誰が泣くのだろう。(俺が泣く。)

「ハイ!お弁当!」
お昼さっき食べた...。

「だぁぁ!あんたねー!お弁当にはナマ物は入れないって言ったでしょ!?」

あんたが怒るな。

「たこは美味しいんですよ。婆様!!」

酷いな。マジで。味も、美人の壊れきった表情も。


「月臣。」

強引に腕を引っ張られる。

「2人ともちょっと月臣借りぞ。」

「ハッ?ちょ...。」

なんか、抱きしめるようにして俺の肩を掴む。
いやなんですけど!なんか、一部が喜びそうなんですけど!

「いやー。ああしないとだまらないからなぁー。めんどくさいな。」

「先生...。世間じゃそれをセクハッ・・・」

「男にしてどうする。気色悪いな。」

痛い。マジ痛いぞ。涙でそぉ...。

「柊。」

「は?」

「やっぱり、記憶無いな。そんな風には俺は見えないけど。」

「柊って俺とどういう...。」

「妹だよ。」

「ハィ?」

いきなり!

「妹。」

「流来亜がですか?」

性格には妹キャラ。

「ちげーよ。」

「ハィ?」

何がなんだか、わからない状況。頭が回転しない。

「柊初音。お前のれっきとした妹だよ。しかも、双子ね。」

「はぃぃぃぃ!?」

月臣初音。昔はそんな名前だったらしい。

名前に共通点は無くしかも、苗字まで違うのに納得しろと言うのは如何なものだろう。
会った事も無いし、馬鹿兄貴は何も言わない。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「あ?」

顔怖いよ先生。
「なんでもないです...。」

いいたいことはたくさんあるけど今は...。

「まー。早めに説得してくれる?」

「柊さんがヒロインだからですか?」

「違うよ。」

「え?」

「あいつに会えばお前はきっと戻れるよ。きっと。」

月臣海斗は愛されている。
本当に。
皆素直じゃないから
ぶっきら棒な優しさをくれる

俺が答えなきゃ―

俺は先生がくれたメモを握ると部屋を出て行った。
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