時の都と時の守護者 〜タイムズガーディアン〜 Chapter1‐2 |
作者: 羽丘 天空 2009年09月15日(火) 00時24分21秒公開 ID:sw0xlSukK4E |
Chapter1-2 少女の心 「椿原……っ!」 案の定、ヒコの思ったとおりだった。 倉庫の前で響は汗だくで倒れていた。 「椿原? おい、しっかりしろ! 今先生呼んでくっから!」 ヒコが駆け出そうとすると、響はヒコの半袖の裾を掴んだ。 「お、おい! 今先生呼んでくる……」 響はさらに裾を掴む手に力を込めた。離す気はないらしい。 ヒコはどうしようかと悩んだ挙句、仕方なしに響の背中とひざの裏に手を当て――――いわゆるお姫様抱っこをして――――そのまま保健室まで必死に運んだのだった。 「有坂くん、ご苦労様。大丈夫、幸い症状は軽いから」 だいぶ楽になった表情を浮かべて眠る響の隣。 「それにしてもどうして有坂君は椿原さんを運んで来たの? 体育って男女別でしょ?」 「あ、いえ、倉庫に道具を取りに来てて、そこに椿原もいて」 「そうなの。わざわざありがとうね。それじゃあ有坂君、もう授業に戻っていいわよ。次の授業始まっちゃうし」 「あ、でも、その……」 困った表情を浮かべるヒコ。保健の先生はにっこり笑って 「大丈夫よ。体育の先生に言っておくから。安心しなさい」 「いえ、そうじゃなくて……」 尚も困った表情を浮かべるヒコ。彼が求めている答えはそれではないらしい。 「? どうしたの? あなたも具合でも悪いの?」 「そうじゃなくて、これ……」 ヒコは自分のシャツを指差して言った。保健の先生もそこを覗いてみると。 「椿原さんってば、有坂君に傍にいて欲しいみたいね」 なぜなら響はしっかりとヒコのシャツを握って眠っていたのである。 これじゃあヒコも帰るに帰れない。 と、ちょうどそこへ響が目を覚ました。 「あら、目が覚めたのね。具合はどう?」 目をこすりながら響は曖昧にこくんと頷く。 「今日は大事をとってこのまま家に帰りなさいね? 先生が送ってあげるから」 「その方がいい」 響は仕方なさそうに立ち上がった。そしてヒコに深々と頭を下げる。声が出ないなりの、彼女なりのお礼の仕方だ。 「それじゃあ、ちゃんと休むんだぞ」 響を送り、次の授業を受けるべく教室に戻ったヒコだが、その数分後、なぜかまた少女の隣に戻るはめになったとは、今の彼には知る由もない。 |
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