作者: 葵 雷夜   2008年05月23日(金) 22時16分02秒公開   ID:iO.qalVsz3k
俺はこんな力を望んではなかった。

只生き、死ねればよかった。

勇者、といわれ、神に選ばれた存在を知っているだろうか。
目的を果たすまで。
或いは一生涯力を得た上に死ねない身体を保障される。
多くのものは英雄の名と共に光栄に思い受け入れる。
だが彼は違った。
神と悪魔のほんの出来心から生まれざるを得なかった者。
同じ村で暮らした全ての人々の中でたった一人生き残った少年だった。

死にたい。
死にたい。
死にたい。
死にたい。

名をライル=フォーセピアという。
一人座る焚き火の中に、選ばれたものの印が刻まれた手を入れる。
手を傷つける。
「…ごめんなさい」
ライルは声の主を見ようとはしなかった。
自分に刻印をつけた女神。
彼女も又被害者だった。
神の立場に縛られた娘だった。
しかし彼はそれを知らない。

死ぬ為に彼は平和を手に入れた。
だが安息はもはや彼の手には入らない。
「こんなものはいらねぇ!!ふざけるな!!」

彼は己を拒否し続ける為、盗賊となった。
たった一人で生きることを望んだ。
無駄に力を使い、闇に身を染めることを覚えた。

それでも乾いた心は潤わない。

死。

ライルが己を傷つける癖はなくならない。
昔も今も変わらないモノとなっている。
せめて刻印が消せたなら。

光ばかりが栄光ではない。
たった今の刻も、闇の真中で只一言吐き続ける。


「死なせてくれ」

■作者からのメッセージ
一寸書くだけで昔のオリジナルを引っ張ってきましたが、思ったよりも色々なところでこのキャラは顔を出すかもしれません。
そのときは一度登録を別のところに改めるつもりです。

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