生徒会的灰かぶり姫 童話の裏側シリーズ
作者: なぁび   2010年04月29日(木) 19時27分11秒公開   ID:/dxzQ0Wmf36
【PAGE 5/6】 [1] [2] [3] [4] [5] [6]






 シンデレラは俊足でした。馬車は敷地内立ち入り禁止。
 舞踏会まで後1分というところで滑り込みセーフ。


 「間に合ったぁっ!」


 普段からセールに飛び込んでは戦利品を勝ち取るそんなこの子が負けるわけありません。
 むしろ負かす自信のある人が居るならどうぞ前へ。

 そんな登場をしでかして注目の的にならないわけがないわけで。


 (……っ、かわい、い)


 王子様は不覚にもこんなことを思ってしまったようです。

 まわりにいる全員を差し置いて王子はシンデレラの元へと駆け寄ります。


 「そんなに急がなくても大丈夫だったのに……」
 「だ、だ、……って、時間、間に合わないかな、思って……」


 肩で息をしながら差しのべられた手をシンデレラは握ります。


 「僕と踊ってくれませんか」


 落ち着いたところで王子は切り出しました。突然のことに周りはざわめきます。


 「ちょ、なんであんな子と……」
 「でも、悔しいけどお似合い、じゃない?」


 ダンスはど下手でしたが、お似合いの二人でした。
 それからすっかり二人の世界で、気付けば時刻は12時15分前。


 「あっ、いけない! 帰らないといけないんだった!」
 「えっ?」


 いきなり王子の手を離すとシンデレラは走り出しました。


 「どうしたの?! 急に……」
 「えっとですね、国家機密と言いますか何といいますか……今日は野菜の特売日なのでっ」
 「ええぇぇぇ……」


 長い階段を走る、走る。早く帰らないとお姉さまたちも帰って来てばれてしまうから。
 ……ふとシンデレラは立ち止りました。


 「……接着剤とか童話の王子様がすることじゃないよね」


 なんと階段の途中に接着剤が塗ってあったのです。
 たしかにそう都合よく靴が脱げるわけなんてないんだから。王子は策士タイプらしいです。

 そんなこんなで立ち止まってると後ろから王子が追い付いて来ちゃいました。
 ……原作無視し過ぎじゃ。


 「よかった、まだいた」
 「っわ、王子様ってすんごい軟弱なイメージあるんだけど足速くないですか」
 「まあ長距離……やってるからね」


 息を整えて一言。


 「えっと、その、よければ……で、いいんだけど、結婚してもらえませんか?」
 「えっ」


 どきっとシンデレラの胸が高鳴ります。
 王子の表情は真剣そのもの、男に免疫のないシンデレラは「はい」と答えることでしょう。(失礼ね!)


 「気軽に話してくれて嬉しかったし、あの中だと君がいちばん、その、タイプっていうか」


 既に魔法は解けてしまっていました。
 みすぼらしい格好、手入れされていない髪。


 「でも、私、あれは仮の姿っていうか、なんていうか……本来は、こんな汚い姿だし」

 「そ、そんなこと、僕は……気にしない」

 「それに貴方みたいな人にはきれいな人じゃないと似合わないでしょう?」

 「っ、僕は……自分と結婚する人くらい、自分で決めます」


 後は以下略でいいよな? 説明するのも面倒だし。

 まあそういうわけでシンデレラと王子は無事結婚し幸せに暮らしましたとさ。



 「ちょっと待って。私まだ14歳なんだけど。法律上無理じゃない?」
 「……ハッピーエンドに仕上げたのに壊すなよ」



 終われ。




⇒To Be Continued...

■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集